TOPICS

助成
2023/05/30
2022年度 アーティスト・フェローのジョイス・ラムさんが、藤沢市アートスペースで行われる企画展「あなたが眠りにつくところ」に参加します。藤沢を拠点にしている松下誠子さんとの二人展。 あなたが眠りにつくところ 日時:2023年6月17日(土)〜2023年8月27日(日) 会場:藤沢市アートスペース 展示ルーム https://www.joycetsin.com/(ページ内news参照)  
助成
2023/05/15
一次選考の結果につきましては、一次選考通過者にのみ5月18日(木)にメールにてご連絡します。 今しばらくお待ちいただきますようお願いいたします。 一次選考通過者の方は、二次選考を2023年5月27日(土)9:30~12:00の間で実施いたします。 詳細につきましては、一次選考通過者にメールにてお伝えいたします。 なお、交付・不交付の結果は6月9日(金)までに、申請いただいた皆さまに郵送にて通知をいたします。
コラム
2023/05/12
2009年からはじまった、横浜・関内外エリアを中心に活動するクリエイターのネットワークから生まれるイベント「関内外OPEN!」。毎年秋口に開催していますが、今年も15回目の開催にむけて準備を進めています。 参加を予定しているクリエイターが集まり、キックオフとなる「OPEN!会議 vol.1」を5月10日(水)に開催しました。 はじめて関内外OPEN!に関わる方もいらっしゃったので、まずは参加者の自己紹介から。多様な業種のクリエイター22名にご参加いただきました。 その後、幹事からの趣旨・企画説明を行い、イメージを共有しました。なかでも、今年のタイトルである「創造自由貿易港」にみなさん興味津々な様子。 質疑応答の時間では、関わり方や企画内容について等の活発な意見交換が行われ、秋口開催に向けて良いスタートを切ることができました。 昨年実施し、好評だった「スタジオツアーズ」も継承しつつ、今年は更に参加クリエイターや一般来場者が「創造の種」を交換し合えるような、参加型イベントの企画を考案中です。 今後も関内外OPEN!に向けて情報をお伝えしていきますので、お楽しみに!
#関内外OPEN
コラム
2022/02/04
横浜で生まれ育ち、現在も市内にスタジオをかまえる現代美術家の高野萌美さん。織りや刺繍、ペイントなどあらゆる技法を使い、布の作品を制作する。2021年には『美術手帖』の特集「ニューカマー・アーティスト」の一人にも取り上げられ、またアーツコミッション・ヨコハマ(ACY)のU39アーティスト・フェローシップ助成に選出されるなど近年の活躍はめざましい。メキシコ・オアハカ市のレジデンス施設、pocoapoco(ポコアポコ)での滞在を終えたばかりの高野さんに、近日の活動となぜ手仕事や布を使い続けるのか、その制作の裏側をきいた。 メキシコ・オアハカでのレジデンスを終えて ― 高野さんはこれまでもインドやペルーなど、各地の布や手仕事をリサーチされていますが、メキシコ・オアハカのレジデンスではどのような活動をされてきたのでしょうか。 高野萌美(以下、高野):私が滞在したレジデンスは、アーティストに限らず料理家やライター、文化人類学を専門にするリサーチャーなどさまざまな方が滞在しています。作品のような形で成果を残すことは滞在の条件にないこともあり、おもにリサーチをメインに過ごしました。オアハカはメキシコ南部のまちで、先住民族も多く生活し、刺繍や織りの技術も独自に発展しています。そうした先住民族が生活する村に行き、手仕事を間近でみることができました。 ― 2021年11月に出発されて、1ヶ月ほど滞在されたとのことですが、印象深い出来事などはありましたか。 高野:コロナ禍の影響で外国人、特にアジア人が少なかったので、どこにいっても目立っているのを感じていました。スペイン語は少し勉強していきましたが、それでもこれまで訪れた国と比べて言葉の問題や食事の違いなど自分にとって環境の変化が大きいのを感じました。特に、滞在の最後に首都のメキシコシティに寄って、メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガン(1902-1988)の自邸に寄った経験は印象的でしたね。バラガンは同時代のアーティストとの交流も多く、ドイツ出身のアーティスト、ヨゼフ・アルバース(1888-1976)に相談してつくったとされる彼の絵画のレプリカが置いてありました。そうした交友関係や当時の生活を垣間みることで、バラガンが「心地いい」という感覚を大事にしていたことが伝わってきた。