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イベント
2025/09/04
横浜のローカルアートシーンを伝えるアートプロジェクト「ミナトノアート」も今年で5年目を迎えます。 それに先駆け、9/11 (木)〜9/14(日)に横浜市役所1階展示スペースで〜Yokohama Art Voyage〜「ミナトノアート+」を開催します。 今回の「ミナトノアート+」では、横浜市内の福祉施設にアーティストが訪問し、アートワークショップを実施し作品を制作。 そこで生まれた作品と表現や関係性の成果を、参加アーティストを含むミナトノアートがキュレーションし、横浜市役所にて展示します。 アートを通じた繋がりや、可能性の発掘、創造性の広がりを感じていただければ幸いです。 「ミナトノアート+(プラス)」 会期:9月11日(木)〜9月14日(日) 時間:7:00~23:30 会場:横浜市役所1階展示スペース(中区本町6丁目50-10) 入場料:無料 主催:ミナトノアート実行委員会 委員⻑:⽥⼝⻯太郎(株式会社アマネプロ) 事務局⻑:⽊村いよ(Atelier fourteen) 顧問:内藤正雄(株式会社ファボリ) 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 令和7年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業   【参加アーティスト × 施設】 会場には制作された展示作品が並びます。※アーティスト五十音順 No.1 安食 真 (studio nibroll)×田園工芸(青葉区) No.2 内田千速(NIL)×風のバード(中区) No.3 UHA! UHA!! PRODUCTS(ヒトミ チヒロ、Motohiro Kitazawa)×ほっとすぺーす関内(中区) No.4 菊川紗英×むくどりの家(旭区) No.5 木村いよ(Atelier fourteen)×アート工房クローバー(中区) No.6 白鳥雄也×アトリエ窓(戸塚区) No.7 もちづきももか(Art Room Lumiere教室長)×egao(栄区) No.8 桃川あいこ×ミモザ(金沢区) 【展示パネル】 リサーチ・編集:林北斗 パネルデザイン:加藤花苗 パネル制作:Motohiro Kitazawa 【プロデューサー】 田口竜太郎(ミナトノアート実行委員会 委員長) 【協力】 特定非営利活動法人 横浜市精神障害者地域生活支援連合会 詳しくはこちらから ミナトノアートInstagram   Yokohama Art Voyageとは? 今年で3回目の開催となる国際アートフェア「Tokyo Gendai」が、9月11日(木)~14日(日)にパシフィコ横浜で開催されます。 「Tokyo Gendai」の開催期間を中心に、「Yokohama Art Voyage(ヨコハマ アート ボヤージュ)」と題して市内の創造界隈拠点や横浜美術館、横浜市役所などで、様々なアートプログラムを展開します。 国内外の現代アートが集うアートフェアに加え、気軽に参加できるワークショップや街を舞台にしたアートフェスティバル、無料でご覧いただけるアーティストの公開制作など、多彩なプログラムが横浜を彩ります。 アートでつながる横浜の旅へ、ぜひお越しください。 詳しくはこちらから Yokohama Art Voyage
#ミナトノアート
事務局より
2025/09/03
(公財)横浜市芸術文化振興財団では、令和8(2026)年4月採用の職員採用試験を実施します。 募集期間:令和7(2025)年9月5日(金)午前10時00分から9月24日(水)午前9時59分まで 詳細はこちらからご確認ください。 https://recruit.yafjp.org/
イベント
2025/09/09
2025年度アーティスト・フェローの安田葉さんが、チェコセンター東京で「バルボラ・カフリーコヴァー&安田葉 二人展「わたしは、ここに在る」」にて作品を展示します。 安田さんは、伝統的な凧から着想を得たインスタレーションを展示。 「バルボラ・カフリーコヴァー&安田葉 二人展「わたしは、ここに在る」」 会期:9月19日(金)〜 11月18日(火)※土日・祝日は休館 時間:10:00~19:00 会場:チェコセンター東京(渋谷区広尾2-16-14 チェコ共和国大使館内) https://www.instagram.com/p/DOA_C3REmxO/?utm_source=ig_web_copy_link
#美術
コラム
2025/08/15
