助成金2018年度実績

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創造都市横浜における若手芸術家育成助成 
クリエイティブ・チルドレン・フェローシップ

 平成28年度より開始し今回で3回目となる今年度応募件数は51件と、前年度30件を上回る応募件数となった。

 応募51件中、所在地別分布をみると最も多かったのは横浜市の21件(41%)で、東京都18件、その他12件。年齢分布は30代が32件(63%)、20代が19件(37%)と30代の応募が多くを占めるものの平成29年度応募30代83%、20代17%と比べると20代の応募も増大した傾向があった。

 選考委員会は、フェローシップでは美術分野3名、舞台芸術分野3名の有識者による審査員で構成される。選考にあたっては、それぞれ助成趣旨のほかに選考のポイントを掲げ、各項目について選考時の基準とした。

選考のポイント
①同時代の視点を有していること
②ステップアップの思想が明確であること
③自身のアートを伝える・広げていく志が高く、実行力のあるアーティスト
④横浜から発信していく意識が強いアーティスト

審査員
[美術分野]窪田研二・中野仁詞・木村絵理子
[舞台芸術分野]多田淳之介・山口真樹子・中冨勝裕

 以上の方針の上で、各分野審査員による企画書査読と面談を経た後に選考委員会を開催した。結果採択されたのはフェローシップで9件(うち前年度継続4件、採択率17%)となった。

審査員総評(PDF)

【新規採択】(氏名:50音順)

アーティスト 太田 信吾 (オオタ シンゴ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 映画監督・演出家・俳優。1985年生まれ。長野県出身。早稲田大学文学部にて哲学・物語論を専攻。大きな歴史の物語から零れ落ちるオルタナティブな物語を記憶・記録する装置として映像制作に興味を持つ。初の長編ドキュメンタリー映画となる『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013で公開後、世界12カ国で配給。俳優として演劇作品のほか、TVドラマに出演。2017年には初の映像インスタレーション・パフォーマンス作品を韓国のソウル市立美術館で発表した。
アーティスト 神里 雄大 (カミサト ユウダイ)
交付金額 1,000,000円
プロフィール 作家、舞台演出家。1982年ペルー生まれ。近年は、世界各地を訪ね歩き、出会った人々から聞いた話を元に作品を構成するという執筆スタイルを採用している。2006年「しっぽをつかまれた欲望」(作:パブロ=ピカソ)で利賀演出家コンクール最優秀演出家賞受賞。2018年「バルパライソの長い坂をくだる話」で第62回岸田國士戯曲賞受賞。2016年10月より文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてアルゼンチン・ブエノスアイレスに1年間滞在。2011年度〜2016年度公益財団法人セゾン文化財団ジュニア・フェロー。
アーティスト 川口 智子(カワグチ トモコ)
交付金額 500,000円
プロフィール 演出家。1983年生まれ。東京学芸大学大学院修了。劇作家・演出家の佐藤信に師事。2008年より演出活動を開始。2018年より取り組む『4.48 PSYCHOSIS』上演企画では、イギリスよりサラ・ケイン研究者のニーナ・ケイン氏をドラマターグに迎え、サラ・ケイン没後20年にあたる2019年に国内外ツアーを予定。香港をはじめ、アジアのアーティストとの共同制作も継続的に行っている。東京学芸大学非常勤講師。横浜の小さなアートセンター若葉町ウォーフ アーティスティック・アソシエイト。
アーティスト 玄 宇民(ゲン ウミン)
交付金額 1,000,000円
プロフィール アーティスト。東京生まれ。生まれた地を離れた人々のありようと移動の記憶、マイグレーションをテーマに韓国と日本で映像作品を制作。最近作は戦前の日本に暮らした韓国人女性飛行士の足取りを俳優と共にたどる『未完の旅路への旅』(2017)。2016 年以降ソウル独立映画祭(韓国)、Taiwan International Video Art Exhibition(台湾)、ディアスポラ映画祭(韓国)で作品上映。東京大学文学部美学芸術学専修卒業。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻博士後期課程修了。
アーティスト 布施 琳太郎 (フセ リンタロウ)
交付金額 500,000円
プロフィール 美術家。1994年東京生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻在籍。先史時代の洞窟壁画と、iPhoneをはじめとした無数の情報端末が形成する社会を接続し、イメージと支持体の関係を再考するインスタレーションや展覧会企画を発表。主な自主企画展に「秋山佑太+布施琳太郎『モデルルーム』」(Snow CONTEMPORARY)、「ソラリスの酒場」(the Cave/Bar333)、「新しい孤独」(コ本や)、「iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)」(BLOCK HOUSE)など。

