助成金2017年度実績

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創造都市横浜における若手芸術家育成助成 
クリエイティブ・チルドレン・フェローシップ

【講評】 
 昨年のプログラム新設から2年目となる今回の募集には、応募数は減少したものの今後の活動が期待されるアーティストからの応募が集まった。また、選考のポイントも「ステップアップの思想が明確である」「横浜から発信していく意識」など、明瞭な形に更新され客観的評価に重点を置いた選考を行った。
 青木氏は、ダンスを通じて公演という形態にとどまらず、領域横断的な実績をもとにした作家活動の展開を期待したい。小田桐氏は、民藝や生活工芸の観点を有し、郊外に着目した横浜での場作りとその展開に期待したい。武田氏は、昨年度から継続するフィリピンでの滞在制作と成果をもとに、継続年となる今年度にかけて横浜をはじめ他地域での展開を期待したい。田村氏は、昨年度から継続して取り組むアーティスティックな記述/アーカイブの構想の実践に期待したい。山縣氏は、横浜の創造拠点で継続して取り組む制作を通じて、さらなる演技メソッドの深化をはじめとした作家活動の展開を期待したい。山本氏は、国外アーティストとの継続的な共同製作をはじめ、国内外での協働がさらなる活動の広がりにつながることを期待したい。渡辺氏は、昨年度着手した制作環境の拡充のもと、継続年となる今年度は作品制作の深化に期待したい。

審査員:
窪田研二・曽谷朝絵・中野仁詞・木村絵理子・多田淳之介・中村恩恵・山口真樹子・中冨勝裕

【採択者】 (氏名:50音順)

アーティスト 青木 直介(アオキ ナオスケ)
交付金額 500,000円
プロフィール 振付家、ダンサー。
1988年、東京生まれ。14歳よりブレイクダンスを始める。2010年、東京造形大学映画専攻卒業。在学中より美術作品、舞台作品、パフォーマンスなどの制作、発表を始める。卒業後、いくつかのダンスカンパニーに参加した後、aokid cityを主宰。2015年、第12回グラフィック「1_WALL」グランプリ。2016年、横浜ダンスコレクション2016審査員賞受賞。野外を舞台にした”どうぶつえん”というキュレーション企画を始動する。
アーティスト 小田桐 奨(オダギリ ススム)
交付金額 1,000,000円
プロフィール アーティストユニット・LPACK.所属。
最小限の道具と現地の素材を組み合わせ、国内の様々なスペースを「コーヒーのある風景」に変えるカフェ・プロジェクトや、各地の国際芸術祭におけるビジターのためのスペースづくり、美術館の教育普及プログラムと連動したワークショップスペースの設計など、アート、デザイン、建築、民藝などさまざまな領域を横断しながら、アーティストと鑑賞者、地域の人々とのコミュニケーションの場を創造している。
アーティスト 武田 力(タケダ リキ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール アーティスト、俳優。
とある幼稚園での勤務ののち、演劇カンパニー・チェルフィッチュに俳優として関わる。2012年より自身での作品制作を開始。素材は「たこ焼き」や「糸電話」や「街」など。それらはアジア各地の民俗芸能をもとに創作される。民俗芸能に社会の端緒を見、そこに現代を反映して観客一人ひとりと思考する作品を制作している。 近年はフィリピン・Karnabal、中国・明当代美術館に招聘されるなど、アジアにその活動を広げており、また2015年からは滋賀県朽木古屋集落に伝わる六斎念仏踊りの継承事業にも関わっている。
アーティスト 田村 友一郎(タムラ ユウイチロウ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 1977年富山県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程修了。既にあるイメージや自らが撮影した素材をサンプリングの手法を用いて使用し、独自の関係性を導き出しながら再構築することで、時空を超えた新たな風景や物語を立ち上げる。2010年に『NIGHTLESS』で第14回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞、同作が世界各国で上映。近年の主な展覧会に「2 or 3 Tigers」(Haus der Kulturen der Welt、ベルリン、2017年)、「BODY/PLAY/POLYTICS」(横浜美術館、2016年)など。
アーティスト 山縣 太一(ヤマガタ タイチ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 演劇ユニット・オフィスマウンテン主宰、俳優、演出家、劇作家、振付家、ダンサー。
1979年、横浜生まれ。2001年より演劇カンパニー・チェルフィッチュに俳優として参加。 各作品において自身の振り付けを行い、中心メンバーとしてチェルフィッチュを牽引。日常の無自覚な身体を自覚的に舞台上にのせるための独自のメソッドを考案し、ワークショップを横浜を中心に行う。2015年より自身の作・演出する演劇ユニット・オフィスマウンテンを始動。『ドッグマンノーライフ』(2016)が第61回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。
アーティスト 山本 卓卓(ヤマモト スグル)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 範宙遊泳/ドキュントメント代表、劇作家、演出家、俳優。
舞台上に投写した文字・写真・色・光・影などの要素と俳優を組み合わせた独自の演出と、観客の倫理観を揺さぶる強度ある脚本が海外からも注目を集め、マレーシア、タイ、インド、中国、シンガポール、ニューヨークで公演や共同制作も行う。『幼女X』でバンコクシアターフェスティバル2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。『うまれてないからまだしねない』で第59回岸田國士戯曲賞最終候補ノミネート。公益財団法人セゾン文化財団ジュニアフェロー。急な坂スタジオサポートアーティスト。
アーティスト 渡辺 篤(ワタナベ アツシ)
交付金額 500,000円
プロフィール 現代美術家。
東京藝術大学在学中から自身の体験に基づく、傷や囚われとの向き合いを根幹とし、かつ、社会批評性強き作品を発表してきた。表現媒体は絵画を中心に、インスタレーション・写真・パフォーマンスなど。 テーマは、新興宗教/経済格差/ホームレス/アニマルライツ/ジェンダー/ひきこもり/精神疾患 など多岐にわたる。卒業後、路上生活やひきこもり経験を経て2013年、活動再開。以後精力的に発表を続けている。