横浜市内外で活躍する人や場所を紹介し、芸術文化と社会との関わりから生まれる価値や役割を考える機会として、アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が開催する「ACYフォーラム」。2025年7月11日に、vol.5が開催されました。 今回のテーマは、「横浜発の創造性:広がるつながり、新たなチャレンジ」。横浜で新しい3つの展開が始まろうとしている今、その運営者とともに連携や協働のきっかけを探る機会となりました。 前半はBankPark YOKOHAMA /(株)竹中工務店の倉田駿さん、Art Center NEWの小川希さん、BankART1929の細淵太麻紀さんが登壇し、各団体の活動概要や協働の可能性について発表。後半は、企画・編集者の橋本誠さんをモデレーターに迎えたディスカッションや情報交換会が開かれました。 取材・文:安部見空(voids) 写真:大野隆介       BankPark YOKOHAMA 「工藝」をテーマに、人・もの・文化が交差する憩いの場へ   2025年秋に開業予定の共創拠点「BankPark YOKOHAMA(以下、BankPark)」がつくられる建物は、歴代「BankART1929 Yokohama」「ヨコハマ創造都市センター」などが入っていた旧第一銀行横浜支店。馬車道駅直結の好立地で、元々は明治時代に今ある場所から数百メートル離れた場所に建てられた銀行建築でした。 その後2003年に建物の一部をそのまま現在の場所に移動(曳家)。実はこの曳家の際に、BankParkの運営主体である建設会社の竹中工務店が関わっていたそうです。   東京都内でも歴史ある建物を活用し、保存再生する「レガシー活用事業」に取り組んできた竹中工務店。その第3弾がBankParkです。 「さまざまな人・もの・文化が交差する、憩いの場をつくっていきたい。この重厚で象徴的な建物を、いかにして市民に日常的に使ってもらえるか。公園のような場所になってほしいという思いから『BankPark』と名付けました」 日常的な場所であると同時に、文化を発信し共創していく場でもあることを目指す「BankPark」。掲げたテーマは「工藝」です。   工藝を中心に据え、「CRAFTING PARK」と「未来共創BANK」という2つの拠点がつくられていくと倉田さんは話します。 1階・2階がつながった吹き抜け空間につくられる「CRAFTING PARK」には、器を楽しむクラフトカフェ、工藝を学ぶライブラリー、花を生ける花器から着想したフラワーショップ、工藝作品が購入できるギャラリーなど、工藝によって日常を彩るさまざまな機能が点在。この場所は「非日常のにぎわい」を生み出すイベントやスクール、ワークショップ会場にも変わります。 「未来共創BANK」は、主に地下1階と2階、3階につくられるシェアオフィス。工藝の「ものを使い続けていく」という考え方から、「資源循環・サステナブル」をテーマにし、市民・企業・団体・クリエイターが定期的に集い話し合う「コラボミーティング」を構想中。それぞれがもつ課題を、クリエイティブの力によって解決へと導く場所を目指しています。 現在は秋口の開業を目指して工事中で、5月にはプレイベントを開催しました。 「学校の体育館は、床剤を数十年に一度取り替えるため廃棄物が多く出ます。その廃棄物を使って、子どもたちが椅子をつくるワークショップを企画。子どもたちの楽しむ姿を見て、ものづくりの手触り感の大切さを改めて感じました」 まさに、課題を解決しながら市民の憩いの場をつくる、BankParkのコンセプトが体現されたワークショップになったようです。 (7/31のプレスリリースにて、「CRAFTING PARK」は「CRAFT.」、「未来共創BANK」は「goodroom lounge横浜馬車道」と名前が決定しました。)     Art Center NEW オープンスペース、カフェ、ZINEショップを入り口に、ひらかれた空間へ     みなとみらい線新高島駅地下一階に、今年6月にオープンした「Art Center NEW」(以下、NEW)。ディレクターの小川さんは「新しさとは何かを問いかけるスペースになれば」と話します。 2008年から東京の吉祥寺にある「ArtCenter Ongoing」(以下、Ongoing)を運営してきた小川さん。ギャラリーやカフェを併設した芸術複合施設で、2週間に1度、小川さん自らがアーティストを招へいして企画展を開催してきました。17年間続けてきた経験やアーティストとのネットワークを元につくられたのが「NEW」です。 新高島駅構内の通路を活用した空間と、その奥に広がる巨大なギャラリーの、大きく2つの空間を擁し、通路側とエントランスは無料で誰でも出入りできるオープンスペース。 