2021-08-31 コラム
#まちづくり #デザイン #ハマの大喜利 #ACY

横浜・中華街の餐庁「状元樓」、地域とレストランの持続可能性を高めたい――第四回ハマの大喜利レポート

『ハマの大喜利』は、“もっと横浜を魅力的に、もっとアートやデザインを身近に”を合言葉に横浜の未来のまちづくりに向け、人の出会いを生み出す企画として、横浜の経済人、クリエイター、横浜市芸術文化振興財団が共同で実施しているものです。株式会社キクシマ代表取締役の菊嶋秀生さんとNPO法人ハマのトウダイ代表の岡部祥司さんを幹事とし、2020年夏の第一回開催以降、毎回市内企業を世話人に迎えて回を重ねてきました。ここでは、2021年7月に開催された第四回目の様子をレポートします。

どこで、どんなことが行われたの?

ハマの大喜利は、世話人から出された「未来の横浜の魅力発信」につながるお題に、横浜を拠点に活動するクリエイターが答えるという形式のイベントです。

会場となったのは、中華街大通りに面する状元樓本店の3階宴会場。今回世話人を務めていただいた、状元樓を経営する陣恵さんと大介さんによるアイデアで、近頃では使う機会が少なくなってしまった宴会場の新しい使い方を試みました。

新型コロナウイルスの影響をまともに受けている飲食業界。中華街も例外ではない中、「持続していくために様々な工夫をこらしている」と話す陣大介さん。食に関する“全球規模の持続可能性”と地域経済規模の持続可能性をレストランがつないでいるのではないかという仮説のもと、お題は「地域とレストランの持続可能性を高める Food, Place, and Authenticityを踏まえ状元樓(中華街の餐庁)が開発する新たなサービス、商品、PRの企画とは?」でした。

第四回ハマの大喜利が行われた、状元樓本店

そして、このお題にユニークな発想で挑むのが、Designbase株式会社のアオキジュニヤさん、STGK inc.の鬼塚知夏さん、ノガン株式会社の茂木隆宏さん・浅野宏治さんという3組のクリエイター。

こだわりの内装が落ち着いた雰囲気をかもす宴会場を舞台に、幹事のNPO法人ハマのトウダイ代表岡部祥司さんによる登壇者紹介で幕を開けました。

3組のプレゼンターと世話人(右から陣玲子さん、陣大介さん、陣恵さん、ノガン株式会社、鬼塚知夏さん、アオキジュニヤさん)

もう一人の幹事、株式会社キクシマ代表取締役の菊嶋秀生さんの開会挨拶では「明治時代以降、躍動した横浜の賑わいと比べると今は少し寂しい気がしているが、横浜を拠点に活動する若いクリエイターやデザイナーが増え、公共空間の利活用といったことに存在感を増してきている。人口減少社会の今だからこそ、独創的なサービスや、価値観の大転換が求められている。」として、「今回のような取り組みやデザイン提言で、企業活動が横につながるようになると良い」とハマの大喜利のコンセプトを語りました。

菊嶋秀生さん(株式会社キクシマ代表取締役)

続いて、第三回の世話人(株)テレビ神奈川/(株)tvkコミュニケーションズ代表取締役社長熊谷典和さんによるフィードバック。「参加クリエイター全員が、今まで自分たちで気づかなかった自社の企業イメージやメリットを教えてくれた。今後は、デメリットも話せるような関係性を作って行きたい」と語り、今は、その時のクリエイター3組と今後のリレーションの可能性について話し合っているとのことでした。

前回の振り返りを行う第三回ハマの大喜利世話人、熊谷典和さん((株)テレビ神奈川/(株)tvkコミュニケーションズ代表取締役社長)

状元樓とは?三代にわたるHer-Story

戦後の横浜で松方珠英さんが始めた状元樓は、娘の陣玲子さん、孫の恵さんという独立精神旺盛な女性たち三代にわたって守り育てられ、現在では、東京、横浜に3店舗を構えています。

大切にされてきたこだわりは、「Savor」。Savorとは「堪能」のことで「ゆったりと落ち着いた雰囲気のなかで五感の全てを満たしてもらうために、様々なサービスや商品を提供しよう」と受け継がれてきたそうです。

陣恵さん(株式会社ペガサスエンタープライズ専務取締役)

陣玲子さん(右/株式会社ペガサスエンタープライズ代表取締役)

クリエイターからの提案は?