クリエイティブ・インクルージョン活動助成

【講評】
 本助成制度は、昨年度からはじまり2回目の募集である。今年度の申請数は昨年度とほぼ同数の22件(昨年度23件)だったが、前回より助成趣旨に合致する多種多様な提案がなされた。

今年の「テーマ申請」は、「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」の開催年であることから、「障害ある方と多様な分野のプロフェッショナルの協働から生まれ、社会に新たな気づきをもたらす表現活動、新たな価値を創造するインクルーシヴデザインの取り組み」とした。これ以外の「自由申請」も募集し、テーマと自由で半々という応募結果であった。うち採択されたものは7件で、テーマ申請が5件、自由申請が2件である。

本助成制度の審査項目は、要項で以下をあげている。
①親和性:共感を高める仕組みを有し、社会へのひろがりが見込めるもの
②先駆性:社会に先駆けた活動であるもの
③実現性:企画、体制、場所の確保、予算、スケジュールの妥当性と進行管理能力があるもの
④継続性:将来への発展が期待できるもの
⑤影響力:将来的に社会へのインパクトを与える期待がもてるもの

今回、社会へ開かれた発信力の高いプログラムを実施することで、市民が「クリエイティブ・インクルージョン」を具体的な体験として享受できるものが、多く採択されている。 「クリエイティブ・インクルージョン」と本助成制度は初期段階にあり、趣旨が“社会包摂”“共生社会の実現”という社会全般に関わる領域のため、まずは様々な申請者からの提案を受けながら、どのような取組みが創造都市政策に有効であるか、視野をひろげている段階にある。今回の採択はそれが反映された形となった。