「アートは敷居が高い、わからないと思っている人も多いと思うんです。そんな人たちが、『なんか面白いものがある』くらいの感じで、気軽に入れる空間になってほしい」 エントランスにはアーティストのグッズを販売するスペースや  カフェを併設し、ドリンクやお菓子のほか、吉祥寺のOngoingでも評判のカレーなどを提供しています。 そして、もう一つの特徴は、130冊ほどのZINE(ジン:個人やグループが自由につくる冊子)が並ぶ壁面本棚。1970年代にアメリカで始まったカルチャーだといわれるZINEは、若者を中心に盛り上がりをみせています。国内外のZINEを目当てに来る来場者も多いのだとか。   「ZINEやグッズを見るだけでも楽しいですし、最近はカフェ好きの方や仕事帰りの方が、ふらっと立ち寄りこの空間を使ってくれています。そういう人たちがアートも見て、盛り上がってくれたりするのがすごくうれしい。子どもにも来てほしいと思っていて、靴を脱いで寝転がれたり、ゲームや読書をしたりして過ごせる小上がりをつくりました」 奥のギャラリーは、コンクリート打ちっぱなしの広々とした空間で、展覧会のほか音楽ライブや演劇、上映イベント、アートフェアなど、多様な芸術文化活動を展開する場所です。小川さんは発表の最後に今後の活動(ぜひNEW公式サイトのEVENTページをご覧ください:https://artcenter-new.jp)について紹介し、他組織や企業、行政との協働について話しました。 「横浜を中心に、ほかのスペースや大学と連携した教育プログラムをできないかと考えています。そして、NEWでは企業や行政とのつながりを積極的につくっていきたいと思っています」     BankART1929 オルタナティブスペースからアトピックサイトへ 2004年から20年間、横浜市の文化芸術創造都市施策のもと、さまざまな場所でオルタナティブスペースを運営してきたBankART1929(以下、BankART)。現在は横浜の街中でのプロジェクトや、他地域でのプログラムを進行中。拠点をもたない活動に注目が集まっています。代表の細淵さんは、20年間の歴史を振り返り、今後について話しました。 BankARTの歴史は、今年秋にBankParkが開く旧第一銀行横浜支店と、旧富士銀行を活用するところから始まりました。横浜市における創造都市施策の最終的なミッションとして、都市の活性化が掲げられていました。細淵さんは「文化のための文化事業ではなく、都市政策の事業だったからこそ、やってみようと思いました」と振り返ります。 歴史的な建造物を、現代の生きた文化芸術にふれる場として活用しながら、「公設民営」の新しい可能性を提示したBankART。長い年月のなかで、管理委託や指定管理者制度というかたちではない新しい公と民の関係性をつくりあげてきました。古い建物を活用した主催事業やコーディネート事業を柱に、スクール、カフェ 、パブ、ショップ、コンテンツ出版、スタジオ事業といった日常を支える活動を並行して展開してきました。 横浜市との関係、場所や経済構造などが変わった現在、これまでと同じ構造で活動することはできませんが、基本的な活動理念の部分は変わらないといいます。そして、これからの展開について、「アトピックサイト」という新たなテーマを打ち出しました。 「アトピックは、トピック(固有の場所)の否定型。一つの建物を起点として活動するのではなく、場所を限定しない活動や従来の展覧会・アートプログラムの枠に囚われないようなことにチャレンジしていきたい。すでに複数の場所で始動しつつありますが、それぞれの場所には固有の問題や条件があり、それぞれの場所で活動する人がいます。そういったものとこれまで以上に向き合いながら、複数のプロジェクトを展開していきます」   最後に細淵さんから、現在取り組んでいるプロジェクトの紹介がありました。横浜では、みなとみらいエリアやヨコハマポートサイド地区などで、シェアスタジオや街なかでのプロジェクトや展示などに引き続き取り組んでいます。 また全国的には、瀬戸内(香川県)、越後妻有(新潟県)、美郷町(秋田県)などの地域で、さまざまなプロジェクトが進行中です。   ディスカッション 街にひらくを共通項に、協働の可能性を探る ACYフォーラムは、登壇者と来場者の交流をとおして、新しいアイディアや協働の可能性を生み出すきっかけとなることを目指しています。その一つの工夫として、登壇者への質問や提案、感想などを記入できるコメントカードが事前に来場者へ配られていました。   後半のディスカッションでは、集まったコメントカードの内容を盛り込みながら、企画・編集者の橋本誠さんをモデレーターに各活動の広がりや協働の可能性について深めていきました。その一部を紹介します。 