横浜AIR事情 vol.3:育成の場としてのAIR――黄金町で醸成されたアーティストコミュニティ

アーティストのインタビューや、プログラム主催者の声をとおして、横浜の“AIRの現在”を紹介する本コーナー。今回ご紹介するのは、vol.1で取り上げた中国・成都の麓湖・A4美術館との交換レジデンスをはじめ、複数のAIRプログラムを展開する認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターだ。長期のレジデンスプログラムや、「黄金町バザール」でのアーティストの招へいなど、多岐に渡る同法人の“AIR(アーティスト・イン・レジデンス)プログラム”。それらの特徴と狙いから、活動の柱として位置付ける“AIRプログラム”の役割が見えてきた。

 

「アート」と「まちづくり」の視点から――NPOの根幹を支える“AIRプログラム”

本ウェブサイトでも、切り口を変えてたびたび取り上げてきた認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター。黄金町エリアの「アートによるまちづくり」をテーマに、2009年に誕生したNPOだ。「黄金町バザール」などアートイベントの企画・運営だけでなく、空き店舗の活用や街並みの改善など、日常的なまちづくりに関わっていることで知られる。そんな同法人の活動のなかで「アート」と「まちづくり」双方の側面から、大きな役割を担っているのが“AIRプログラム”である。

黄金町エリアマネジメントセンターが取り組む“AIRプログラム”は、大きく2種類に分けられる。アーティストが黄金町に拠点をおいてスタジオでの制作に取り組むプログラムの「長期レジデンス」と「短期レジデンス(来年度からスタート)」。そして海外からアーティストが黄金町にやってきて滞在制作をする「交換レジデンス(国際交流事業)」と「黄金町バザール」時の招へいプログラムだ。

同法人の事務局長・山野真悟さんは、“AIRプログラム”を「うちの事業の根幹」と話す。まずは主に日本人のアーティストの1年以上の滞在が対象となる「長期レジデンス」の特徴から見ていこう。

 

 

アーティストの成長を見守る――「長期レジデンス」ならではのアーティストコミュニティ

現在、黄金町エリアマネジメントセンターでは、2018年度の「長期レジデンス」アーティストを募集している。現時点では約40組が黄金町での滞在制作に取り組んでいるが、2018年度は10組の募集だ。この長期レジデンスでは、約10~40㎡のスタジオ(住居利用が可能な物件もあり)が、2~4万円程度で借りられる。1年ごとの契約で、更新は最大4回まで。渡航費・滞在費などはアーティストが負担するが、安価な価格設定でスタジオや住居が借りられること、プログラムを通したネットワーク形成が魅力で、人気のレジデンスになっている。

「長期レジデンス」は2009年からスタートした。10数年前には多くの違法飲食店が営業していて、治安の悪化が深刻だった黄金町。神奈川県警による一斉摘発『バイバイ作戦』のあと、横浜市が違法飲食店跡の物件を借り上げ、それをアーティストが活用している。

「2008年の最初のバザールが終わって、2009年からアーティストインレジデンスプログラムの募集をスタートしました。当初は貸し出すことができる管理施設の数も一桁で、契約年数などの枠組みもあまり整っていませんでした。アーティストに安くスペースを提供しようということで始まりましたね。

私にとってこのプログラムの一番面白いところは、アーティストの成長を一緒にサポートできることです。作品面や経済的な側面、地域と関わるなかでの彼らの成長を、現在進行形で見ていくことができます。できるだけ若い人たちに参加してもらいたいという方針も、はじめの頃からありました。」

プログラムの枠組みが整っていない時期に入ったアーティストのなかには、5年以上滞在をしていた人も居たという。レジデンスに参加したアーティストからは、事務局にどのような声が届いているのだろう。そこには「つくる場所を安く借りられる」ということ以上の魅力があるようだ。

撮影:大野隆介

「同業者が身近にいてお互いに助け合えるなど、作品の創作という同じ目的の仲間が集まっている環境に対する声が多いですね。学校みたいなものに近いのかなと思っています。またNPOのネットワークを活用して、海外から黄金町に来た団体や個人を紹介するサポートをしているので、今後につながるステップとして捉えてもらっています。」

一方で、山野さんが感じている課題もある。

「フルタイムのアーティストはほとんどいなくて、みんなアルバイトをしています。アーティストを経済的にどのようにサポートしていくことができるか、それは大きな課題です。ワークショップや、小さなコミッションワークの依頼などの窓口にはなっているのですが、作品をお金に換えるという方法をもっと考えていきたいです。」

 

 

 

アーティストが地域コミュニティの一員になることを目指す――卒業後の展開

山野さんがもう一つの課題として挙げたのが、本プログラムからの卒業のさせ方だ。

「経済的にある程度成長が見られないと、なかなか黄金町の環境を卒業することが難しいんです。なおかつ、卒業してもこの近くに残ってくれるアーティストが増えて欲しいと思っています。レジデンスプログラムは彼らにとって仮の宿みたいなもので、横浜をとりまく状況の変化によってはいつ終わるか分からない事業です。そのときにアーティストがどうやったら生き残れるのか。今までやってきたことを、自分たちの力で続けられるかどうかが重要だと思っています。

