TOPICS

助成
2025/05/09
「2025年度 ACYアーティスト・フェローシップ助成」において、4名の採択者を決定しました。 ・Aki Iwaya(アーティビスト) ・城戸 保(写真作家) ・小林 勇輝(現代美術家・パフォーマンスアーティスト) ・安田 葉(アーティスト) 詳細はこちら
#助成
イベント
2025/08/04
〇小林勇輝 「The Wing Chun Project」 「The Wing Chun Project(詠春拳プロジェクト)」とは、中国南部武術「詠春拳」を起点とした学際的パフォーマンス作品です。 詠春拳は、少林寺の僧侶・拳法家であった女性によって創始されたと言われています。自分より強い体躯の相手からの家庭内暴力、性的暴力に対抗するために狭い空間での体捌きに特化した技として、数々の戦いの中で密かに発展しました。その後、日中戦争や国共内戦のために佛山から香港に亡命した祖師「葉問(イップ・マン)」の弟子たちよって世界的に普及されました(*起源には諸説あり)。現在は、映画のアクションシーンや格闘技などにも広く取り入れられています。 「The Wing Chun Project」ワークショップ 今回のワークショップでは、詠春拳の成り立ちや歴史背景を共有しながら、実際に基礎的な手法を参加者同士で体験していただきます。そして、現代における詠春拳を「実践的な攻防を学び、自身を鍛錬する術」としてだけでなく、「相手との接触を通したコミュニケーションの方法」として再解釈を試みます。 参加申込はこちらから 終了しました。 ■開催日 2025年8月23日(土)15:00~17:00 ■会場 Murasaki Penguin Project Totsuka(横浜市戸塚区戸塚町4247-21地下1階) ■料金 無料 ■定員 15名 ※先着順 主催:小林勇輝 助成:アーツコミッション・ヨコハマ 「The Wing Chun Project」試演会 今回の試演会では、2019年より詠春拳の鍛錬・リサーチを重ねてきた本プロジェクトの現在地を共有します。これまでの訪問先や交流を辿るレクチャーや伝統的な型の紹介、横浜滞在中に制作する木製の立体作品を交えた独自のパフォーマンスなどによって構成し、詠春拳を複合的に解釈する機会とします。そして、プロジェクト始動後初となる「Murasaki Penguin Project Totsuka (MPPT)」という劇場空間での実施を通じて、今後の新たな方向性を見出すことを模索します。 参加申込はこちらから ■開催日 2025年9月7日(日)14:00~16:00 ■会場 Murasaki Penguin Project Totsuka(横浜市戸塚区戸塚町4247-21地下1階) ■料金 無料 ■定員 30名 ※先着順 主催:小林勇輝 助成:アーツコミッション・ヨコハマ 協力:MPP Totsuka、大洋建設(株)、(株)大橋、(株)銘林、(株)カネジュウ   2025年度アーティスト・フェローの開催するイベント情報は、随時更新していきます。
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コラム
2025/08/15
横浜市内外で活躍する人や場所を紹介し、芸術文化と社会との関わりから生まれる価値や役割を考える機会として、アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が開催する「ACYフォーラム」。2025年7月11日に、vol.5が開催されました。 今回のテーマは、「横浜発の創造性:広がるつながり、新たなチャレンジ」。横浜で新しい3つの展開が始まろうとしている今、その運営者とともに連携や協働のきっかけを探る機会となりました。 前半はBankPark YOKOHAMA /(株)竹中工務店の倉田駿さん、Art Center NEWの小川希さん、BankART1929の細淵太麻紀さんが登壇し、各団体の活動概要や協働の可能性について発表。後半は、企画・編集者の橋本誠さんをモデレーターに迎えたディスカッションや情報交換会が開かれました。 取材・文:安部見空(voids) 写真:大野隆介       BankPark YOKOHAMA 「工藝」をテーマに、人・もの・文化が交差する憩いの場へ   2025年秋に開業予定の共創拠点「BankPark YOKOHAMA(以下、BankPark)」がつくられる建物は、歴代「BankART1929 Yokohama」「ヨコハマ創造都市センター」などが入っていた旧第一銀行横浜支店。馬車道駅直結の好立地で、元々は明治時代に今ある場所から数百メートル離れた場所に建てられた銀行建築でした。 その後2003年に建物の一部をそのまま現在の場所に移動(曳家)。