まず、橋本さんから小川さんにNEWの企画づくりについて聞くと、「吉祥寺のOngoingはほとんど一人でディレクションしていますが、NEWではあえて裏方に徹している」と小川さん。「次の世代の人たちがやりたいことに挑戦できる場所というコンセプト」で、ZINEやグッズの企画も、新しいスタッフが考えているといいます。 そして、ZINE企画についてはこう話しました。 「コピー機から生まれた文化ということで、コピー機メーカーとの協働なども探っているところです。現代アートの場所でもあり、『ZINEの聖地』でもあるというふうになってきたら、また違う発展の仕方をするのではないかと」 来場者から届いたBankParkの運営体制への質問には、「代表企業が竹中公務店で、工藝の部分は『株式会社CRAFTINGJAPAN』、シェアオフィスや企業等の協働のほうは、『グッドルーム株式会社』と連携していく」と倉田さんが答えます。 また、橋本さんからこんな問いかけがありました。 「NEWのグッズコーナーで取り扱う商品のなかにアーティストが既製品に絵付けしたお皿  見方によっては工藝的だなと思いました。小川さんたちの活動は、倉田さんからはどう見えていますか?」 倉田さんは「我々は『伝統工藝』に限定せずに、『日常のちょっといい暮らし』をつくっていくために、さまざまなクリエイティブなものづくりやコンテンツを広く集めて展示や販売ができればと思っています。なので、アート的な要素をどう取り入れていけるかという部分、ぜひご相談したいです。 資源循環のほうも、水平リサイクルだけでなく、別のものに生まれ変わらせる『アップサイクル』の考え方もありますよね。そこにもアートの力が必要になってくるんじゃないかなと思っています」と話します。 BankARTへのコメントカードには、「アトピックサイト」というキーワードへの反応が多くありました。 「場所から解放されてフリーになり、実はいろいろな方から『お話ししたい』とお声かけいただいています。一緒にできることを探ろうとしてくださるのはすごくありがたいですね。いろんな分野・方向性で、20年間やってきた知見を生かせればと思っています」と細淵さん。 そして、「BankARTが出版した本も含む横浜で集積した153箱分の書籍を秋田県美郷町に運び込んだというお話がありましたが、今、秋田町でその本が読めるのでしょうか?」という橋本さんからの質問に対しては、こう話しました。 「書籍については、テーマごとにセレクションした本棚をつくり、移動図書館のような形で展開していく予定です。横浜で集積した書籍が巣立ち、いろいろな場所に波及していくようなことができたらと思っています」 この春オープンしたNEW、秋の開業を目指して準備中のBankPark、新しい展開に向かっていくBankART。「スペースや活動が始まってからがまた佳境で、どんどん変わっていく面白さを見られるチャンスでもありますね。参加や協働のタイミングもそれぞれだと思います。今日のこの場も、横のつながりが増える機会になれば」という橋本さんの言葉で締めくくられました。   【登壇者プロフィール】 BankPark YOKOHAMA/(株)竹中工務店 倉田 駿 1991年生まれ。2018年名古屋工業大学大学院修了後、㈱竹中工務店に入社。JR大阪駅前の大型開発「グラングリーン大阪」等、都心部での街づくり業務に従事。同社が手掛ける横浜市認定歴史的建造物「旧第一銀行横浜支店」の運営事業(2025年秋開業予定)において、サーキュラーエコノミーをテーマに市民・企業・クリエイターが共創・発信を行う場の企画・運営を担当。 https://bankparkyokohama.jp/ Art Center NEW ディレクター 小川希 2001年武蔵野美術大学映像学科卒業、2003年東京大学大学院学際情報学府入学大学院修士課程修了。武蔵野美術大学非常勤講師(2011~)、成蹊大学非常勤講師(2022~)。2008年1月に東京吉祥寺に芸術複合施設 Art Center Ongoingを設立。文化庁新進芸術家海外研修制度にてウィーンに滞在(2021年-2022年)。中央線沿線周辺を舞台に展開する地域密着型アートプロジェクトTERATOTERAディレクター(2009年-2020年)、レター/アート/プロジェクト「とどく」ディレクター(2020年-2022年)など多くのプロジェクトを手掛ける。令和6年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。 https://artcenter-new.jp/ BankART1929代表 細淵太麻紀 BankART1929代表/アーティスト。埼玉県川越市生まれ、横浜在住。