時を隔ててもその感覚に共感できました。リサーチした内容をどう作品にいかしていくかも、これから考えていきたいと思います。 作品をつくる過程とタイトルに込められた思い ― 作品について伺っていきたいのですが、高野さんのウェブサイトにあるアーカイブ画像を見ていると、2021年はたくさん制作されていますね。作品はどのようにつくられているのでしょうか? 高野:作品のつくりかたとしては、木のパネルに布の作品をはっていることが多いですが、最近では木工所にいってパネルから制作しています。写真だと伝わりにくいのですが、数センチの厚みがあって、側面に刺繍しているものも。平面に見えますが、立体作品に近いかもしれないです。 ― 織りのあとに刺繍して、ペイントして、とさまざまな手法を重ねていますよね。 高野:順番もわかりにくいですよね。時間軸が曖昧になっていると思います。丁寧に刺繍した部分にバッとインクをかけたり、はさみをいれたりも。直して、壊して、縫ってなどを繰り返して作品ができています。 ― 作品のタイトルもとても気になります。たとえば《以後への旅路》(2021)という作品、これはどのような意味なのでしょうか。 高野:ことばを日々ストックしているのですが、そのなかから選んだり、作品を前に新たにことばを考えたりしてタイトルをつけています。この作品ができたとき、窓のようだなと思ったんです。そして、以前つくった《いつも彼岸で》(2019)という作品がパッと浮かびました。「いつも彼岸で」とは「常にあの世にいるような気持ちでいきている」といった意味合いでつけたタイトル。それと似た感覚を今回は窓の印象と合わせて、英語タイトル「Bound for Post-Life」で表しました。日本語訳すると「Post-Life」=「別の次元」「人生以後」にいくための旅路、という意味です。 ― そのほかの作品のタイトルも詩的ですよね。 高野:言語に興味があるのですが、だからといって詩やエッセイは試しているもののまだ納得がいくかたちで書けないので、作品のタイトルというフォーマットが私にとってはちょうどよくて。作品のタイトルだと、ことばにもいろいろな解釈が生まれますよね。日々の生活や社会に対して考えていることを書き留めているのですが、それらをビジュアルアートのタイトルにすることで、ことばが自分から離れて存在できる気がしています。 それぞれの手仕事を通した「世界」 ― そもそも、高野さんはなぜ布を素材に制作しているのでしょうか。 高野:なぜ布を好きなのかを考えたときに、一つは、子供のころにたまごっちやゲームボーイなどに熱中し、コンピューターのドット絵に慣れ親しんでいたことは影響しているかもしれません。布も経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織られていて、ドット絵のように小さなグリッドの集まりで模様=世界が表現できる。植物や動物、太陽や星そして人間が手のひらの上でいきいきとうつし出され、それがとても愛おしい。そうした共通点があるのかなと思います。ですが、本当は布の表現を通して伝えたいことは、言葉にすると結構シンプルなのかもしれないなと。「生きているっていい」とか「世界はこのままでいい」といったことなのです。 ― それはどのようなことでしょうか? 高野:衣服はもちろん、窓にかかるカーテン、寝るときに使う布団、テーブルをふく布巾など、布は人が生きるうえで身近で必要なものです。世界中のどの国でも使われ、つくられていて、その地域固有の表現があります。そんないろいろな地域でつくられた布を見ると、それぞれの生活や文化的背景を感じとることができる。布をつくったり使ったり、さまざまな手仕事を見るたびに人間の生きていく力を感じ、「色々あるけれど、世界はこのままでいいんだ」と思えるのです。それが布を扱う大きな魅力だと思っています。この時代に少々楽観的すぎるかもしれませんが、そういうふうに大きな視点で物事を捉える機会を布は与えてくれる。私はそれを証明するために糸や布と共にこの複雑な世界で戦っているのかもしれません。 ― 各地で手仕事のリサーチを続けることが、作品を生み出すことと同等に、高野さんにとって大事なのですね。 高野:手仕事に興味があるのは、そこに何かしらのピュアな部分があると信じているからです。布の手仕事に携わる人たちの生活の背景や思いはそれぞれ違うと思います。生活のためにつくる人、楽しみのためにつくる人、それぞれです。そこには労働環境や搾取、差別などの問題ももちろんあります。