実はこの曳家の際に、BankParkの運営主体である建設会社の竹中工務店が関わっていたそうです。   東京都内でも歴史ある建物を活用し、保存再生する「レガシー活用事業」に取り組んできた竹中工務店。その第3弾がBankParkです。 「さまざまな人・もの・文化が交差する、憩いの場をつくっていきたい。この重厚で象徴的な建物を、いかにして市民に日常的に使ってもらえるか。公園のような場所になってほしいという思いから『BankPark』と名付けました」 日常的な場所であると同時に、文化を発信し共創していく場でもあることを目指す「BankPark」。掲げたテーマは「工藝」です。   工藝を中心に据え、「CRAFTING PARK」と「未来共創BANK」という2つの拠点がつくられていくと倉田さんは話します。 1階・2階がつながった吹き抜け空間につくられる「CRAFTING PARK」には、器を楽しむクラフトカフェ、工藝を学ぶライブラリー、花を生ける花器から着想したフラワーショップ、工藝作品が購入できるギャラリーなど、工藝によって日常を彩るさまざまな機能が点在。この場所は「非日常のにぎわい」を生み出すイベントやスクール、ワークショップ会場にも変わります。 「未来共創BANK」は、主に地下1階と2階、3階につくられるシェアオフィス。工藝の「ものを使い続けていく」という考え方から、「資源循環・サステナブル」をテーマにし、市民・企業・団体・クリエイターが定期的に集い話し合う「コラボミーティング」を構想中。それぞれがもつ課題を、クリエイティブの力によって解決へと導く場所を目指しています。 現在は秋口の開業を目指して工事中で、5月にはプレイベントを開催しました。 「学校の体育館は、床剤を数十年に一度取り替えるため廃棄物が多く出ます。その廃棄物を使って、子どもたちが椅子をつくるワークショップを企画。子どもたちの楽しむ姿を見て、ものづくりの手触り感の大切さを改めて感じました」 まさに、課題を解決しながら市民の憩いの場をつくる、BankParkのコンセプトが体現されたワークショップになったようです。 (7/31のプレスリリースにて、「CRAFTING PARK」は「CRAFT.」、「未来共創BANK」は「goodroom lounge横浜馬車道」と名前が決定しました。)     Art Center NEW オープンスペース、カフェ、ZINEショップを入り口に、ひらかれた空間へ     みなとみらい線新高島駅地下一階に、今年6月にオープンした「Art Center NEW」(以下、NEW)。ディレクターの小川さんは「新しさとは何かを問いかけるスペースになれば」と話します。 2008年から東京の吉祥寺にある「ArtCenter Ongoing」(以下、Ongoing)を運営してきた小川さん。ギャラリーやカフェを併設した芸術複合施設で、2週間に1度、小川さん自らがアーティストを招へいして企画展を開催してきました。17年間続けてきた経験やアーティストとのネットワークを元につくられたのが「NEW」です。 新高島駅構内の通路を活用した空間と、その奥に広がる巨大なギャラリーの、大きく2つの空間を擁し、通路側とエントランスは無料で誰でも出入りできるオープンスペース。 「アートは敷居が高い、わからないと思っている人も多いと思うんです。そんな人たちが、『なんか面白いものがある』くらいの感じで、気軽に入れる空間になってほしい」 エントランスにはアーティストのグッズを販売するスペースや  カフェを併設し、ドリンクやお菓子のほか、吉祥寺のOngoingでも評判のカレーなどを提供しています。 そして、もう一つの特徴は、130冊ほどのZINE(ジン:個人やグループが自由につくる冊子)が並ぶ壁面本棚。1970年代にアメリカで始まったカルチャーだといわれるZINEは、若者を中心に盛り上がりをみせています。国内外のZINEを目当てに来る来場者も多いのだとか。   「ZINEやグッズを見るだけでも楽しいですし、最近はカフェ好きの方や仕事帰りの方が、ふらっと立ち寄りこの空間を使ってくれています。そういう人たちがアートも見て、盛り上がってくれたりするのがすごくうれしい。子どもにも来てほしいと思っていて、靴を脱いで寝転がれたり、ゲームや読書をしたりして過ごせる小上がりをつくりました」 奥のギャラリーは、コンクリート打ちっぱなしの広々とした空間で、展覧会のほか音楽ライブや演劇、上映イベント、アートフェアなど、多様な芸術文化活動を展開する場所です。小川さんは発表の最後に今後の活動(ぜひNEW公式サイトのEVENTページをご覧ください:https://artcenter-new.jp)について紹介し、他組織や企業、行政との協働について話しました。 