黄金町のような都市部でアーティストが集積している場所って、じつはあまりないんですよね。郊外であれば珍しくないかもしれませんが、立地も含めて非常に特異なケースなので、アーティストが定住するエリアとして定着して欲しいと思っています。」

黄金町にアーティストが集積することにこだわる山野さん。アーティストという「立場」が、この地域に果たす役割の可能性を感じているからこその思いがあった。

「このエリアはもともと、違法飲食店を営業している人たちと、地域で商売や会社を営む人たちが対立するエリアでした。そのなかに多国籍の人や、マンションの住民、そしてアーティストが入ってきました。何の地縁もなかった人たちが、この地域に移り住んできています。これから形成される地域コミュニティのメンバーとして、アーティストの役割は大きいと思うんです。NPOの役割よりもずっと。?

まちづくりを推進するNPOは、まちづくりの活動を許容できない方たちとはなかなか付き合いにくいという事態は、どうしても起こります。ですがアーティストはそうではありません。我々のようなNPOや行政が見えないところを、アーティストは見ています。我々が手の届かない人間関係をつくる力をアーティストには感じます。?

私としては、そういった役割を果たすアーティストを、コミュニティのメンバーとして残していきたいんです。そのためには地域の方々とアーティストが、お互い対話をするとか、あるいはアーティストを何らかの形でサポートするような関係ができていくと良いなと思っています。」

アーティストはNPOや行政には担うことが難しい役割を、地域コミュニティのなかで担っていける可能性がある。山野さんの狙いは、「長期レジデンス」をとおして集積したアーティストが、レジデンスプログラムを卒業してもこのエリアに残っていくことだ。まちづくりを標榜するNPOにとって、“AIRプログラム”が大きな柱になる所以がここにある。

「長期レジデンス」の選考ポイントは、作品のクオリティ、スタジオの利用頻度と、制作目的での利用(倉庫利用などは不可)といった点であるという。応募を検討しているアーティストは参考にして欲しい。

 

 

2018年度からスタートした「短期レジデンス」――見えてきた新たなニーズ

1年間が契約期間となる「長期レジデンス」に対して、3ヵ月の短期滞在を目的としたレジデンスプログラムが、2018年度からはじまる。期間は春(4月?7月)と冬(12月?3月)に分かれていて、約10組の募集だ。この「短期レジデンス」プログラムは、アルバイトをしながら制作活動を行っている若手アーティストが、更に参加しやすい枠組みをつくるためにスタートした。そして黄金町でのレジデンスを希望する、東南アジア圏のアーティストたちのニーズに応えることも、同時に目的としている。

こちらも渡航費・滞在費はアーティスト負担だが、NPOのバックアップ体制などは「長期レジデンス」に準じる仕組みになっている。

「3ヵ月は長いようで短い期間です。集中的に仕事をしないと、作品までたどり着くことができません。ですが作品制作に打ち込みたいアーティストに、うちの施設を利用してもらうのも良いかもしれないと考えたことが、短期レジデンスの募集をスタートしたきっかけになりました。

アーティストで生計を立てることができる人はほんの一部しかいないため、スタジオの利用頻度も、長期レジデンスで滞在できる方はある程度限定されてしまいます。3ヵ月間なら、アルバイトをストップして、集中して作品制作に取り組みやすくなりますよね。?

また東南アジア圏からの来日は、ビザの関係で滞在の限度が3ヵ月になります。海外の人、主に東南アジア圏のアーティストが、バザール期間以外でも黄金町に滞在しやすくなるだろうという狙いもありました。」

 

 

海外との交換レジデンスと、黄金町バザールでの招へい――国際交流事業としての位置づけ

黄金町エリアマネジメントセンターは、アジア地域を中心とした組織や団体とのネットワークづくりに力を入れてきた。具体的には、麓湖・A4美術館をはじめとする複数拠点との交換レジデンスと、黄金町バザールの際にアーティストを推薦してもらうカウンターパートとの交流が挙げられる。アーティストの交流機会を生み、現地での調査・交流を目的としたこれらのネットワークは、「国際交流事業」としてNPOの活動を下支えしている。

本プログラムで招へいするアーティストは、渡航費・滞在費をNPOが負担しゲストとして迎え、制作と発表をしてもらうことが条件になっている。まずは交換レジデンスについて、山野さんにお話を聞いた。

「台湾・台北の『Bamboo Curtain Studio』、韓国・光州の『Space Ppong』、そして中国の『麓湖・A4美術館』とは、継続的にお互いの国からアーティストを推薦し、交換してレジデンスを行うプログラムに取り組んでいます。台北と光州の場合は、先方からレジデンス受け入れの提案があったのですが、それであれば交換レジデンスにしてはどうかと逆提案して、プログラムがスタートしました。