ですが、そこでつくられたものをみると「ここをずらさずに押すぞ」とか、「この形のあとにこの形を入れたらいい模様ができる」など、つくり手が何を考えていたのかが垣間見られる。そうして丁寧に考えてつくられた布からは、なぜか平和を感じることができるのです。布の製造に限らず、手を動かしてものをつくることは生きるうえでの困難さを別のものへと変容させる、折り合いをつける手段でもあると思います。 ― 今後の活動としては、2022年の春までに作品集を制作される予定ですよね。 高野:いままでも作品集をつくったことはありますが、ただ作品を正面から撮影して掲載するだけでは伝わらないものがあるのではないか、と思っています。それはメキシコの経験が大きく、実際に身体的に経験しないとわからないことや伝わらないものがあると感じました。いま制作中の作品集では、作品の立体感を表現したり、一部を拡大して載せたりなど、より感覚的・空間的に伝わるようにしたいと思っています。また先ほどお話ししたように興味と課題でもある「ことば」を作品のタイトル以外にも自分で書いて載せてみようと考えています。 ― 世界に目を向けたとき、問題や課題ばかりに目を向けてしまいがちですが、高野さんは手仕事を通して人の営みのポジティブな面に目を向けられていると感じました。作品集もこれまでと違ったものになりそうで、できあがるのが楽しみです。 構成・文:佐藤恵美 撮影:大野隆介(*を除く) 【プロフィール】 高野萌美(たかの・もえみ) 1993年神奈川県生まれ。現代美術家。高校を卒業後に渡英し、ロンドンで現代アートを学ぶ。幼少期に親しんだコンピューターグラフィックスのピクセルによる図画との類似性から布の経糸と緯糸が織りなすパターンに興味を持ち、布が抱える社会・文化的背景と美術史が混交する地点を模索している。近年は紡ぎ、染め、織り、刺繍など布の製造にまつわる手作業に自ら関与し、できたものをあたかも大量生産された材料であるかのように大胆に使用した平面・立体作品を制作、タイトルとあわせて個の営みが持つ儚さと強さ、現代社会に生きる悦びと虚しさなど、複雑な生の在り方の表現を試みる。 https://www.moemitakano.com/
#美術
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コラム
2022/01/21
アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が次世代のアーティストのキャリアアップを支援するU39アーティスト・フェローシップ助成の採択者の一人である佐藤朋子は、綿密なリサーチで得られた資料を再構成し、レクチャーの形式に基づいたレクチャーパフォーマンスと呼ばれる「語り」の実践を行うアーティストだ。狐の伝説についての説教節「信太妻」に関する語りが岡倉天心の未完のオペラ"The White Fox"につながっていく『しろきつね、隠された歌』(2018)。日本における近代競馬の始まりである旧根岸競馬場に向かうバスの車中で鑑賞者が体験するオーディオツアー『103系統のケンタウロス』(2019)。あるいは岡本太郎の都市論「オバケ東京」を出発点に港区という土地と向き合う『オバケ東京のためのインデックス』(2021〜)。様々なモチーフについて調べ、語ることの意味とはー。 ー レクチャーパフォーマンスを中心に活動している作家というのは日本では珍しいと思うのですが、どのような経緯でレクチャーパフォーマンスを制作するようになったのでしょうか。 佐藤朋子(以下、佐藤):学部時代は東京藝術大学の先端芸術表現学科に通っていたんですけど、実はその前に一般大学に4年間通っていました。在学中にノルウェーに留学してたまたま受けた精神分析の授業で取り上げられていたシュルレアリスムが面白くて美術館にも見に行くようになって、そこでさらにコンテンポラリーアートにも出会いました。 美術にしろ演劇にしろ芸術というものに20歳過ぎてはじめて本格的に触れるようになって、芸術を通して何か考えたりディスカッションしたりシェアしたりすることがすごいなと思ったんです。それで、しっかり勉強するんだったらもう1回大学に入り直した方がいいかなと思い、留学から帰ってきて勉強をはじめました。 その時はとにかく芸術を学びたいという気持ちだけで、アーティストになるなんて考えていませんでした。入学した先端芸術表現学科は特定の枠組みにあてはまらない表現を扱う学科でなんでもやるみたいなところなんですけど。私は全部うまくいかなくて……(笑) それでもう私は作る方じゃないんだろうなと思ってたんです。 