「横浜を中心に、ほかのスペースや大学と連携した教育プログラムをできないかと考えています。そして、NEWでは企業や行政とのつながりを積極的につくっていきたいと思っています」     BankART1929 オルタナティブスペースからアトピックサイトへ 2004年から20年間、横浜市の文化芸術創造都市施策のもと、さまざまな場所でオルタナティブスペースを運営してきたBankART1929(以下、BankART)。現在は横浜の街中でのプロジェクトや、他地域でのプログラムを進行中。拠点をもたない活動に注目が集まっています。代表の細淵さんは、20年間の歴史を振り返り、今後について話しました。 BankARTの歴史は、今年秋にBankParkが開く旧第一銀行横浜支店と、旧富士銀行を活用するところから始まりました。横浜市における創造都市施策の最終的なミッションとして、都市の活性化が掲げられていました。細淵さんは「文化のための文化事業ではなく、都市政策の事業だったからこそ、やってみようと思いました」と振り返ります。 歴史的な建造物を、現代の生きた文化芸術にふれる場として活用しながら、「公設民営」の新しい可能性を提示したBankART。長い年月のなかで、管理委託や指定管理者制度というかたちではない新しい公と民の関係性をつくりあげてきました。古い建物を活用した主催事業やコーディネート事業を柱に、スクール、カフェ 、パブ、ショップ、コンテンツ出版、スタジオ事業といった日常を支える活動を並行して展開してきました。 横浜市との関係、場所や経済構造などが変わった現在、これまでと同じ構造で活動することはできませんが、基本的な活動理念の部分は変わらないといいます。そして、これからの展開について、「アトピックサイト」という新たなテーマを打ち出しました。 「アトピックは、トピック(固有の場所)の否定型。一つの建物を起点として活動するのではなく、場所を限定しない活動や従来の展覧会・アートプログラムの枠に囚われないようなことにチャレンジしていきたい。すでに複数の場所で始動しつつありますが、それぞれの場所には固有の問題や条件があり、それぞれの場所で活動する人がいます。そういったものとこれまで以上に向き合いながら、複数のプロジェクトを展開していきます」   最後に細淵さんから、現在取り組んでいるプロジェクトの紹介がありました。横浜では、みなとみらいエリアやヨコハマポートサイド地区などで、シェアスタジオや街なかでのプロジェクトや展示などに引き続き取り組んでいます。 また全国的には、瀬戸内(香川県)、越後妻有(新潟県)、美郷町(秋田県)などの地域で、さまざまなプロジェクトが進行中です。   ディスカッション 街にひらくを共通項に、協働の可能性を探る ACYフォーラムは、登壇者と来場者の交流をとおして、新しいアイディアや協働の可能性を生み出すきっかけとなることを目指しています。その一つの工夫として、登壇者への質問や提案、感想などを記入できるコメントカードが事前に来場者へ配られていました。   後半のディスカッションでは、集まったコメントカードの内容を盛り込みながら、企画・編集者の橋本誠さんをモデレーターに各活動の広がりや協働の可能性について深めていきました。その一部を紹介します。 まず、橋本さんから小川さんにNEWの企画づくりについて聞くと、「吉祥寺のOngoingはほとんど一人でディレクションしていますが、NEWではあえて裏方に徹している」と小川さん。「次の世代の人たちがやりたいことに挑戦できる場所というコンセプト」で、ZINEやグッズの企画も、新しいスタッフが考えているといいます。 そして、ZINE企画についてはこう話しました。 「コピー機から生まれた文化ということで、コピー機メーカーとの協働なども探っているところです。現代アートの場所でもあり、『ZINEの聖地』でもあるというふうになってきたら、また違う発展の仕方をするのではないかと」 来場者から届いたBankParkの運営体制への質問には、「代表企業が竹中公務店で、工藝の部分は『株式会社CRAFTINGJAPAN』、シェアオフィスや企業等の協働のほうは、『グッドルーム株式会社』と連携していく」と倉田さんが答えます。 また、橋本さんからこんな問いかけがありました。 「NEWのグッズコーナーで取り扱う商品のなかにアーティストが既製品に絵付けしたお皿  見方によっては工藝的だなと思いました。小川さんたちの活動は、倉田さんからはどう見えていますか?」 倉田さんは「我々は『伝統工藝』に限定せずに、『日常のちょっといい暮らし』をつくっていくために、さまざまなクリエイティブなものづくりやコンテンツを広く集めて展示や販売ができればと思っています。なので、アート的な要素をどう取り入れていけるかという部分、ぜひご相談したいです。 