助成金2020年度実績

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U39アーティスト・フェローシップ助成

【総評】

本助成は、横浜から世界に芸術文化を発信する次世代のアーティストを育成し、そのキャリアアップを支援するための助成制度として2016年度より始まり、今回で制度名称を変更しながら5回目の募集となる。

申請状況については、応募総数43件の申請が寄せられ、美術分野28件・舞台芸術分野15件の内訳となった。(2019年度実績:応募総数51件)※分野は申請者の申告による

応募43件中、所在地別分布でみると、横浜市23件(53%)、東京都12件、横浜市を除く神奈川県5件、その他地域3件となった。昨年度応募における横浜市在住者53%(27件)と比べて、割合としては同数の申請が寄せられた。年齢分布は40代1件(継続申請)、30代28件(65%)、20代14件(33%)となり、昨年度応募における年齢分布と比べ、応募者の年齢層がわずかに上昇した。

選考委員会は、フェローシップでは5名の有識者による審査員で構成される。選考にあたっては、それぞれ助成趣旨のほかに選考のポイントを掲げ、各項目について選考時の基準とした。

選考のポイント
地域性:横浜の地域や環境に根ざした、またはそれらに喚起された活動や芸術創造が期待される
国際性:国境を越えて共有できる問題意識や観点を有した活動や芸術創造が期待される
将来性:自身の芸術創造が広まる・深まる活動であり、今後国内外での活躍や発展が期待される
独創性:手法や形態、またテーマやコンセプトなど、優れた発想や独自性を有した活動や芸術創造が期待される
実現性:計画および資金使途が明確であり、活動規模や計画進行が妥当である
影響力:当該分野にかけて、また分野を越えて価値や活力をもたらす活動や芸術創造が期待される

審査員(敬称略/順不同)
小野晋司(横浜赤レンガ倉庫1号館館長、横浜市芸術文化振興財団チーフプロデューサー)
木村絵理子(横浜美術館主任学芸員、ヨコハマトリエンナーレ2020企画統括)
住友文彦(アーツ前橋館長、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科准教授)
藤原徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ代表、横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)
山口真樹子(ゲーテ・インスティトゥート東京、国際舞台芸術交流)

以上の方針の上で、各分野審査員による企画書査読と面談を経た後に選考委員会を開催した。結果採択は6件(うち前年度継続2件、採択率14%)となった。

審査員総評(PDF)

【新規採択】(氏名:50音順)