でも、卒業制作のときに青森出身の祖母の話をたまたま聞いたら、青森空襲から話がはじまって、そのことを自分が知らなかったことが衝撃で。祖母の話を自分の身体でもう一度掘り起こしたり再引用したりしたいと思ったんです。そのときは、それをリ・サイテイション(re-citaition)と呼んでいました。最初はリサーチの過程で私が出会ったモノを置いたり、祖母に変なインタビューをしたりということを試していたんですけど、最終的にはインスタレーションのなかでパフォーマンスをするというかたちになった。そういうかたちでないと、伝わらないと思ったんです。 — その時点ではもう作る側でやっていこうと思っていましたか? 佐藤:学部の卒業制作の時点では、自分が作家としてやっていけるみたいな感覚は全然ありませんでした。でも、作ることで私自身が一番学べるんですよね。祖母のこと、青森のこと、さらにその周辺の世界のことも。学べば学ぶほど謎は深まってくるんですけど、それを制作と呼んでいいんだったらすごく面白い、それは続けたいと思ったんです。 時間を扱う芸術についてもっと考えたいと思って、大学院は映像研究科のメディア映像専攻に進学しました。 映像研究科は課題も演習もすごくいっぱいあって、初めの半年間はもう大学から帰れないくらい。修行できる場所でした。メディア映像専攻は当時一学年13人しかいなくて、先生として指導教授だった高山明さんをはじめ、桂英史さん、桐山孝司さん、佐藤雅彦さん、畠山直哉さんがいらっしゃったので、講評会も毎回その先生方にみっちりと。密度の高い2年間でした。 現代の“語り”としてのレクチャーパフォーマンス 佐藤:修士課程に入って『しろきつね』のプロジェクトに取り組むようになってからも、展示としてモノを置いて、それらに語ってもらうということを試していたんですが、それはなかなかうまくいきませんでした。 リサーチをしてきた自分はそこに面白いものがあると思っていても、面白いと思うことには、個人的なことや、リサーチにいった場所とか状況も関係していて、私のやり方ではその文脈も含めて提示することがうまくできなかった。同級生にも、普段の会話でリサーチのことを喋ってるときの方が面白いよと言われてしまって、だったらモノを提示する人間としてその背景を喋らなくてはと思ったんです。 — 佐藤さんの作品では、ある一つのモチーフについての”語り”から複数の物語が紡がれていくところが印象的です。 佐藤:リサーチをしているときは時間の流れは一つなんですよね。私は長野出身なんですけど、おじいちゃんおばあちゃんから、昔は狐につままれる人がいたという話を聞いて、それって何なんだろうと思って調べるところから『しろきつね』は始まりました。狐について広く知られている物語ってあるのかなと思って調べたら「信太妻」に出会って、そこから岡倉天心がオペラをやっていたという話にもつながっていく。私のなかではそういう物語みたいなものがあって、そのつながりは歴史でもあると思うんです。 — 特定の土地から着想を得ることが多いのでしょうか? 佐藤:もともと個人的にゆかりのあった青森と長野以外は、たまたま縁があって、そこでやってみたいと思えたから制作することになったんですけど、いずれにせよ、接点が見出せないあいだは作れないので、どこに行ってもけっこう長く滞在しています。横浜で作った『103系統のケンタウロス』も、黄金町で滞在制作をする機会がまずあって、せっかくだから黄金町周辺について調べてみようというところからはじまりました。まずは体が実際にその場所にある、というところから制作がはじまることが多いです。 — リサーチの成果をレクチャーパフォーマンスとして語ることは、佐藤さんにとってどのような行為なんでしょうか? 佐藤:『しろきつね』のリサーチをしていて、いろんな民話や説教節と出会いました。説教節は、語る人が道端にゴザを引いて傘を差したらもうそこが舞台になって、人が集まって聞いてくれるというものなんですね。しかも、そこで語られた物語は宗教者だけではなく芸人にも語られるようになり、他の人が脈々と語り継いできた物語を、語る人が自分のバージョンに変えて話すので、立場や身分、地域によってもバージョンが違ったりするんですけど、それがすごく面白い。民話も、もともとある物語が語り継がれるなかで、語り手の周囲のゴシップ的なものや悲劇的な出来事、語りづらいことが織り交ぜられていったりするんです。 一方で、物語とか歴史というものは、人の一生よりもっと大きい時間の流れのなかにある。