【継続採択】(氏名:50音順)

アーティスト Aokid(アオキッド)※継続
交付金額 500,000円
プロフィール 振付家、ダンサー。1988年東京生まれ。14歳よりブレイクダンスを始める。2010年東京造形大学映画専攻卒業。在学中より美術作品、舞台作品、パフォーマンス、イベントなどの制作、発表を始める。ダンスカンパニーなどに参加した後、aokid cityを主宰。2015年、第12回グラフィック「1_WALL」グランプリ。2016年、横浜ダンスコレクション2016審査員賞受賞。野外を舞台にした”どうぶつえん”というキュレーション企画を始動する。現在、東京造形大学cslab勤務。
アーティスト 小田桐 奨(オダギリ ススム)※継続
交付金額 500,000円
プロフィール アーティストユニット・LPACK.所属。最小限の道具と現地の素材を組み合わせ、国内の様々なスペースを「コーヒーのある風景」に変えるカフェ・プロジェクトや、各地の国際芸術祭におけるビジターのためのスペースづくり、美術館の教育普及プログラムと連動したワークショップスペースの設計など、アート、デザイン、建築、民藝などさまざまな領域を横断しながら、アーティストと鑑賞者、地域の人々とのコミュニケーションの場を創造している。
アーティスト 山縣 太一(ヤマガタ タイチ)※継続
交付金額 500,000円
プロフィール 演劇ユニット・オフィスマウンテン主宰、俳優、演出家、劇作家、振付家、ダンサー。1979年、横浜生まれ。2001年より演劇カンパニー・チェルフィッチュに俳優として参加。 各作品において自身の振り付けを行い、中心メンバーとしてチェルフィッチュを牽引。日常の無自覚な身体を自覚的に舞台上にのせるための独自のメソッドを考案し、ワークショップを横浜を中心に行う。2015年より自身の作・演出する演劇ユニット・オフィスマウンテンを始動。『ドッグマンノーライフ』(2016)が第61回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。
アーティスト 山本 卓卓(ヤマモト スグル)※継続
交付金額 500,000円
プロフィール 範宙遊泳主宰。劇作家・演出家。幼少期から吸収した映画・文学・音楽・美術などを芸術的素養に、加速度的に倫理観が変貌する、現代情報社会をビビッドに反映した劇世界を構築する。近年は、マレーシア、タイ、インド、中国、アメリカ、シンガポールで公演や国際共同制作なども行ない、活動の場を海外にも広げている。『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。『その夜と友達』で第62回岸田國士戯曲賞最終候補作ノミネート。公益財団法人セゾン文化財団ジュニアフェロー。急な坂スタジオサポートアーティスト。ACC2018グランティアーティスト。

クリエイティブ・インクルージョン活動助成

【講評】

 本助成制度は、平成28年度から数えて3回目の募集である。今年度の申請数は昨年度から増えて30件(昨年度22件)であった。応募増は本制度への高いニーズを示しているが、クリエイティブ・インクルージョンという新しい施策を申請者や採択者と共に育てていく段階であり、今回の審査結果もそれを反映した形となった。

本助成制度の審査項目は、要項で以下をあげている。
①親和性:共感を高める仕組みを有し、社会へのひろがりが見込めるもの
②先駆性:社会に先駆けた活動であるもの
③実現性:企画、体制、場所の確保、予算、スケジュールの妥当性と進行管理能力があるもの
④継続性:将来への発展が期待できるもの
⑤影響力:将来的に社会へのインパクトを与える期待がもてるもの

 今年のテーマ申請は、「Dance Dance Dance@YOKOHAMA2018」の開催年であることから、「ダンス・身体表現」とした。これ以外の「自由申請」も募集し、テーマ12件、自由18件の応募があった。うち採択されたものは6件で、新規採択3件、継続採択3件、テーマ申請が1件、自由申請が5件となった。
 採択されたものは、創造都市施策やクリエイティブ・インクルージョンの取組みの趣旨をよく理解したものであった。ほとんどのテーマ応募が、テーマに則していたが、助成趣旨には則していなかった。

【新規採択事業】(団体名:50音順)