資源循環のほうも、水平リサイクルだけでなく、別のものに生まれ変わらせる『アップサイクル』の考え方もありますよね。そこにもアートの力が必要になってくるんじゃないかなと思っています」と話します。 BankARTへのコメントカードには、「アトピックサイト」というキーワードへの反応が多くありました。 「場所から解放されてフリーになり、実はいろいろな方から『お話ししたい』とお声かけいただいています。一緒にできることを探ろうとしてくださるのはすごくありがたいですね。いろんな分野・方向性で、20年間やってきた知見を生かせればと思っています」と細淵さん。 そして、「BankARTが出版した本も含む横浜で集積した153箱分の書籍を秋田県美郷町に運び込んだというお話がありましたが、今、秋田町でその本が読めるのでしょうか?」という橋本さんからの質問に対しては、こう話しました。 「書籍については、テーマごとにセレクションした本棚をつくり、移動図書館のような形で展開していく予定です。横浜で集積した書籍が巣立ち、いろいろな場所に波及していくようなことができたらと思っています」 この春オープンしたNEW、秋の開業を目指して準備中のBankPark、新しい展開に向かっていくBankART。「スペースや活動が始まってからがまた佳境で、どんどん変わっていく面白さを見られるチャンスでもありますね。参加や協働のタイミングもそれぞれだと思います。今日のこの場も、横のつながりが増える機会になれば」という橋本さんの言葉で締めくくられました。   【登壇者プロフィール】 BankPark YOKOHAMA/(株)竹中工務店 倉田 駿 1991年生まれ。2018年名古屋工業大学大学院修了後、㈱竹中工務店に入社。JR大阪駅前の大型開発「グラングリーン大阪」等、都心部での街づくり業務に従事。同社が手掛ける横浜市認定歴史的建造物「旧第一銀行横浜支店」の運営事業(2025年秋開業予定)において、サーキュラーエコノミーをテーマに市民・企業・クリエイターが共創・発信を行う場の企画・運営を担当。 https://bankparkyokohama.jp/ Art Center NEW ディレクター 小川希 2001年武蔵野美術大学映像学科卒業、2003年東京大学大学院学際情報学府入学大学院修士課程修了。武蔵野美術大学非常勤講師(2011~)、成蹊大学非常勤講師(2022~)。2008年1月に東京吉祥寺に芸術複合施設 Art Center Ongoingを設立。文化庁新進芸術家海外研修制度にてウィーンに滞在(2021年-2022年)。中央線沿線周辺を舞台に展開する地域密着型アートプロジェクトTERATOTERAディレクター(2009年-2020年)、レター/アート/プロジェクト「とどく」ディレクター(2020年-2022年)など多くのプロジェクトを手掛ける。令和6年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。 https://artcenter-new.jp/ BankART1929代表 細淵太麻紀 BankART1929代表/アーティスト。埼玉県川越市生まれ、横浜在住。多摩美術大学にてグラフィックデザインと写真を学んだ後、1996年より美術・建築ユニット「PHスタジオ」に参加し、国内外のギャラリーや美術館での展示、野外プロジェクト、コミッションワーク、建築設計など多数手がける。2004年、横浜市の歴史的建造物等を文化活動に活用するBankART1929の立ち上げに参画し、以降企画運営全般に携わる。2022年4月より現職。 https://bankart1929.com/ 橋本誠(企画・編集者/ノマドプロダクション 代表理事) 1981年東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、東京文化発信プロジェクト室を経て2014年にノマドプロダクション、2023年に合同会社生活と表現を設立。多様化する芸術文化活動と現代社会をつなぐ企画・編集等に携わる。主な企画に都市との対話(BankART StudioNYK/2007)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町/2008~)など。秋田市文化創造館 プログラム・ディレクター(2020〜2021)。編著に『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』(千十一編集室/2021)。 【イベント概要】 日程:2025年7月11日(金) フォーラム15:30-17:00/情報交換会17:00-17:45 会場:BUKATSUDO(横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号ランドマークプラザ地下1階) 参加者数:49人 主催:アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団) 令和6年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