たとえば『しろきつね』のモチーフになった「信太妻」は中世からあるといわれている物語で、バージョンも膨大にあります。だから大きな流れのなかで私はたまたまその物語に出会って、たまたま今この場にいるからこうして話しているだけだと思っているんです。そういう意味で語り手は誰でもよくて、ただ、すでにある物語のなかから、語り手がいま何を他の人とシェアしたいと思うかが大事なんだと思います。 ロバート・モリスのパフォーマンスで、美術史家の講義音声を流して、口パクでそれを真似して喋る『21.3』(1964 年)というものがあります。レクチャーの権威性を解体するパフォーマンスの例として取り上げられることが多いんですけど、私はむしろ、モリスはレクチャーを自分の身体でなぞりたかったのかなと思ったんですよね。説教節や民話を語る人たちも、自分が語って反復して、その場で感じたり共有したりすることによって、また物語のなかに新しいことを見つけたりしていたと思うんです。私自身、仮説のように作った物語を話しながら、それを観客とシェアすることで一緒に考えているところがある。そういうものとしてレクチャーパフォーマンスを捉えています。 — “その場でパフォーマンスをすること”自体が意味を持つということですね。 佐藤:私はあがり症で、緊張するしセリフも覚えられないので、パフォーマンスは紙に印刷した言葉を読み上げるかたちでやっています。自分で出るんじゃなくて俳優にやってもらったら?と言われたこともあって、そこは悩んでいたんですけど、最近はそれでもいいのかもしれないと思うようになりました。 ステージに上がるのにいい体って、きちんと声が出せて、言葉に説得力があって、存在感がある、みたいな体だと思うんですけど、人間にはそうじゃないときもいっぱいある。私はあがり症なので、ステージに立つと自動的に「そうじゃない」状態になってしまうんです。以前はもうちょっとがんばってハキハキしゃべろうとか思っていたんですけど、最近はそうやって自分の状態に嘘をつくのをやめて、緊張してダメダメな状態でもステージにいるということをむしろやっていこうと思うようになりました。 レクチャーパフォーマンスというのは、言葉で誰かに何かを伝えるということを誰もができる形式だと思うんです。聞く側も、椅子に座って人の話を聞くんだな、という鑑賞姿勢になるからから誰でも聞くことができる。すごく間口が広い。そういう意味で、民話みたいにベーシックなかたちで物語を伝えることの現代版がレクチャーパフォーマンスなんだと思います。 人間からずれたところから世界を見る — 最後に、今後の活動について教えてください。 佐藤:『しろきつね』はこれまでに3回上演する機会があったんですけど、やるたびに少しずつ作り直していて、最初は20分くらいだったのが今は40分くらいになっています。ある対象に向き合うプロジェクトがずっとあって、最近はレクチャーパフォーマンスの上演はプロジェクトのその時点での経過報告みたいなものだと思うようになりました。そうすると、作品の完成形態を逆に考えなければならないとも思ってるんですけど……。そういう意味では、これまでにやってきた全てのプロジェクトが継続中なんです。 具体的な活動としては、2018-2019年に横浜で作った『103系統のケンタウロス』という作品のリクリエーションに取り組んでいます。U39アーティスト・フェローシップ助成は期間も1年間と長く、取り組みの自由度も高いので、この機会に自分ひとりで取り組むのではないやり方でゆっくり考えていきたいと思って、共同制作のかたちでリクリエーションに取り組んでいます。 改めてリサーチしてみたら、馬が持っている豊かさみたいなものが当時よりもよく見えてきて、でもそれを私ひとりでは十分に伝えられないと思ったのと、プロジェクト自体をプラットフォームみたいなかたちにしたいと思って、共同制作のかたちで進めることにしました。最初は秋田在住のアーティストの迎英里子さんと一緒にやる予定だったんですけど、今はもうちょっと広がって文化人類学者の鈴木和歌奈さんにリサーチに入っていただいたり、映像の方が入ったり、作曲家の方と歌を作ったりもしていく予定で、2022年度中には公演として提示したいと思っています。 2月末にはシアターコモンズで『オバケ東京のためのインデックス』の第一章を上演します。2021年に上演した序章の続編で、恵比寿映像祭では序章を映像インスタレーションとして再構成したものも展示します。コロナ禍の影響で中止になってしまった2021年の豊岡演劇祭で上演予定だった『TWO FEMALES ー ツル/アンティゴネ』のプロジェクトも継続しています。