長年やっていると、先方がどのようなアーティストとの出会いを求めているか、だんだんニーズが分かってきますし、信頼関係を築くことができます。お互いに自国のアートシーンの情報を交換し合ったり、先方の国にリサーチに行ったときにサポートをしてくれたりと、交流をもてることが大きいですね。」

アーティストを推薦する際には、必ず複数名を、そしてできるだけコミュニケーション力のある人を推薦するようにしていると語る山野さん。海外でレジデンスをする際に、人間として成長できるかどうかもポイントになっている。

「黄金町バザール」での招へいは、この交換レジデンスが“片道切符”になったような位置づけであるという。バザール開催時に自国のアーティストを推薦しているカウンターパートには、クンチ・カルチュラル・スタディーズ・センター(インドネシア/ジョグジャカルタ)、ゼロ・ステーション(ベトナム/ホーチミン)、98Bコラボラトリー(フィリピン/マニラ)、チェンマイ・アート・カンバセーション(タイ/チェンマイ)、などが名を連ねている。バザールの会期中はアジア圏のアーティストが数組一度にやってくるので、お祭りのような雰囲気になる。彼らは自国の料理を振る舞ったり、作品のリサーチでコミュニティに入っていったりしながら、あっという間に黄金町になじんでしまうそうだ。

交換レジデンスやバザールで海外からアーティストを招くとき、黄金町エリアマネジメントセンターではどのような注意を払っているのだろう。海外アーティストの招へいを担当するアートプロジェクトマネージャーの水谷朋代さんに聞いた。

「海外から来日するアーティストは知らない街に来て、言葉も通じず、最初は孤独を感じることもあると思います。できるだけ顔を合わせること、友達になることを大切にしています。でも私たちNPOのスタッフよりも、長期レジデンスで黄金町に滞在しているアーティストが、来日したアーティストと打ち解けて、生活面のサポートをしてくれている状況があります。例えば買い物に一緒に行ったり、飲みに行ったりとか。すでに長期レジデンスのアーティストが何10組もいてコミュニティがあることが、黄金町AIRの大きな特徴ですね。」

アジア圏では「Koganecho」の名前が浸透してきていると、山野さんは指摘した。アジア圏の若手アーティストがレジデンスの経験を得る場として、今、黄金町が注目されているという。

「アジアでは、黄金町と言えばレジデンスの街みたいなイメージが定着しているようで、何かやろうかなというときに、黄金町に相談してみようという話になるようです。若いアーティストの次のステップに向けて、何か経験をさせたいときに、アーティストを送り込もうとしてくれます。黄金町は、海外の方が有名みたいですね(笑)。」

撮影:大野隆介

黄金町というコミュニティのなかで、作品の制作に集中する「長期レジデンス」と「短期レジデンス」、そして国際交流を主な目的とする「交換レジデンス」と「黄金町バザール」でのレジデンスプログラム。多岐にわたる“AIRプログラム”だが、その特徴は国内外を問わず、アーティストの成長や変化を支えるものだった。

黄金町の“AIRプログラム”は、作品を制作するだけでなく、アーティストコミュニティ、地域コミュニティの一員として活動したいアーティストにぴったりのプログラムだ。2018年度の「長期レジデンス」と「短期レジデンス」の参加アーティストの募集は、2月17日(土)まで(レジデンス期間:2018年4月?2019年3月31日)。この機会を、お見逃しなく!

 

取材・文:及位友美(voids

 

 

【募集情報】

黄金町エリアマネジメントセンター
長期レジデンス

募集期間:2018年1月16日(火)?2月17日(土)
レジデンス期間:2018年4月?2019年3月31日
募集人数:10組

 

短期レジデンス

募集期間:2018年1月16日(火)?2月17日(土)
レジデンス期間:2018年4月?2018年6月30日
募集人数:10組

 

黄金町AIR説明相談会

日程:[1回目]2018年1月27日(土) [2回目]2018年2月4日(日)
時間:13 時?(約 1 時間程度)
会場:高架下スタジオ Site-D 集会場
住所:横浜市中区黄金町 1-2 番地先
アクセス:日ノ出町駅または黄金町駅(京急線 )より徒歩約5分
説明相談会 参加申込み方法
電子メールにて「info@koganecho.net」までお送り下さい。
件名に「黄金町 AIR 説明相談会」本文に「1お名前、2参加希望日、3参加人数」をご明記ください。

詳細はウェブサイトから
http://www.koganecho.net/air/

横浜AIR事情 vol.2:インターネットのように紡ぎ合う国際文化交流プロジェクト「ポート・ジャーニー・プロジェクト」

アーティストのインタビューや、プログラム主催者の声を通して、横浜の“AIRの現在”を紹介する「横浜AIR事情」。海外から招かれたアーティストが街に一定期間滞在し、作品を制作する、いわゆるアーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)は、ここ横浜でも活発に行なわれている。反対に、世界各地で実施されるAIRで、横浜のアーティストが海外の文化施設に招かれるケースも多く、AIRはアートを通じた豊かな文化交流を生み出し続けている。今回、そうしたAIRのひとつとして、象の鼻テラスが2011年にスタートさせ、現在7年目を迎えているプロジェクト、「ポート・ジャーニー・プロジェクト」を取り上げたい。アーティストの行き来を軸にしながら、文化芸術に携わる人々の関わりを国をまたいで網の目のように広げ続けているプロジェクトの魅力について、スパイラル/ワコールアートセンターでチーフキュレーターを務める大田佳栄さんに話を聞いた。