多摩美術大学にてグラフィックデザインと写真を学んだ後、1996年より美術・建築ユニット「PHスタジオ」に参加し、国内外のギャラリーや美術館での展示、野外プロジェクト、コミッションワーク、建築設計など多数手がける。2004年、横浜市の歴史的建造物等を文化活動に活用するBankART1929の立ち上げに参画し、以降企画運営全般に携わる。2022年4月より現職。 https://bankart1929.com/ 橋本誠(企画・編集者/ノマドプロダクション 代表理事) 1981年東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、東京文化発信プロジェクト室を経て2014年にノマドプロダクション、2023年に合同会社生活と表現を設立。多様化する芸術文化活動と現代社会をつなぐ企画・編集等に携わる。主な企画に都市との対話(BankART StudioNYK/2007)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町/2008~)など。秋田市文化創造館 プログラム・ディレクター(2020〜2021)。編著に『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』(千十一編集室/2021)。 【イベント概要】 日程:2025年7月11日(金) フォーラム15:30-17:00/情報交換会17:00-17:45 会場:BUKATSUDO(横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号ランドマークプラザ地下1階) 参加者数:49人 主催:アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団) 令和6年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
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コラム
2023/03/24
横浜市緑区中山の住宅街に、コワーキングオフィスやカフェ、ギャラリー、教室、多世代交流サロンなどが点在する小さなエリアがある。名付けて「753village(ななごーさんヴィレッジ)」。草の根的に広がったというこのコミュニティについて、プロジェクトメンバーの大谷浩之介さんと関口春江さんご夫妻、齋藤好貴さんに伺った。   薪風呂もある、まちのフロント「Co-coya」   お話を伺った場所は、753villageの玄関口として2022年2月にリニューアルオープンした「Co-coya」。住宅街の中でも人通りのある道に面した、築60年の民家を改修したコミュニティスペースだ。   建築家の関口春江さんが設計・運営を手がけるCo-coyaは、1階が陶芸家や染織家、画家、パティシエが入居するシェアアトリエ、2階がコワーキングオフィスとなっている。この地域の多くの家が備えているという井戸を復旧し、薪ストーブと薪風呂も設置。災害時には近所の人もトイレやお湯が使える、災害拠点としての機能も持たせた。   土壁や漆喰壁、三和土(たたき)土間といった日本の伝統技術を採用し、開放的でモダンな印象ながら周囲に溶け込んでいる。工事には地域からの参加者も募集し、左官職人から基礎技術を教わりながら作業した。 関口:「震災時のがれき処理について知った時、今建てている建物ってゴミになるんだなということが一番印象的でした。それから『ゴミにならない建築』というものを意識しだして、もともと日本の伝統建築で使われている自然素材に興味を持ったんです」   改修の費用は持ち出しに加えてクラウドファンディングを活用したほか、大家である齋藤好貴さんも巻き込んで横浜市の「ヨコハマ市民まち普請事業」に応募し調達した。 関口:「シェアアトリエとオフィスまでは先に改修して運営していて、ここを地域に開く場所にしようと決めたタイミングで、まち普請コンテストを知りました。自費で進めようと思っていましたが、私たちにぴったりの制度だと思い、齋藤さんに声をかけました。齋藤さんはこれまでの私たちの活動も中心になって一緒にやっていたので、齋藤さんにも表に出ていただくことで、こういう地主さんが増えたらいいなと思ったんです」 大谷:「ほかの施設が少し奥まったところに点在しているので、それぞれの場所が何をやっているか分かりにくいよねといった話を地域の方からいただいていました。それもふまえて、この家が空いた時に、各施設を面でつなぐようなイメージで、インフォメーションセンターのようにしようと考えたんです。そこに災害拠点の機能も持たせることで、いざという時に『あそこがあってよかった』と思ってもらえるといいなと。