これはコウノトリと鶴についてのリサーチに基づく作品ですね。 狐と馬と鶴というモチーフは別々に出てきたものなんですけど、動物シリーズとしてまとめて考え直したいという気持ちがあります。特にコロナ禍に入ってから、人間が世界をどうにかしようとすることの無理さも見えてきてしまって、人間だけの歴史だけを見ているのに違和感を覚えるようになりました。私自身、高校生の頃に漠然とアメリカに憧れる気持ちがあって行ってみたいと思っていたんですけど、それは明治維新を経て急激に西洋化していった日本の歴史とも無関係ではないと思うんです。狐も馬も鶴も明治以降すごく減ってしまっていて、そういう日本の近代化の歴史にものすごく影響を受けています。でも、動物の側から見るとそこにはまた違うものが見えてくることがある。オバケもそうですけど、人間からちょっとずれたところから視点を借りて、もう1回歴史や、今現在について見ていきたいと思っています。 取材・文:山﨑健太 写真:大野隆介(注釈の無いもの)   【プロフィール】 佐藤 朋子(さとう・ともこ) 1990年長野県生まれ、神奈川県在住。2018年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。レクチャーの形式を用いた「語り」の芸術実践を行っている。主な作品に、『しろきつね、隠された歌』(2018)、『瓦礫と塔』『ふたりの円谷』(Port B 東京修学旅行プロジェクトにて上演、2018–19)、『103系統のケンタウロス』(2018)、『MINE EXPOSURES』(2019)、『TWO PRIVATE ROOMS – 往復朗読』(⻘柳菜摘との共同企画、2020-)、『Museum』(2019)、『オバケ東京のためのインデックス』(2021-)。 tomokosato.info 【インフォメーション】 多層世界の歩き方 日時:2022年1月15日(土)~2月27日(日) リアル会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA,ハイパーICC 詳細:https://hyper.ntticc.or.jp/random-walk/ 第14回恵比寿映像祭 「スペクタクル後 AFTER THE SPECTACLE」 日時:2022年2月4日(金)~2月20日(日) 会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか 詳細:https://www.yebizo.com/jp/information シアターコモンズ’22 日時:2022年2月19日(金)~2月27日(日) 会場:東京都港区エリア各所およびオンライン 詳細:https://theatercommons.tokyo/  
#パフォーミングアーツ
#美術
#助成
#ACY
事務局より
2023/03/03
2023年3月末日をもって、WEBマガジン「創造都市横浜」の記事の更新を停止します。 横浜で起こる/生まれる様々なクリエイティブな人、活動、出来事などの紹介を通じて、“創造都市横浜”をプロモーションする目的で、2013年から10年間、アーツコミッション・ヨコハマ(以下ACY)事業の一環として運営してまいりました。 ご愛読くださった皆さま、取材にご協力くださった皆さまに心より感謝申しあげます。 公開した過去の記事の一部は、当サイトのコラム記事としてアーカイブしていく予定です。「創造都市横浜」名義のSNS(Facebook、Twitter)につきましては、ACY名義に変更し、これまで通り、中間支援の役割として広報協力を行ってまいります。 ACYでは、今後も横浜のアート・クリエイティブなどの情報をWEBサイトやSNSで発信してまいりますので、変わらぬご愛顧のほどをよろしくお願い申しあげます。

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アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)は、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団が運営する「芸術文化と社会を横断的に繋いでいくための中間支援」のプログラムです。

横浜市の掲げる文化芸術創造都市施策の実現に向け、都心臨海部におけるアーティスト、クリエイター、企業、行政、大学、NPO、非営利団体等の創造の担い手が活動しやすい環境づくりを推進します。