新規採択された5件について

①「あしおとで遊ぼう!ワークショップ&パフォーマンス」
主催:あしおとでつながろう!プロジェクト
障がいの有無に関わらず子どもから大人まで参加できるダンスのプログラムである。この取組みは、包摂的な環境に実際に身を置き文化体験する人を増やしていくのに有効であると判断し採択した。より多くの市民が本プログラムに参加し、実体験として社会包摂を感じる機会になることを期待する。

②「ドキュメンタリー映画・大人の発達障がい」
主催:坪田義史
市内在住の映画監督・坪田義史氏によるドキュメンタリー映画の制作と上映の企画である。質の高い作品づくりを目指しつつ、医療の専門家を入れて取材を補強していく姿勢などのプロセスを評価した。優れた作品が横浜から世界へ発信され、その効果として障がいへの理解が広がることを期待し採択した。

③「視覚障害者とつくる音声メディアプロジェクト」
主催:視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
各地の美術館で視覚障害者と晴眼者が共に鑑賞するワークショップを行っている団体。今回は美術館のコレクション作品を題材とし、従来の単なる情報補償のツールとしての音声ガイドではなく、よりクリエイティブな鑑賞のあり方を提示する新しい音声メディアを演劇という手法を用いて作成する。 テーマにある「障害ある方と多様な分野のプロフェッショナルの協働から生まれ、社会に新たな気づきをもたらす表現活動」として評価した。横浜市が力を入れる観光政策などへの波及も期待したい。

④「視覚障がい者のパーソナルな作品鑑賞を支援するOTON GLASSの開発と運用」
主催:株式会社OTON GLASS
眼鏡型ウェアラブル装置の社会実験の提案である。眼鏡フレームに埋め込まれたカメラで認識した文字やパターンを音声として使用者に伝える。視覚障害者、難読症、日本語未習熟者などをサポートする装置で、新たな価値を創造するインクルーシヴデザインの取り組みとして評価した。パラトリエンナーレの来場者に体験してもらうことを想定する。

⑤「災害の備えを学ぶ気持ちにハードルをつくらない減災教育プロジェクト
  ~災害を自分ごととするためのmy減災マップ×インクルーシヴデザインの視点~」
主催:減災アトリエ
同団体が開発する災害時の避難マップづくりキットを障がい者等に展開していく提案である。現在、地域防災の一助として機能しはじめている同活動が、より多くの方へ浸透し使えるようになることを期待。先の東日本大震災時においても、障がい者の死亡率が住民の中でも高かったことが報告されており、その課題に関する気づきを社会に与えて、地域の防災力がより包摂的意識を持ちながら高まることを期待したい。

継続採択された2件について

①YOKOHAMA KOTOBUKI INSIDE 2017
主催:有限会社スタジオニブロール
寿町に暮らす、働く、出入りする人達と対話し、その人にあう服を用意して、写真家に撮影してもらうプロジェクト。全てを等しく内包していく創造性を“ファッション”で形にすることで、人と街の今の姿を切り取る。申請者は目標をもって少なくとも5年間は継続していくと述べていることから、もう一年過程を見る意味で採択した。普段交流することのないアーティストやクリエイターらが街にアウトリーチし、彼らと街の人の視点が交差することで生まれる新たな表現に期待する。

②黄金町BASE
主催:黄金町BASE
申請者の活動する場所は、生活環境等の影響で地域の中で孤立しがちな子どもたちが多く住んでいる。これらに福祉の視点ではなく、コミュニティ力を高めるアート拠点の形成でその緩和を狙うものである。昨年度の助成で立ち上げたばかりの拠点が、子どもたちをはじめ地域の住民に好評を得て不可欠なものとなった。しかし、運営体制や継続性が課題であるため、今年度は外部有識者などを交えてその改善を行い持続可能な運営基盤づくりを目指す提案となっている。そこを評価して採択した。