#都心
#まちづくり
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イベント
2025/08/25
2023年度 アーティスト・フェローの加藤 立さんが、TODA BUILDING 3F APK ROOMでのグループ展「KYOBASHI ART WALL Group Exhibition Vol.2」にて新作を展示します。   「KYOBASHI ART WALL Group Exhibition Vol.2」 会期:8月26日(火)〜 9月6日(土)※日・月は休場 時間: 11:00~19:00(最終日は17:00まで) https://www.apk.todabuilding.com/event/kaw_exhibition_vol2/ 会場: TODA BUILDING 3F APK ROOM
#美術
コラム
2025/08/05
  「令和の横浜使節団」は、まちづくり・デザイン・ものづくり・文化などをテーマに横浜の人々が他都市を訪れ、その地の人々や文化と交流し、学び得た知見を横浜にフィードバックする視察交流体験プログラムです。 横浜・みなとみらいの造船ドック跡地に位置する大人のためのシェアスペースBUKATSUDOと、アーツコミッション・ヨコハマの共同企画として2023年度より始まりました。 名前の由来は、1871年に横浜港から出航した岩倉具視を全権大使とする「岩倉使節団」。諸外国の優れた文化や技術を学び持ち帰った志や、旅立ちを支えた横浜の文化・背景を継承する、学びの旅です。2023年夏に新潟、2024年3月に信州(長野市、上田市)、2024年9月に富山を訪問しました。 そして2025年5月30日、4回目となる今回は、茨城県結城市で活動するまちづくり団体「結いプロジェクト」の取り組みを視察しました。「結いプロジェクト」の代表で建築家の飯野勝智さんと「結いプロジェクト」で様々なイベントをオーガナイズしてきた結城商工会議所の野口純一さんのご案内のもと、結城の歴史ある建物を見学し、そこで活動する人々と交流するプログラムです。その模様をレポートします。(結城視察参加者:18名)   結城市について 結城市は、茨城県の西部に位置し、栃木県小山市と県境を接する、人口約5万人の市です。古くから結城紬の産地として栄え、かつては一大産業を築きました。近年の「着物離れ」に伴い、現在では観光資源として新たな形で受け継がれています。2010年には、ユネスコの無形文化遺産にも登録されました。 そのほかに、日本酒や味噌、ゆでまんじゅうなど、昔ながらの特産品が多く残っているのも結城の特徴です。関東平野の肥沃な土壌と豊かな日照時間を活かし、農業も盛んで、特に露地野菜の生産が中心となっています。 また、結城駅の北側には、城下町としての歴史を感じさせる街並みが今も広がっています。一方で、駅の南側では、国道50号結城バイパスの開通によりロードサイド型の店舗が増え、生活圏が大きく変化しています。   結城に到着   小雨のちらつく結城駅に、「令和の横浜使節団」が降り立ちました。「結いプロジェクト」の拠点であり、今回の旅の拠点でもある「yuinowa」は、駅北口から徒歩8分のところにあります。横浜からの参加者はわずかな移動の間も、歴史を感じる町並みに興味津々です。   ランチ:結城縁旅弁当   「yuinowa」に着くと、「結いプロジェクト」の飯野さんと野口さんが出迎えてくれました。長い移動を終えた参加者、まずは腹ごしらえです。用意していただいたのは、「結城縁旅弁当」。結城産の野菜や茨城県のブランド豚ローズポークなど、地元の食材をふんだんに使用したお弁当です。 味覚で結城を味わったところで、いよいよ「結いプロジェクト」の取り組みを学んでいきます。 参考:結城縁旅弁当   レクチャー(講師:飯野勝智、野口純一)   「結いプロジェクト」の代表で建築家の飯野勝智さんと「結いプロジェクト」で様々なイベントをオーガナイズしてきた結城商工会議所の野口純一さんに、「結いプロジェクト」のまちづくりについてレクチャーしていただきました。 「結いプロジェクト」の活動の背景には、多くの地方都市が抱える問題がありました。国道50号沿いの郊外型店舗の増加に伴い、駅の北側に位置する商店街は衰退し、空き店舗が増えていきました。 そうした中、主体的にチャレンジできる街の土壌を作ろうと立ち上がったのが「結いプロジェクト」です。