アーティスト 荒木 悠 (アラキ ユウ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 美術家・映像作家。1985年生まれ。異文化間のはざまに着目し、それらを取り巻く事象を再現・再演・再話といった手法で編み直す映像インスタレーションを展開している。これまでの主な個展に「RUSH HOUR」(CAI02、2019年)、「ニッポンノミヤゲ」(資生堂ギャラリー、2019年)、「双殻綱:第一幕」(無人島プロダクション、2017年)、「複製神殿」(横浜美術館アートギャラリー1、2016年)など。展覧会の形式にとどまらず、近年では映画祭でも作品が上映されている。
アーティスト 市原 佐都子(イチハラ サトコ)
交付金額 800,000円
プロフィール 劇作家・演出家・小説家。1988年大阪府生まれ福岡県育ち。桜美林大学にて演劇を学び、2011年よりQ始動。人間の行動や身体にまつわる生理、その違和感を独自の言語センスと身体感覚で捉えた劇作、演出を行う。2011年、戯曲『虫』にて第11回AAF戯曲賞受賞。2017年『毛美子不毛話』が第61回岸田國士戯曲賞最終候補となる。2019年に初の小説集『マミトの天使』を出版。同年『バッコスの信女 ─ ホルスタインの雌』をあいちトリエンナーレにて初演。同作にて第64回岸田國士戯曲賞受賞。公益財団法人セゾン文化財団セゾン・フェローⅠアーティスト。
アーティスト 高山 玲子(タカヤマ レイコ)※継続
交付金額 800,000円
プロフィール アーティスト・俳優・体メンテナンス体操主催。俳優として多くの舞台、映像、パフォーマンス作品に出演する。同時に映像作品、各種メディアを用いたパフォーミングアーツ作品の制作を行う。2019年アート・コレクティブ few phew pur(フュー ヒュー ピュー)を結成。近作は『ゴーストライター』(2018)、『ハイツ高山』(2019)、『祈りの素描』(2020)などを発表。主に境界線(演者/観客・あなた/わたし・あの世/この世)、これらの見えないラインを、可視化・表象することで起こりうる認識のズレなど、人の数だけ答えが違うことをみんなで面白がれることを軸とした制作活動を行なう。
アーティスト 中村 大地 (ナカムラ ダイチ)
交付金額 800,000円
プロフィール 作家、演出家。1991年東京都生まれ。東北大学文学部卒。在学中に劇団「屋根裏ハイツ」を旗揚げし、8年間仙台を拠点に活動。2018年より東京に在住。人が生き抜くために必要な「役立つ演劇」を志向する。近作『ここは出口ではない』で第2回人間座「田畑実戯曲賞」を受賞。「利賀演劇人コンクール2019」ではチェーホフ『桜の園』を上演し、観客賞受賞、優秀演出家賞一席となる。その他、シアターコモンズ2020にてリーディングパフォーマンス『正面に気をつけろ』(作:松原俊太郎)の演出など、劇団外での演出作品も多数。一般社団法人NOOKのメンバーとしても活動。
アーティスト ハラサオリ (ハラサオリ)
交付金額 800,000円
プロフィール ダンサー、美術家。自身の身体を用いたパフォーマンス作品の制作を軸に、サイトスペシフィックな空間/時間における即物的身体の在り方を探求している。近年ではダンサーであった実父との生別と死別を扱ったセルフドキュメンタリー作品「Da Dad Dada」を日独の二カ国で上演。また翌年の2019年にはDance New Airにて「no room」を発表。東京芸術大学デザイン科修士、ベルリン芸術大学舞踊科ソロパフォーマンス専攻修了。2015年度吉野石膏美術振興財団在外研修員、2017年度ポーラ美術振興財団派遣海外研修員。
アーティスト 本間 メイ(ホンマ メイ)※継続
交付金額 800,000円
プロフィール アーティスト、Back and Forth Collectiveメンバー。1985年東京都生まれ。2011年チェルシー芸術大学大学院ファインアーツ科修了。インドネシアと日本の歴史的関係のリサーチを基点に、社会・政治的な問題や多国間における関係性を考察する映像作品やインスタレーションを発表。近年は公に語られない女性に関する歴史を主に扱う。
主な個展に2020年「Bodies in Overlooked Pain -見過ごされた痛みにある体-」黄金町エリアマネジメントセンター、主なグループ展に2019年「Instrumenta #2 MACHINE/MAGIC」National Gallery of Indonesiaなど。

クリエイティブ・インクルージョン活動助成

【総評】

本助成制度は、平成28年度から数えて5回目の募集である。これまでの実績を見て、クリエイターが持つ独自の視点が深く、広いほど、社会に出る影響は大きく、社会と人の関係性(社会包摂)に優れた問いをもたらすことが分かった。新型コロナ感染拡大の影響を受け、多くの人が閉塞感、孤立感を感じている中で、これまでのインクルージョン活動の対面を前提とした活動から、オンラインなど新しい手法での双方向性があるかたちの活動申請が多くあった。今回の審査結果はインクルージョン活動の新たなかたちや考え方を前進させるものとなった。

本助成制度の審査項目は、要項で以下をあげている。
①先駆性:芸術や取組みとして先駆けた活動であるもの。
②弾力性:思考や行動などが、環境や状況の変化に応じて柔軟に対応できるもの。
③持続性:自らの持続可能性と社会の持続可能性が繋がり、継続していける活動であるもの。
④多様性:都市の多様性を理解した活動であるもの。
⑤実現性:企画、体制、場所の確保、予算、スケジュールの妥当性と進行管理能力があるもの
⑥影響力:将来的に社会へのインパクトを与える期待がもてるもの

25件の応募があった。うち採択されたものは5件で、新規採択3件、継続採択2件となった。
採択されたものは、創造都市施策やクリエイティブ・インクルージョンの取組みの趣旨をよく理解し、中長期的な効果を持ったものが多く、芸術と社会を深く問うものとして期待できるものである。

【新規採択事業】(事業名:50音順)