2012年、最初の交流となったメルボルンとのプロジェクト。さとうりさ「Spaceship ‘Kari-nui’」。有機的な形をしたバルーンがメルボルン市内を点々と移動した。

 

双方向ではなく、全方向の交流プロジェクト

ポート・ジャーニー・プロジェクトの特徴は、アーティストたちが各国を自由に行き来できる状況づくりを強く意識している点だ。AIRは2拠点の双方向または1拠点が世界からアーティストを受け入れるスタイルが主流で、定点的な活動ともいえるが、ポート・ジャーニーは、世界の各都市の文化拠点とのネットワーク形成に注力している。

「現在はハンブルク、サンディエゴ、ヘルシンキ、上海など7都市と交流を持っています。コアな関係者はキュレーターやアーティストランスペースのディレクターなどのクリエイティブ集団で、予算のことはいつも課題です。どの拠点がアーティストを招くか、または派遣するかについては、各拠点の自助努力で成り立っているので、規模も時期も様々ですね。ただ、たとえばある都市からアーティストを横浜に招いたら、次はその都市へ横浜のアーティストを送り出す、というように、2都市間で考えた時にフェアな交流になるように努力をしています」

2012年、横浜で初めて行われたメルボルンとのプロジェクト。Prue Crome「reflections!」。キラキラと海に反射して窓から差し込む光を表現し、刻一刻と空間が変化していった。

 

あくまでも2都市間でのフェアな交流を基本としつつも、7都市でネットワークが築かれていることで、自然とひとつの動きに様々なプロジェクトが合流して、全体としてより強いインパクトを出せるよう、有機的な動きが起こるようになってきている。世界中にある拠点それぞれが主体性を持って関わり、ネットワークの中から文化活動を豊かに生み出していくあり方は、インターネットのような網状に紡がれた信頼関係を感じさせる。

 

 

異国文化が入ってきた土地の歴史を今につなぐ

ポート・ジャーニー・プロジェクト誕生の背景には、象の鼻テラスが2009年にオープンした当初から掲げてきた「文化交易」というテーマがある。象の鼻テラスは、横浜市が所有し、スパイラル/ワコールアートセンターが委託を受けて運営する、レストハウスであり、クリエイティブの発信拠点でもある。象の鼻パーク内にあり、施設の目の前は海。明治期以来様々な外国文化が渡来した横浜港である。アートを通じた国際文化交流にはまさにうってつけの土地柄だ。

「まずは年に1度、単発で海外作家を招聘することから、国際交流プロジェクトを始めました。それから、国際交流にもっと持続可能性を持たせる仕組みを作りたいと考え、2011年にポート・ジャーニー・プロジェクトを立ち上げました」

横浜市と姉妹港でもあるオーストラリアのメルボルンを皮切りに、年を追うごとに、2都市目、3都市目と、関わる都市を着実に開拓している。AIRでは滞在制作したアーティストの展覧会を含めた発表機会を設けることを最終目的と設定することが多いのだが、ポート・ジャーニーは展覧会開催は行いつつも、関わったアーティストや拠点が相互につながることに重点を置いているため、その後アンバサダーという位置付けが与えられ、続く会議やプロジェクトへの積極参加を呼びかけている。

2013年、サンディエゴからパトリック・シールズとティム・シュヴァルツを招聘。海を浮かんで流れて来た未確認物体「maritime craft」の物語、という設定で展示、ワークショップなど実施。

 

「私たちには『アーティストがいることによって街は豊かになる』という仮説があります。ですから、交流によって皆がハッピーになっていく状況をつくりたいんです。ポート・ジャーニーに関わったアーティストや場所が繋がっていくことは、国際社会に豊かさを生み出す下地になれるはずだと」

いまでは、年に1度、いずれかの都市がホストとなり、アーティストやディレクターなどの関係者が集まって、目指す交流のあり方を実現していくためのオープン・ディスカッションを行っている。今年から年に4回程度の、オンライン・ミーティングも始まった。ディスカッションを続けていることで、深いレベルでプロジェクトの意義を共有して進められているそうだ。

象の鼻テラスで2014年に行われたディレクターズミーティング。オープンディスカッションなので、アーティストや一般の方でも参加できる。

 

「ポート・ジャーニーを通じて、世界はそんなに広くないと思いました。世界で価値観を共有できる人と出会えるのは気持ちがいい。自由さや寛容さ、そして平和に重きを置くアートを軸に交流しているからだと思います。多様な立場の人々が集まって何かをやろうとする、現代的なつながりってこういうことなのかなと」

