
加藤立(2023年度アーティスト・フェロー) 展覧会
「Ubik」
2023年度アーティスト・フェロー 加藤立がキュレーションする展覧会「Ubik(ユービック)」を象の鼻テラスにて、開催します。
「Ubik」展を開催します。
「Ubik」展にかぎらず、多くの展覧会や作品というものは、誰かに依頼されてつくるものではありません。それどころか、多くの展覧会や作品というものは、往々にして誰の役にもたちません。
そのことをうまく説明してくれる逸話があります。
1936年、物理学者のカール・アンダーソンとセス・ネッダーマイヤーによって、宇宙線の研究からミュー粒子(ミューオン)が発見されました。当時の素粒子物理学では、電子、陽子、中性子が主な基本粒子であり、それらが、整理された物理世界をうまく説明してくれました。
ところが、ミュー粒子は、電子に似ているのに200倍も重い、説明のつかない、いわば、当時の素粒子物理の理論にとっては都合の悪い不必要な要素でした。その発見を聞いた、アメリカの物理学者であるイジドール・ラービはおもわず言いました。
「いったい誰がこんなもの注文したんだ?」
「Ubik」というワードは、フィリップ・K・ディックの同名小説からとりました。
「Ubik」とは何なのか?ということは小説の中では明らかにされていません。
あるところでは「Ubik」は車であるとか、最高のビールであるとか書かれています。
まったくわけがわかりません。わけのわからない事柄は、わけのわからない事柄の専門家に尋ねるべきで、一説によるとアーティストは、そのようなわけのわからない事柄の専門家と目されている。彼らは長年、わけのわからない事柄に取り組みつつも、本人たちも実際のところまったくわけがわかっていない。
───加藤立
出品作家:SYSTEM OF CULTURE、加藤立
音楽:TEL-YEE
■開催日
2025年10月10日(金)~10月23日(木)10:00~18:00
■会場
象の鼻テラス(横浜市中区海岸通1丁目)
■料金
無料
主催:加藤立/アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協力:象の鼻テラス
令和7年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
加藤立
アーティスト。1979年愛知県生まれ。 人間の行為を演劇的に捉え、異化し、パフォーマンスなどで作品化している。広島市現代美術館所蔵の作品『I am a museum』(2019)では 、美術館所蔵の絵画を複製し、それを背負って美術館の外に出て、街中で出会った偶然の鑑賞者に絵画を観せるというパフォーマンスを行った。最近の活動に『絵画の沈黙が聴こえてくる』(ANBTOKYO、2022年)、『鑑賞者』(第24回岡本太郎現代芸術賞、2021年)、『I am a museum』 (広島市現代美術館、2019年)など。2023年度 ACYアーティスト・フェロー。
SYSTEM OF CULTURE
2017年に結成したSystem of Cultureは、今日まで蓄積し、発信され続けている膨大な量のイメージおよび理論を参照しながら、私たちが目にするモノの構造と質感、そしてそれら同士の関係を作品化することで、物事に対する視点の変化を促します。2021年「JAPAN PHOTO AWARD 2021」、 Patricia Karallis賞受賞。2022年「VOCA展2022」上野の森美術館、22年5月CALM & PUNK GALLERY、2024年3月にparcelにて個展開催。