ふらっと来た方に『菌カフェに行こうと思ってるんです』と聞かれることもよくありますね」   原点は地主さんの思い   このエリアで家を「ひらく」試みは、高台の上にある「なごみ邸」から始まった。オーナーの齋藤さんは、「28年ほど前に空き家になった時、更地にして収益物件を建てるのもいいけれど、これから空き家がどんどん増えていってまちの元気がなくなってくるだろうし、せっかくなので地域に根ざした魅力的なモノの発信基地のような場所にできたらいいなと単純に思ったんです」と語る。     齋藤:「実験的ではあったのでドキドキしましたが、俳句やお茶の会、演奏会などに利用してもらっていろんな人が集まることによって、情報がいろいろ入ってくるようになり、そこでまた新しい発想が生まれることもあります」 当初は区外などからそうした催しに訪れる人が多かったため、地元の人にどんな施設か知ってもらおうと始めたのが、桜の時期の観桜会だ。10日〜長くて2週間、朝9時くらいから夜8時頃まで施設を公開し、夜にはライトアップしている。     齋藤:「個人宅に予約制とはいえ不特定多数の方が出入りするので、やっぱり心配するわけですよね。周囲の人に来てもらって、こんなところですよとお知らせすることで、口コミで不安を和らげることができればと思いました。時間はかかりますが、施設として、地域に対してのあり方としてそういう手法をとり、だんだん浸透してきました。 おかげさまで25年地道にやってきて、予想通り空き家が増えましたが、関口さんや大谷さんのように新しく地域に関わる方も来てくれるようになりました」   カフェからマルシェ、地域活性へ   関口さんと大谷さんがこのまちに関わるようになったのは10年前。現在は「菌カフェ753」として営業するカフェのスタートがきっかけだった。 菌カフェ753を運営するシェフの辻一毅さんは、都内のレストラン「Tsuji-que」を営業しながら、中山の近く、十日市場の自然農法の菜園に援農に来ていた。通うなら住んでみようと、引っ越した中山の家の大家が齋藤さんだった。裏手にカフェになる物件があると齋藤さんから聞いた辻さんに誘われ、援農仲間だった関口さんや大谷さんも物件を見に来た。   関口:「佇まいに一目惚れして、ここにどうにか関われないかなと思いました。そこで、自然農法や私たちがライフワークとしてやっていた醤油づくりなど、いろんな活動を発信する拠点にしたいというカフェのコンセプトを書いて齋藤さんに提案したんです。 空き家問題がちょうどよく取り沙汰されている時で、どんどん家が余るのに新しい家を建てるということに疑問を持っていました。ハコを作るよりはそれを生かすこと、ソフトのほうが面白い、価値があるんじゃないかなと考えていた時期でした」   辻さんと関口さん、大谷さんを含むチームで始めたカフェ。そこから月1回のマルシェが生まれ、少しずつ規模を広げていった。 大谷:「カフェの中で始めた小さなマルシェでしたが、そこから地域を盛り上げるものにしよう、地域を使った活動にしようというような方向が出てきたんです」   柔軟に変化していくコミュニティの中で暮らす   その後、マルシェの出店者がもっと定期的に出店できたり、気軽に小商いにチャレンジできたりする場所を作ろうと2016年にできたのが「季楽荘」。庭付きの立派な平屋で週1の「まがりカフェ」が営業するほか、セラピーや教室用に抑えた料金設定で部屋を貸し出している。   季楽荘の敷地内のガレージを改装し、「Gallery N.」もできた。白い壁のスペースで、個展やグループ展を開催することができる。なごみ邸・楽し舎と合わせた4施設は、齋藤さんがご夫妻で手分けして運営している。   こうしてゆるやかにつながる拠点のコミュニティができあがっていき、齋藤さんと関口さん、大谷さん、辻さんらは、すっかりまちのことを共に考える協働関係に。 齋藤:「私自身で全部なんてできないんですよ。一つの組織や一人がプロデュースしても、結局その色からあまり出られないと思うんです。発想に限りがあるので。いろんな人との出会いをうまく組み合わせることによって、魅力的な景色になって、まちの活性化につながる、それが一番大事だと思っています。 この方たちだったら、地域の中で自分たちのこれからやりたいことをどんどん自分たちのスタンスで広げていってくれるだろうとすごく感じられたので、私は単純に場所を貸すことで、地域がより充実していく、それでまた人が引き寄せられる、そういう相乗効果が出てきていますね」   「753village」という見せ方を考え始めたきっかけは、エリア内の建売住宅3棟を齋藤さんが取得したことだった。