関係者が一堂に会すると、しばしば、かつての世界大戦が話題に上がるという。オーストラリアの赤道に近い島で戦死した日本兵が腹に巻いていた千人針から、現地人がその兵士の母親を探し当てたというエピソードに感銘を受けて活動するアーティストについてなど、必ずしも一様には語れない戦争と戦争にまつわる表現について、ポート・ジャーニーは平和を求めるクリエイティブな人々同士が対話できる場ともなっている。

 

 

象の鼻テラスから、世界に伸びるアンテナ

象の鼻テラスには、ポート・ジャーニーの他に2つの代表的なプロジェクトがある。環境技術とアートの融合を目指す「スマートイルミネーション横浜」と、障害者と多様な分野のプロフェッショナルによる現代アートの国際展「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」を行う、NPO法人スローレーベルの関連事業だ。

それぞれのプロジェクトには、ポート・ジャーニーを通じて交流を持ったアーティストが参加している。2016年から交流を始めたオランダのフローニンゲンから2名の作家が2017年に参加した。「関わったアーティスト、関わった拠点はみんなつながっていく」というポート・ジャーニーの理念が、象の鼻テラスという拠点にしっかりと息づいているのだ。ポート・ジャーニーは、横浜から世界に伸びる触手のようなプロジェクトであり、世界のアートシーンの栄養を、常時、存分に取り込むことができるパイプとして機能しているようにも思える。

「関わるアーティストは場所によっては、公募したりもしていますが、横浜では在住のアーティストを基本に推薦しています。象の鼻テラスを中心に普段から付き合いのあるアーティスト数名に声をかけて、海外のディレクターと会ってもらい、選んでもらったりしたこともあります」

 

 

プロジェクトの10年目を迎える2020年に、横浜で

ちょうど取材を行った日、象の鼻テラスでは、12月15日から始まるポート・ジャーニー・プロジェクトの展覧会、ヘルシンキ?横浜 マルクス・コーレ展『what if ?』の準備が行われていた。フィンランドの港町、ヘルシンキから招いたマルクスの作品は、なんとジグソーパズル。「黒船来航」をテーマとして制作された複数のジグソーパズルを、来場者が自由に組み合わせることで、時にありえない出来事を歴史に描き加えてみて、遊び心たっぷりに「もしもこうだったら?」と、歴史に問いを立てる作品だ。

マルクスは、9月?10月にかけて、2週間ほど来日し、横浜の街をリサーチして一度帰国した後、12月に改めて、1月9日まで行う展覧会のために、2週間ほど滞在した。今回の滞在と展覧会をきっかけに、今後もきっと、横浜でマルクスの作品や活動を目にすることになるだろう。

横浜発で、文化的な取り組みを率先して行っている港町をつなぎ、ネットワークを広げてきたポート・ジャーニー・プロジェクト。10年目を迎える2020年には、これまでの集大成として、より多くの人に国際文化交流の成果を感じてもらえるような企画を構想中だ。

「創造的な文化活動を行う港町とのつながりを持ってきたので、船で展覧会を行って、それぞれの港を周遊するなんてことができたらいいなと。プロジェクトの節目でもある2020年は、やはり、プロジェクトの発端となった横浜がホストであるべきと思っています」

2020年はポート・ジャーニー・プロジェクトが次のフェーズへと向かう年になりそうだ。そして、さらに多くの都市、そして多様な人々とのつながりが増えていくことだろう。アーティストが創造的な港町を自在に行き来できるネットワークが、どんな文化を育んでゆくか、今後にさらに期待したい。

構成・文:友川綾子

 

【イベント概要(開催終了)】

ポート・ジャーニー・プロジェクト ヘルシンキ?横浜
マルクス・コーレ展『what if ?』

世界のクリエイティブな港町をつなぐ「ポート・ジャーニー・プロジェクト」。今回はフィンランドの港町ヘルシンキから、マルクス・コーレを招聘し、歴史のもしもを考える展示「what if ?」を開催します。「もし、あの時横浜にペリーが来ていなかったら」。仮説的に歴史を考え進めることで、ひいては自分自身への問いを深めることができるだろう、と作家は言います。そんな歴史の「what if ?」をパズルを解きながら楽しんでみませんか。

期間:2017年12月15日(金)? 2018年1月9日(火)
会場:象の鼻テラス
住所:神奈川県横浜市中区海岸通1丁目
アクセス:日本大通り駅(みなとみらい線)徒歩3分

http://www.zounohana.com/schedule/detail.php?article_id=799

 

【プロフィール】 マルクス・コーレ

1969年生まれ。1996年に現アアルト大学を卒業。その後2001年にヘルシンキ大学哲学科、フィンランド芸術アカデミーの彫刻科を卒業。同学の彫刻科で教鞭をとる。現在はフィンランド、ヘルシンキに在住。
自身の家系が船乗りだったことでポートジャーニーや遠い横浜に興味を抱き、本プロジェクトの参加に至る。

 