「結いプロジェクト」のまちづくりは、マルシェ「結い市」と音楽フェス「結いのおと」というソフト事業からスタートしました。両イベントに共通するのは、結城の魅力を市外に発信すること、そして、地域の文化資源をフル活用するということです。たとえば、「結いのおと」では、街の古民家や寺院などが会場になります。 そうした取り組みが市外にも認知されるようになったところで、「結いプロジェクト」はハード事業にも積極的に取り組むようになります。現在では空き店舗活用の支援、コミュニティスペースやホテルの運営なども手掛けています。 単に地域の資源を利用するというだけでなく、地域の人々を仲間につけて共に活動していることも「結いプロジェクト」の特徴です。農村集落では古くから互助的に共同作業を行う「結い」という慣行が存在しました。「結いプロジェクト」はそのような精神を反映しているのです。今回の旅でも、飯野さんや野口さんと、各施設の方々との間の深い信頼関係が伝わってきました。 参加者は、横浜で自ら手掛ける事業と重ね合わせながら、レクチャーに聞き入りました。結城市と横浜市は、人口規模や文化など様々な点で異なりますが、地域の文化資源や人々とともにプロジェクトを作り上げていくことや、ソフト事業により地域の魅力を外部に発信した後にハード事業に参画していくというプロセスなど、多くの学びがありました。 参考:結いプロジェクト   HOTEL(TEN)   「HOTEL(TEN)」は、築90年以上の町屋をリノベーションした一棟貸しの宿。「結いプロジェクト」が多くの人々を惹きつけるイベントを展開するなか、泊まる場所が少ないという問題がありました。そこで誕生したのがこの「HOTEL(TEN)」です。家電や調理器具も充実しており、古民家を存分に楽しむことができます。 ちなみに、結城に生まれ育った女将の松田美幸さんは、小学生の頃に偶然自転車で「結いプロジェクト」のイベントに通りかかったことが、「結いプロジェクト」との出会いだったそうです。 参考:HOTEL(TEN)   称名寺   鎌倉時代以来、結城の地を治めた結城氏の始祖・結城朝光の菩提寺。由緒ある寺院ですが、音楽フェス「結いのおと」の会場の一つにもなっています。   孝顕寺   坐禅、写経、ヨガなど様々な取り組みをする孝顕寺も、「結いのおと」の会場の一つです。2025年の「鎮座dopeness」のライブでは、観客が堂内に入りきらないほどの盛り上がりで、床が抜けるかと思った、と松浦恵真住職はこぼします。その松浦住職、横浜の總持寺で約20年過ごしたということで、私たちを温かく歓迎してくれました。 参考:孝顕寺   武勇   「武勇」は1867年創業の酒蔵。蔵特有の環境を整えることによって「蔵ぐせ」と呼ばれる個性が生まれますが、管理が難しく大量生産はできません。それでも武勇はこの個性にこだわり、大手メーカーとの差別化を図っています。 参考:武勇   秋葉糀味噌醸造   「秋葉糀味噌醸造」は、1832(天保3)年創業。明治時代以来の建物と、200年近い年月が経っていると考えられる大きな樽に圧倒されます。味噌造り教室も開催されています。 参考:秋葉麹味噌醸造   奥順   結城を代表する伝統産業「結城紬」。その歴史を今に伝えるのが、明治40年創業の「奥順」です。結城紬を一般の方に紹介するミュージアム「つむぎの館」を併設しています。本場結城紬は、糸づくりから織り上げまでに2~3年かかり、絣模様が入る場合はさらに時間を要し、4~5年かかることもあるという手間暇のかかる高級品です。その作業の一端を実際に見せていただきました。 参考:奥順   ぱんや ムムス   「ぱんや ムムス」は、おしゃれな街のパン屋さん。明治45年に建造された国登録有形文化財「旧黒川米穀店」をリノベーションした建物で営業しています。 参考:ぱんや ムムス   懇親会:NORA NERO COTTO   街歩きのあとは、結城と横浜の人々がより深い交流をすべく懇親会が開催されました。会場は「NORA NERO COTTO」。駅北口商店街から少し住宅街に入った閑静な場所に佇むイタリアンレストランです。バリエーションの富んだ美味しい食事をいただきながら、会話が弾みます。使節団メンバーはもちろん、結城からは孝顕寺の松浦住職やHOTEL(TEN)の松田さんなど街歩きで出会った方々も参加していただきました。一日を通して感じたことや浮かんだ疑問を結城の方々にぶつけたり、また逆に横浜での活動を結城の方々に紹介したりする姿が見られました。 参考:NORA NERO COTTO   振り返り: 参加者アンケートから 参加者からは、「本人のご案内により、実にリアルな視察と交流になった」「とても親切丁寧で、内容が充実していた」など「結いプロジェクト」のコーディネートの充実ぶりに満足する声が聞かれました。