相続などの関係で一度手放さざるを得なかった土地だが、住宅が建てられたあと、やはりこのエリアへの思いが強い齋藤さんが、なごみ邸や菌カフェ753のある通りに面する側だけ買い戻したのだそうだ。 大谷:「賃貸物件として貸し出す上で、『コミュニティの中で暮らすこと』という打ち出し方を考えているうちに、『ヴィレッジ』というコンセプトが立ち上がりました。最初からプロジェクトのがっちりしたイメージがあったわけではなくて、関わる人たちの要望などを聞きながら作っていき、活用の仕方も流動的に変化してきました。街の変化に合わせて今後も変化していけばいいかなと思っています」     建売住宅のうち1棟は、多世代交流カフェ「レモンの庭」として2018年から一般社団法人フラットガーデンが運用することに。ニットカフェや健康マージャン、「推し活DAY」などの会を設け、乳幼児連れの子育て世代や小中学生、シニアまでさまざまな人の居場所となっている。   入居者を募集した住居は大変人気となり、待ちが出るほどだそう。 「お客さんで来たり、スタッフでちょっと手伝ったり、このまちとのいろんな関わりを自分のライフスタイルの中に自然に取り込んでくださった方が、今度は住みたいねという意識になって来てくださっているんです」と齋藤さん。わかりやすいキャッチコピーで固定のイメージを作るのではなく、地道に場所・活動をひらいていくことで理解者や協力者を増やしていくなごみ邸のスタイルが753villageという形につながり、新たなステージを迎えている。   文:齊藤真菜 撮影:大野隆介   【INFORMATION】 753village https://nakayama753.com/ Cocoya 横浜市緑区中山町86 JR横浜線・中山駅 南口より徒歩7分 linktr.ee/cocoya_nakayama なごみ邸 横浜市緑区中山5-1-1 https://www.nagomitei.jp/home/ 菌カフェ753 横浜市緑区中山5-3-10 045-935-7531 多世代交流カフェ「レモンの庭」 横浜市緑区中山5-4-7 https://www.flatgarden-yokohama.com 杜のぴか市 https://www.instagram.com/mori_no_picaichi/   【プロフィール(五十音順)】 大谷 浩之介 2013年に「753プロジェクト」を立ち上げ、2014年より横浜市緑区中山在住。東京の社会教育の現場で地域住民のコミュニティ形成支援に携わったのち、横浜で多様な主体による共創事業に携わる。自宅をシェアハウスとしながら、地域の空き家活用を進めてきた。楽しんで暮らしをつくることに邁進中。2009年より取り組む手づくり醤油の活動では、搾り師を担う。 齋藤 好貴 横浜市中山の建久2年(1191年)から続く旧家に生まれる。1990年実家が経営している株式会社八廣に入社、主に不動産管理の業務に携わる。1998年空き家を活用し、レンタルスペース「なごみ邸」を開設。多様な企画催しや独自の地域コミュニティの核心地となるべく業務を続けている。 新たな空き家を活用し趣旨考察を共感する仲間たちを中心に魅力的なコミュニティのある街創りに日々勤しむ。 関口 春江 本業は住宅や庭の設計デザイン。 お醤油づくりと緑区中山への移住をきっかけに「自分たちの暮らしは自分たちでつくる」をコンセプトに、地主さんと共にコミュニティを醸造中。活動エリア内にある空き家のポジティブな転換が次々はじまり、2022年に各拠点をつなぐインフォメーションとして環境共生型リノベーションで空き家を再生。豊かな暮らしとは?を日々模索し続けている。
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助成
2025/05/09
「2025年度 ACYアーティスト・フェローシップ助成」において、4名の採択者を決定しました。 ・Aki Iwaya(アーティビスト) ・城戸 保(写真作家) ・小林 勇輝(現代美術家・パフォーマンスアーティスト) ・安田 葉(アーティスト) 詳細はこちら
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アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)は、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団が運営する「芸術文化と社会を横断的に繋いでいくための中間支援」のプログラムです。

横浜市の掲げる文化芸術創造都市施策の実現に向け、都心臨海部におけるアーティスト、クリエイター、企業、行政、大学、NPO、非営利団体等の創造の担い手が活動しやすい環境づくりを推進します。