ポート・ジャーニー・プロジェクトとは

2011年に横浜とメルボルン(オーストラリア)の交流からスタートし、恊働可能な施設や団体、およびそれらが属する市政府関係者と協議をかさね、今日的かつ持続可能な文化サポートの仕組みづくりを行う。以降、ネットワークを徐々に拡大。年に一度のディレクター会議(毎年ホスト都市を変えて実施)や2ヶ月に一回のオンライン会議も行いながら、2都市間のみ、アーティストの交流のみにとどまらない広い意味での文化交流のかたちを探っている。

現在までの参加都市(ディレクター会議の単回参加も含む)、横浜(日本)、メルボルン(オーストラリア)、サンディエゴ(アメリカ)、ハンブルク(ドイツ)、上海(中国)、フローニンゲン(オランダ)、バーゼル(スイス)、ナント(フランス)、レイキャビク(アイスランド)、アンマン(ヨルダン)、高雄(台湾/予定)など。

横浜AIR事情 vol.1:中国・成都の日常を見つめる 片岡純也+岩竹理恵インタビュー

アーティストの創作に、インスピレーションは欠かせない。「アーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)」は多くの場合、そんなアーティストたちにとって新たな刺激や創作のアイデアを得られる機会になる。AIRとは、アーティストがある地域に滞在し、創作やリサーチを行う活動や、その支援制度のことを指す。異なる地域の文化に触れることで、作品づくりのインスピレーションを得て、滞在期間をとおしてそれを耕していくような活動と言えるだろう。今や日本中で目にするようになったAIRだが、ここ横浜でも複数の「創造界隈拠点」が、独自のAIRプログラムを展開してきた。「横浜AIR事情」と題した本シリーズでは、アーティストのインタビューや、プログラム主催者の声をとおして、横浜の“AIRの現在”を紹介する。

成都滞在中の一コマ。スパイス市場には、おびただしい量のスパイスが所せましと並んでいる。

 

横浜・黄金町と、中国・成都とのレジデンス交換プログラム

「今まで持っていた中国のイメージが、AIRをきっかけに大きく変わりました」と語るのは、アーティストの片岡純也+岩竹理恵だ。2017年9月~11月の2ヵ月間、特定非営利活動法人黄金町エリアマネジメントセンターが主催するレジデンス交換プログラムに参加した二人は、中国の成都にある「麓湖・A4美術館(以下A4美術館)」で滞在制作を行った。「黄金町バザール」の運営で知られる同法人は、2016年度から毎年、中国の四川省成都市にある「A4美術館」とのレジデンス交換プログラムに取り組んでいる。交換レジデンスとは、A4美術館から推薦された中国の作家を黄金町で受け入れ、また黄金町エリアマネジメントセンターが推薦した日本の作家がA4美術館に滞在する取り組みだ。

個々に作家として活動していた二人だが、2013年から、それぞれの作品を組み合わせたインスタレーションを発表している。日常生活のなかから作品のアイデアを発見するという、二人の作品。作品の核には、ふだん見慣れたものの意味や役割を“ずらす”ことで生まれる“面白さ”がある。

岩竹:
私たちの作品は、日常的な素材をシンプルな技術で作品化しています。ふだん見慣れている物や現象、その本来の意味や役割を取り除いたとき、不思議なことが起こっていると気付くことがあります。それが作品のモチベーションになっています。私たちには面白いと思うことに共通点があるので、それを異なるメディアで表現し組み合わせることで、視点の幅が広がれば良いなと考えています。

例えば、BankART Stuudio NYKで発表した作品群のテーマは「紙」だった。ある日、アルバイト先で1枚のコピー用紙が箱の中でゆっくりと落ちるのを見た片岡さんは、そのシーンがスローモーションのように脳裏に残り、紙が重力に従って落ちていくさまを作品にした。岩竹さんは、紙をくしゃくしゃにしたときにできた皺をなぞって、山のように見立てた絵画を制作した。このように私たちの身近にある日用品が、二人の手にかかるとくすっと笑える作品に変換されていく。

片岡:
素材がもつ特徴や、身の回りの具体的な現象を、抽象化して作品にしています。物の特徴を抽象化することで、今まで身近に見ていたものが、まったく違った見え方をすることがあります。物や現象を暫定的に捉えて作品化することで、先入観や、すでにあるイメージに、揺さぶりをかけたいと考えています。

観光 BankART LifeV「Under35 2017」(2017年、横浜)展示風景 photo by Yasuyuki Kasagi

 

「BankART AIR 2016 Open Studio」展示の一部

 

《Floating Paper》と題した作品

 

来訪者としての視点――中国・成都でのチャレンジ

このように日用品を作品の素材に創作を展開している二人がAIRに参加すると、その国や地域の特徴が色濃く反映されることになる。AIRでの滞在経験は、フランス(パリ)、アイスランド(リーセイ島)、台湾(高雄/台北)を経て、中国(成都)は4つ目の国。これまでのレジデンスでは、その場所で見つけた素材から、各地で作品をつくってきた。

片岡:
フランスでは、フランスパンとペリエの瓶を素材にして、作品をつくりました。台湾では、乾燥ナマコや茶器、台湾の路上で売られていたキャラメルの箱を素材にしています。AIRで滞在した経験を作品化するとき、来訪者”が気になるその土地の独特の物を素材としてピックアップしてきました。

《Baguette & Bottles》(2014年、パリ)

 

《massless images》(2016年、台北)展示風景

今回、初めて中国に足を踏み入れたという片岡さんと岩竹さん。二人の目には成都がどんな都市に映ったのだろう?