申請団体名(代表) 加藤道行
事業名 高齢者パーソナルプログラム「おうち劇場」
交付金額 400,000円
内容 および講評

舞踏家の加藤氏が、アートに触れる機会が少なくなった横浜市内の高齢者のお宅で、認知症等当事者を中心に様々な人を対象に、アーティストが訪問し、歌や踊りを行うプログラムを実施する。その体験を通してこころ休まる場をつくるとともに、認知症等当事者を中心に介護者やアーティストなど様々な人が集う交流の場をつくるプロジェクト。認知症等があってもアートを通じて豊かに生きることができる在宅での生活の新しいあり方を提案することに期待している。

申請団体名(代表) LITTLE ARTISTS LEAGUE(代表:望月実音子)
事業名 双方向性コミュニケーションアートで多文化の心をつなぐ「やさしさの花」アートリレー
交付金額 700,000円
内容 および講評

次世代を担う子どもたちがアートを通じてより多様な表現力とグローバル思考を育むことをミッションとして活動しているアート団体のLITTLE ARTISTS LEAGUEが、新型コロナウィルス感染症の影響で社会から孤立している在留外国人や子ども達を対象に、オンラインを使用し、双方向性コミュニケーションアートで人と人を繋げるプロジェクトを実施する。多種多様な参加者の共鳴を呼び合いながら多文化共生のあり方をアートを通じて探り、国籍や国境を越えて横浜から世界にむけて広がることを期待したい。

申請団体名(代表) 特定非営利活動法人 心魂プロジェクト(代表:寺田真実)
事業名 病児者・障がい児者・ご家族・関係者へのオンライン・パフォーマンスデリバリー
交付金額 700,000円
内容 および講評 NPO法人心魂プロジェクトは舞台に触れられない人に向けてオリジナルミュージカル等様々なパフォーマンスをデリバリーする活動を行っている団体。既に取り組んでいる実績がある中、新型コロナウィルス感染症の流行により今後1年以上病室や家から出られない病児者・障がい児者やそのご家族と関係者に向け、オンラインでパフォーマンスをデリバリーする活動を実施する。コミュニケーションを絶やさないことで各家庭が孤独化せず、パフォーマンスを通して心に活力を送り続けて行くプロジェクト。
このプロジェクトが持続的に発展していき、アートがもたらす個人やコミュニケーションへの変化を観察し、孤独化に関する気づきを社会に与えていくことを期待したい。

【継続採択事業】(事業名:50音順)

申請団体名(代表) 渡辺 篤
事業名 同じ月を見た日(アイムヒア プロジェクト)
交付金額 1,000,000円
内容 および講評 現代美術家の渡辺氏の提案で継続3年目。昨年度は、ひきこもり当事者・経験者と“開かれた対話”、“再構築と修復”の概念を取り込んだ対面型制作、展示を行った。社会から孤立した人と接続し、その存在をなきものにしない表現活動を行う事で、これまで社会に対して閉じられ語られてこなかったことを語るきっかけとなっていた。
3年目となる今回の申請は、孤立感を感じるひきこもり当事者と新たに孤立の境遇に立った全ての人を対象とし、遠隔で同じ月の観察をきっかけとするオンライン交流や展覧会を行い、コロナ禍及びアフターコロナに対してのアートプロジェクトを行う。自主隔離を終えた未来、これまでもこれからも孤立せざるを得ない人々に対し、社会の側が他人事の意識を越えてまなざしを向ける機会を創出することで、社会の実状をアーティストの目を通して顕在化させていくことを期待する。
申請団体名(代表) 竹本真紀
事業名 寿町で子どもたちと山車まつりをしたいっ2020
交付金額 700,000円
内容 および講評 美術家の竹本氏の提案で継続2年目。町で子どもや地域の人々と一緒に新たなまつりをつくるアートプロジェクトを行った。体験を通して都市における新しい共同性の在り方や価値観が社会と共有されるきっかけとなった。2年目となる今回の申請は、昨年度のプロジェクトからの気づきを活かし、山車まつりにあわせてお囃子をつくり、寿町内を練り歩くことを目標にアートプロジェクトを行う。引き続きこの活動を通してこれまで以上に多くの人と共有し、活動が社会に広く周知されることを期待する。

 