また、「直接各々の施設の方に話を聞けた」といった意見も多く、単なる「街歩き」ではなく、実際にそこに暮らし、そこで活動する方々と交流を持つことができる貴重な機会となりました。 とくに参加者にとって刺激的だったのは、次の二点でした。一つは、地域に根差したまちづくりに取り組んでいるということで、「徒歩圏内にすでにいる魅力的な人々を、プレイヤーとして巻き込んでいくことが素晴らしいと思った」といった感想がみられました。二つ目は、マルシェや音楽フェスといったプロジェクトを始め、そのあとで拠点を作っていくという、「ソフト→ハード」という「結いプロジェクト」のプロセスについて驚きの声が上がりました。 「自身が取り組む地方都市の商店街での事業や活動の参考、および励みになった」という意見もあり、学びから横浜での活動への展開も期待されます。   おわりに:結城と横浜の新たなつながり 今回で4回目となった「令和の横浜使節団」。新潟、信州、富山、過去3回の使節団のなかで生まれた交流から、すでに各地域と横浜の人々との間での協働プロジェクトが進みつつあるようです。文化人類学者のジェームズ・クリフォードは、根源(roots)と経路(routes)という発音の同じ二つの言葉を挙げながら、人間の文化は「根源」から生まれると思われてきたが、実は旅や移動といった「経路」からこそ生まれるものだ、と主張しました(『ルーツ:20世紀後期の旅と翻訳』)。それは、「結いプロジェクト」が「結い」という言葉に込めた「繋がり」というニュアンスに通じているように思えます。今回の「使節団」では結城と横浜の人々の間で新たなコミュニティを築くことができました。結城と横浜、少し離れた二つの地域の「経路」の間で、どのような新しい文化が生まれるのでしょうか。注目していただきたいと思います。 文・写真:アーツコミッション・ヨコハマ  
#郊外
#生活・地域
#音楽
#まちづくり
#デザイン
#建築
事業報告書
2025/02/17
ACYでは、2024年度に九州大学の中村美亜研究室と共同研究を行いました。 その報告書を公開します。 「ACYアーティスト・フェローシップ助成」の評価に関する共同研究 研究担当:国立大学法人九州大学大学院芸術工学研究院 中村美亜研究室 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 経営企画・ACYグループ 実施記録:オンライン会議(編集を含む)9回[計約15時間]、対面ワークショップ2回[計約7時間]、現地調査1回(2拠点を訪問)[計約7時間]、オンラインインタビュー5組6名[計約5時間] 「ACYアーティスト・フェローシップ助成」の評価に関する研究報告書  ―アーティストの創作活動支援の価値を可視化する試み 監修:九州大学大学院芸術工学研究院 中村美亜 編集:株式会社ボイズ 安部見空、及位友美 九州大学大学院芸術工学研究院 中村美亜 アーツコミッション・ヨコハマ 小原光洋、森絵里花 協力:岡田容子、黒田杏菜、坂本夏海、齋藤好貴、齋藤梨津子、関口春江、David Kirkpatrick、長岡親一郎、森祐美子、八島道夫(敬称略) デザイン:デザイン事務所Folk 印刷・製本:株式会社ココラボ 発行:公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 経営企画・ACYグループ 〒231-0023 横浜市中区山下町2 産業貿易センタービル1階 2025年2月14日発行

SERVICE

SERVICE

アーティスト・
クリエイターの方

  • 創作の場、発表の場を探している
  • 活動するための情報が知りたい
  • 広報について知りたい

企業・行政・
教育機関の方

  • 保有物件、スペースを活用したい
  • イベントや企画の相談がしたい
  • これまでのACYの活動を知りたい
事業報告書
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アーツコミッション・
ヨコハマ
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アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)は、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団が運営する「芸術文化と社会を横断的に繋いでいくための中間支援」のプログラムです。

横浜市の掲げる文化芸術創造都市施策の実現に向け、都心臨海部におけるアーティスト、クリエイター、企業、行政、大学、NPO、非営利団体等の創造の担い手が活動しやすい環境づくりを推進します。