片岡:
成都はものすごい勢いで開発が進んでいる都市です。人口も横浜の約4倍です。開発のスピード感で言うと、観光客向けのガイドブックに地下鉄の路線図が半分以上載っていなかったり、昨年に比べて物件の家賃が2倍になっていたりと、日本のバブル時代みたいな感じではないでしょうか。成都に住んでいる友人の話では、5年ほど前は車も現金で買われていたけど、クレジットカードを使う時代を通り越して、今は商品に付いているQRコードをスマホで読み取りキャッシュレスで支払う時代になっているそうです。高層ビルもどんどん建設されていて。

異国の地、成都の街との出会い。今回のレジデンスでは、二人が取り組んだ新たなチャレンジがあったという。

岩竹:
これまでは、既製品とか具体的な物を素材に使ってきましたが、今回の成都では人々の日常生活を取り入れたビデオ作品をインスタレーションの一部にしようと考えました。街の人の生活を観察するフィールドワークを重点的に行ったんです。そうすると、成都の人たちが街のなかでリラックスして過ごしているように見えました。カフェでは、麻雀をしたり、耳かき屋さんに耳かきをしてもらったり、眠ったりと、思い思いに過ごしている。街なかの公園や広場では、たくさん人が集まって踊っている光景を、頻繁に見かけました。パンダの赤ちゃんもたくさん見ることができて、かわいかったです(笑)。街中にも、パンダのアイコンがいたるところにあふれていました。開発のスピード感と街の人々の生活感にはギャップを感じました。

片岡:
中国の都市部というと、空気が汚いとか、人々がせっかちであるといったイメージが僕にはあったんですけど、実際に行ってみるとずいぶん印象が違いました。スパイスの市場に行くと、大量の唐辛子や花山椒があって。スパイスのにおいが立ち込めていて、歩くだけで健康になりそうな場所でした。市場では通常1㎏単位でしかスパイスを売っていないのですが、作品づくりのためにたくさんの種類をすこしずつ欲しいと言うと、市場のおばちゃんが無料でスパイスを分けてくれる、といったこともありました。四川料理はすっごい辛いんですけど、スパイスが効いてて本当においしくて。あまりに楽しみすぎて、10kgも太ってしまったのですが(笑)。

成都で撮影した映像作品《食う寝るパンダ》のワンシーン。

 成都での生活を楽しみ尽くした二人。これらの経験一つひとつが、直接的にも間接的にも、レジデンスの成果発表としての作品へ反映されることとなる。

 

A4美術館での成果発表展――先入観が壊されたAIRでの経験を経て

片岡さんと岩竹さんが成果発表作品の素材として選んだものは、「パンダ」「スパイス」「QRコード」「眠る人」「耳かき」などだった。いずれも、成都の人たちの生活に着目した二人の目に留まったものだ。片岡さんは、パンダの人形を詰めた筒を回転させ、白と黒の色に反応して、電球が点滅する動きのある装置的な作品を制作。一方、岩竹さんはスパイスを用いてステンシルの手法でつくる絵画作品に取り組んだ。QRコードのような画像が浮き上がる絵画だ。そのほか共同で制作したのは、成都の耳かき屋さんが使用する、金属の棒と音をモチーフとした実験器具のような作品や、「パンダ」や「眠る人」を集めた映像作品など。A4美術館のスタッフやお客さまも、これらの作品を見て笑ってくれたという。

A4美術館での成果発表展「Daily “Truth”」(2017年、成都)展示風景 Photo by Zhan Tianli, Courtesy of LUXELAKES A4 Art Museum, 2017

 

片岡:
「作品を見て、気持ちがふっと軽くなる、そんな作品ていいなと思っているので、笑ってもらえて嬉しかったです。」

A4美術館でのAIRプログラムの環境は、すばらしかったと二人は振り返る。広いスタジオと、2名のアシスタントが居て、トークイベントの際には日本語通訳がついた。現地のアーティストとの交流の機会もあって、十分なサポートがあったそうだ。そんな制作プロセスのなかで、A4美術館のキュレーターが二人にインタビューをする機会もあった。その際に受けたのはこんな質問だ。「今回の作品にはパンダとスパイスが出てきますが、どうしてこのような典型的な素材を選んだのでしょうか。旅行者が選びそうな、いかにも“成都”というキャラクターを選ぶことで、作品の深みが損なわれるのではないですか?」

岩竹:
私たちは「来訪者」という立場を明確に意識して、その視点から選ぶ成都の「珍しい」典型的なイメージや素材を扱って、そこにある種の違和感を忍ばせるような作品を目指しました。典型的なイメージをもつ物は、現地の人と来訪者に温度差があると思うんです。また、イメージが強いだけに、その軽さとおかしみを含んでいると思います。先入観やイメージがついているものを、そのものの役割や意味、関係性をなくして取り扱うことで、ふだん見慣れたものが違うものに見えることを狙っているというか――。いつも見ているものが違うものに見えたとき、軽やかな気持ちになりませんか? 先ほどの問いには、このように答えました。?