最初のプレゼンターは、グラフィックデザイナーでありながら横浜で外国人向け宿泊施設も運営するアオキジュニヤさん。提案は、横浜の方言「じゃん」と調味料「醤」をかけたユニークな名前が特徴のハマの調味料。1980年代後半に香港のホテルで開発されたXO醤をヒントに、状元樓から発信され、いずれは横浜のおみやげにもなるような地域に愛される調味料を、というものでした。

アオキジュニヤさん(Designbase)。方言にインスパイアされた発表に会場も和みました。

次のプレゼンターは、中華街に事務所を構えるSTGK inc.に所属するランドスケープデザイナーの鬼塚知夏さん。最近の彼女は、仕事は充実しているが、健康が気になっているという。そんな自身の思いから発想を拡げ、健康を気にしている人に向けて、ジムに通うように状元樓に通い不足している栄養素を取り入れた料理を堪能できるプログラムを提案。

鬼塚知夏さん(stgk)によるプレゼンでは自筆のイラストが柔らかくもスマートな印象を生んでいました。

最後のプレゼンターはノガン株式会社。グラフィックデザイナーでもある彼らは、“食”を切り口に人や街について考えています。プレゼンのテーマは地産地消。国内では地産地消の中華料理での取り組みが珍しいことと、新型コロナウイルスの現状であっても地元横浜の人が楽しめることを取り入れたい、という思いからの提案。内容の面白さもさることながら、ノガンのお二人による小芝居を取り入れたプレゼンに会場がさらに和みました。

ノガン株式会社の茂木隆宏さん・浅野宏治さん。学生時代からタッグを組み続けるお二人の掛け合い。

アフタートークで

身近なところから始められそうでいて独創的なクリエイターたちの提案について、まず世話人の陣大介さんからは「素晴らしいアイデアをもらった。でも、自分たちだけでやるにはマンパワーが少なく腰が重くなるので、クリエイターと一緒に進めていけたら良いと思う。」と実現に向けた話がありました。

会場からは「企業とクリエイターと実践者の3者をつなぐことができたら、もっと完成度が高くなる」というハマの大喜利へのアドバイスや、「状元樓さんだけでなく一緒に何かできる可能性があると感じた」「中華街に限らず、色んな街に発展してく可能性を持っている」など、活動の広がりを期待する声がありました。また、「フードロスなどの課題について、デザイナーやクリエイターの楽しいアイデアで取り組みたい」と、デザイン提言への期待の声も上がっていました。

アフタートークをする3組のプレゼンターと世話人

プレゼンターを務めたクリエイターからは、「アイデアがお互いにつながって、地域の抱える課題にこたえていけるのではないかという気がした」と、クリエイター同士がつながっていくことを予感させる感想もありました。

最後は、「今は大変な時期だが、ハマの大喜利という体験によって、普段の自分の視点やつながり方を変えるといろんなことができる、という可能性にかけて、これからも開催したいと思っている。」という、幹事・岡部さんの第五回開催に向けての意欲的なコメントで幕を閉じました。

幹事・岡部祥司さん(NPO法人ハマのトウダイ代表)

写真:大野隆介


【イベント概要】

第4回「ハマの大喜利」
お題「地域とレストランの持続可能性を高める Food, Place and Authenticityを踏まえ状元樓(中華街の餐庁)が開発する新たなサービス、商品やPRの企画とは?」

日時:2021年7月28日(水)14:30~16:30
会場:状元樓

内容:
●開会挨拶(幹事:株式会社キクシマ 菊嶋秀生)
●第三回ハマの大喜利フィードバック((株)テレビ神奈川(株)tvkコミュニケーションズ代表取締役社長 熊谷典和)
●状元樓の取り組み紹介(株式会社ペガサスエンタープライズ専務取締役 陣 恵、同常務取締役 陣 大介)
●お題の説明、クリエイターの紹介
●クリエイター・プレゼンテーション
アオキジュニヤ(Design Base
鬼塚知夏(STGK inc.
茂木隆宏、浅野宏治(ノガン株式会社
●世話人・幹事・会場、クリエイターとの対話
●閉会挨拶(幹事:NPO法人ハマのトウダイ 岡部祥司)


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