なお、不採択となった提案も可能性を感じるものがあり、次年度さらに企画を練り込み、再提案されることを期待する。

審査員:石川絵理、栗栖良依、曽我部昌史、治田友香、岡崎智美

【採択事業】 (団体名:50音順)

申請団体名(代表) あしおとでつながろう!プロジェクト(申請代表:おどるなつこ)
事業名 あしおとで遊ぼう!ワークショップ&パフォーマンス
交付金額 600,000円
内容  障がいの有無に関わらず子どもから大人まで参加できるダンスのプログラム。タップダンサーや音楽家が、福祉施設等と協力し、市内地域の文化施設等を会場にダンスと音楽が融合するワークショップを開催、作品を創作し発表する。
申請団体名(代表) 株式会社OTON GLASS(申請代表:島影 圭佑)
事業名 視覚障がい者のパーソナルな作品鑑賞を支援するOTON GLASSの開発と運用
交付金額 500,000円
内容  難読症、弱視者、外国人等文字を読むことが困難な人にむけて、文字を音声に変換して読む「眼鏡」OTON GLASSの開発。パラトリエンナーレにて社会実験を行い、今まで開発してきた文字を読むためのOTONGLASSと並行して、「作品を鑑賞する」ためのOTON GLASSの応用にも取り組む。
申請団体名(代表) 減災アトリエ(申請代表:鈴木 光)
事業名 災害の備えを学ぶ気持ちにハードルをつくらない減災教育プロジェクト ~災害を自分ごととするためのmy減災マップ×インクルーシヴデザインの視点~
交付金額 300,000円
内容  地域の防災意識を高めるとともに、個人の避難行動を自らの手でデザインしていく防災教育プログラム「my減災マップ」の取組み。これをさらに多くの人が体験できるよう社会包摂の視点を交えて、当事者、専門家、デザイナーが一丸となって、災害への備えを学ぶ気持ちにハードルを作らない環境づくりをしていく提案。
申請団体名(代表) 黄金町BASE(申請代表:山田 裕介)
事業名 黄金町BASE
交付金額 300,000円
内容  生活環境等の影響で地域の中で孤立しがちな子どもたちを対象に福祉の視点ではなく、アートの視点で居場所づくりを行い、コミュニティ力を高める。昨年度は、京急黄金町駅付近の高架下に放課後子どもたちが集まり、自由に工作や絵を描くなどができる場づくりを行った。今年は運営、資金を持続可能にしていく取組みを行う。
申請団体名(代表) 視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ(申請代表:林 建太)
事業名 視覚障害者とつくる音声メディアプロジェクト
交付金額 1,000,000円
内容  美術館のコレクション作品を題材とし、視覚障がい者と晴眼者が共同して鑑賞のためのワークショップを行い、それを伝えやすいという視点から演劇化して音声メディアとして提供する。美術館の既存音声ガイドや視覚障がい者向けガイドとは異なる新たな道として障がいの有無に関わらず一緒に美術鑑賞を深めるツールの開発を行う。
申請団体名(代表) 有限会社スタジオニブロール(申請代表:矢内原 充志)
事業名 YOKOHAMA KOTOBUKI INSIDE 2017
交付金額 600,000円
内容  寿町に暮らす、働く、出入りする人達と対話し、その人にあう服を用意して、写真家に撮影してもらうプロジェクト。全てを等しく内包していく創造性を“ファッション”で形にすることで人と街の今の姿を切り取り、それを発表していくことで、社会包摂の本質を問うていく。
申請団体名(代表) 坪田 義史
事業名 ドキュメンタリー映画・大人の発達障がい
交付金額 1,200,000円
内容  市内在住の映画監督・坪田義史氏によるドキュメンタリー映画の製作と上映。質の高い作品づくりを目指しと同時に医療の専門家を入れて取材を補強していくなど、検証も同時に行っていく。完成した作品を横浜から世界に発信していく。外観からは見えにくい障がいの姿を明らかにし、社会の理解を深めていく。

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