A4美術館の外観 Photo by He Zhenhuan

 

またあるときは、レジデンス制作についてどのように考えているかを問われたこともあります。アーティストは短期間だけ滞在し、外部からの来訪者として関与するわけですが、個人的な視点がそこに介入していくことについて、どのように考えているか、という問いでした。これを聞いて、内部の事情を深く知らないのに、批判や作品のネタとして現地のものや状況を取り扱う無責任さへの批判が込められた質問であると、私たちは受け止めました。

レジデンス制作について思うことは、旅行とか旅先と置き換えることもできますが、文化や言葉や習慣が異なるその土地の日常に参加することで、先入観や思い込みが崩れる経験をします。その土地の人の日常と、来訪者の非日常が共存しているとき、物の枠組みに揺さぶりが起こることが多いのではないでしょうか。?

片岡:
今回の作品全体のタイトルは《Carpe diem(カルぺディエム)》にしました。これはラテン語の古い詩で今を摘む”という意味です。成都の街の人たちの様子を見ていて、気持ち良さそうに昼寝していたり麻雀したり踊ったりしている生活の一部が、私たちの心を軽やかにさせました。そういった光景は、日本から来たわたしたちには持っていなかったイメージでした。滞在場所への想像していなかった一側面を作品のなかに取り上げたかったんです。

「Carpe diem」展示風景の一部

 

横浜では5回にわたりAIRを経験、交流プログラムに求める異なる視点

二人が横浜のAIRプログラムに参加するのは、じつは今回で5回目を数える。2015~2016年には黄金町エリアマネジメントセンターの1年間の長期レジデンスと黄金町バザール2015に参加し、2016、2017年にはBankART Studio NYKのスタジオレジデンスに2ヶ月間ずつ滞在して、展示を発表した。2017年1月から3月までは横浜市と台北市の交流プログラムにBankARTから推薦されて台北国際芸術村でのAIRに参加している。横浜でのレジデンス環境の実感について聞いた。

岩竹:
横浜は街の規模が大きくなくて、コミュニティもあるから住みやすいですよね。パリの雰囲気にも似ているなと思いました。横浜市や黄金町に、こういったレジデンス交流プログラムがあることは素晴らしいことだと思います。2015年に私たちが黄金町でレジデンスしているときにも、東アジアのさまざまな国から、アーティストが来ていました。彼らの作品を見たり彼らとしゃべったりすることで、いろんな視点を見せてもらうことができました。彼らのような異なる視点があることで、自分が知っている場所が突然新鮮に見えたりします。そういうところが、レジデンスプログラムの面白いところですね。そして海外から横浜に来たアーティストも日本に対して持っていたイメージとは違った側面を体験して持って帰ると思います。?

展覧会「黄金町レビュー」(2016年、横浜)内での展示「Circulations」photo by Yasuyuki Kasagi

 

今後も、またほかの土地のレジデンスを体験したいと語る片岡さんと岩竹さん。思い込みや先入観を更新するような経験をして、作品に取り入れていきたいと言う。

片岡:
成都でのレジデンスは本当に良い経験でした。中国に対してはネガティブな先入観を持っていたんですけど、イメージが崩れて、考えることがたくさんあってよかったです。文化交流を通して人と人が付き合うのは本当に重要な意味があると思いました。これからもいくつかの国でレジデンスをさせてもらい、いつかそれらの作品をまとめて発表できる機会があったら良いですね。それぞれの国の思っていたのとは違った一側面が、僕たちの作品を通して垣間見えると思います。特にアジアの国のレジデンスには、これからも積極的にアプライしていきたいですね。台湾と中国にしても、日本と近くて似ているところもありますが、それゆえに差異の方が際立って見えてくることもある。これからも様々な土地でレジデンスプログラムに参加しながら、作品をつくっていきたいです。

成果発表展の会場で。左:片岡純也さん 右:岩竹理恵さん。

 

構成・文:及位友美(voids)

 

【プロフィール】

片岡純也 + 岩竹理恵(かたおかじゅんや・いわたけりえ)

2013年、渡仏を機にふたりの作品を組み合わせたインスタレーションを始める。その後、アイスランドや台湾などのレジデンスプログラムに参加。主な展覧会に「ピョンチャンビエンナーレ2017」(韓国)、個展「Latent Constellation」2016年(Treasure Hill, 台北)、「ambiguous border」2014年パリ国際大学都市日本館(パリ)など。

ウェブサイト
片岡純也+岩竹理恵 http://kataoka-iwatake.tank.jp/