ヨコハマ創造産業振興助成

【総評】

本助成制度は、昨年度に引き続き実施している。市内に優れた中小企業等があるのを背景に、クリエイターのアイデアと企業や大学等の技術力とのかけあわせで新たなビジネスが生まれることを期待し、横浜ならではのデザイン・ものづくりが国内外に発信されることを支援している。あわせて、環境、医療、教育、子育て、防災、福祉などソーシャルビジネスにおいて創造性を発揮し、社会に変化をもたらす挑戦も対象としている。

選定のポイントは以下のとおりである。
●計画性:目的とゴールが明確に立てられている計画であること。
●地域性:横浜ならではの魅力づくりにつながること。
●創造性:新たなものを生み出す創造的な取組であること。
●革新性:これまでの社会を変革する可能性があり、社会に広がる期待があること

今年度の申請は5件あり、3件が採択された。創造性や革新性、地域性という点において、上記趣旨にある前者の”ものづくり”よりも、後者の”ことづくり”の方が高い評価を得た。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて変化する地域のアートビジネスにも注目した。いずれも、地域の人の繋がりに焦点をあわせてビジネスを展開していくプランであり、現在の状況を反映するようなものとなっている。

本制度では、クリエイターの活動の可能性を広げていく目的も持っている。提案には、アイデアがよくてもビジネス面に弱いものもあるため、今年度からビジネス面を審査員や事務局がアドバイスすることで強化できるよう制度を変更している。
それによって、より創造性、革新性が高いもの、完成されたものよりも将来の可能性があるものが採択された。今後、各者の事業としての発展を期待したい。

申請団体名(代表) Gallery+Sushi三郎寿司あまね(代表:田口竜太郎)
事業名 あまねオンラインギャラリー開設
交付金額 400,000円
内容 および講評

元町に拠点を構えるギャラリーが実施するもので、新型コロナウイルスの感染拡大で活動の場を失っているアーティスト達の支援として、コロナ禍でもオンラインで発信出来る場所を作ることで、未来の横浜のアートシーンへと繋いでいくプロジェクト。ギャラリーをスタジオとして活用し、写真や動画の撮影や配信、インスタレーションやパフォーマンス、音楽等様々なカルチャーのアーティスト達の発信拠点とする。コロナ収束後は横浜元町の実店舗とオンラインギャラリーを平行して展開し、コロナ禍の前よりももっと横浜のアートシーンの発信をできるようにしていく。

申請団体名(代表) あしおとでつながろう!プロジェクト(代表:おどるなつこ)
事業名 「デジタルギフト あしおとの輪」開発
交付金額 800,000円
内容 および講評

共生教育及びタップダンスコミュニケーションプログラム「あしおとの輪」へニーズが高まる中、ELECTROGIC との共同開発でオンライン版を開発。「上映会+オンラインワークショップ」として販売する。まずは、映像で多様な身体、表現への想像力を膨らませた後、続いてオンラインタップダンス体験へと移行する。実際にダンスを体験する施設にPCと簡易タップシューズ”おとたび”を貸出すことでリアルと遠隔双方で、タップダンサーや音楽家、メッセンジャー(障害のある案内人)とともに実際に会って実施しているかのようにセッションを行うことが可能となる。
実施にあたり、サービスを提供する「あしおとでつながろう!」、サー ビスを提供される「学校や福祉施設」に加えて、この体験をギフトとしてプレゼントする「第三者」が資金提供者と なる「デジタルギフト」という仕組みをビジネルモデル化していく。

申請団体名(代表) 特定非営利活動法人 スローレーベル(代表:栗栖良依)
事業名 日本初・ソーシャルサーカス教室開校に向けた準備事業
交付金額 1,800,000円
内容 および講評

サーカスのエクササイズを通じて、障害者、ひきこもりなど社会に出ることに課題のある方を対象に、半年間(月2回全12回の連続講座)で協調性、ストレス耐性、創造力、コミュニケーション能力、危機管理能力等、社会で生き抜く上で必要なソーシャルスキルを身につける教室を開校する(2021年秋予定)ための準備事業である。今年度は、モニター20名を募集して実施。段階的にステップアップするプログラムを策定し、横浜市立大学の増田教授が開発した診断ツールを用いて、数値的なエビデンスを取りつつ、検証する。また、宣伝ツールの制作、遠方の希望者や、障害者施設などを想定した体験キットを制作し、ターゲットの拡大をはかる。


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