申請団体名(代表) Artmingle(申請代表:海老澤 彩)
事業名 Future Feminism in Yokohama
交付金額 350,000円
内容 および講評 社会課題にアート通して創造的なアプローチをするチームが、横浜市内でフェミニズムをテーマにした展覧会、リサーチ、勉強会をする提案。時代と共に変化していくフェミニズムという言葉が持つイメージについて、国際的な視点、アートの視点を交えて日本社会と共有していくプロジェクト。申請内容の先駆性、同時代性を評価。申請は中長期的な取組みであり、今回は育成の意味も込めて、申請内容のうち横浜における勉強会や調査に関わる部分に助成する。歴史ある横浜の男女共同参画活動の取組みなどと交わり、思想や企画が深まることを期待する。
申請団体名(代表) NPO法人国際障害者スポーツ写真連絡協議会(申請代表:佐々木 延江)
事業名 パラフォト2018取材プロジェクト
交付金額 350,000円
内容 および講評

横浜を拠点に、障害者スポーツをモチーフとした写真その他メディアによる表現を通じて、障害の有無や世代の差、国や地域の壁を越えた視点によるコミュニケーションを行い、人と人が相互に理解しあう社会の形成を目指す団体の取組み。既に取り組み実績がある中で、取材者側に当事者に参加してもらい育成していく提案を評価した。今回は既存の取材活動ではなく、その活動を社会に広げる部分について助成する。写真や映像系のクリエイターが関わり、社会包摂についてスポーツを通じたまちづくりから読み解くことで、新たな視点が都市にもたらされることを期待する。

申請団体名(代表) 渡辺篤
事業名 ひきこもりの部屋写真募集プロジェクト
交付金額 900,000円
内容 および講評

横浜市内で活動するアーティスト渡辺氏が、ひきこもりの方々と協働し、彼ら/彼女らの部屋の写真を募集して、写真集を作る提案。本人が、過去にひきこもり当事者であり、それを題材とし作品を発表してきたアーティストである。今回の申請では、個人の作家活動から社会に変革を促すアートプロジェクトへ、本人の興味が移行しており、これまでの市内の活動から変化している。
申請者は、アートと福祉のジャンルを横断し、社会包摂やソーシャルデザインの要素を持ったプロジェクトを通じて、社会に存在する痛みや孤立についての可視化を行い、問題を社会に共有することを目指している。当事者にしかできない表現、準備・リサーチ・チーム構成等の計画性、横浜で実施する趣旨の明快さを高く評価した。社会の実状をアーティストの目を通して顕在化させることを期待する。

【継続採択事業】(団体名:50音順)

申請団体名(代表) あしおとでつながろう!プロジェクト(申請代表:おどるなつこ)
事業名 育て!メッセンジャー事業
交付金額 500,000円
内容 および講評 横浜市内で、障がいの有無に関わらず、子どもから大人まで参加できるダンスのプログラムを実施する団体の活動。その活動の発展系として、これまで受講する側で参加してきた人達が、教える側に回る仕組みづくりを行う。昨年度の活動では、事業の受益者は障がい者だと捉えていたが、今年度はそうではなく、受益者は障がい者と共に暮らす社会の側と捉えなおしている。障がいのある人と一緒に仕事をつくる動きに変化したことを評価し、その実現を期待する。
申請団体名(代表) 有限会社スタジオニブロール(申請代表:矢内原 充志)
事業名 YOKOHAMA KOTOBUKI INSIDE
交付金額 1,300,000円
内容 および講評 寿町のすぐ近くに仕事場があるファッションデザイナー矢内原氏が、寿町に暮らす、働く、出入りする人達と対話し、服をデザインする。そのデザインをブックレットや展覧会、WEBメディアという形で発表する。全てを等しく内包していく創造性を“ファッション”で表していく創作活動。3年目で助成期間としては集大成の年であり、計画されるメディアの発行や展覧会を通じて、これまでの積み重ねを多くの人と共有し、活動が社会に広く周知されることを期待する。
申請団体名(代表) 坪田 義史
事業名 大人の発達障がい(仮)上映活動
交付金額 1,100,000円
内容 および講評 市内在住の映画監督・坪田氏が、自身と家族を対象としたドキュメンタリー映画の上映、シンポジウム等を実施する提案。昨年度は映画を制作、今年度は、映画祭への出品や当事者などを迎えて意見公開していく上映プロジェクトを行う。テーマに関心がなくても観られる作品自体の質、作品を通じて変化していく当事者、横浜から世界へ作品を発信していくこと、シンポジウムを通じて対話を重ねていく取組みなどを評価し、同作品を通じて、障がいや当事者への理解が社会への広がることを期待する。

 なお、不採択となった提案も可能性を感じるものがあり、次年度さらに企画を練り込み、再提案されることを期待する。

審査員:栗栖良依、曽我部昌史、萩原昌子、治田友香、岡崎智美

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