2024-04-26 コラム
#福祉・医療 #生活・地域 #まちづくり #美術 #ACY

ACYフォーラムvol.3 「子どもの居場所・学び場と文化芸術のまちでの交点」  開催レポート

2024年2月2日(金)、BUKATSUDO HALLにて、アーツコミッション・ヨコハマ(以下、ACY)が注目する人と場を紹介し、創造性を軸に横浜の地域の未来を議論するACYフォーラムの第三弾として「子どもの居場所・学び場と文化芸術のまちでの交点」を開催しました。

会場の様子

 

子どもや若者がコミュニティの中で育つ機会が減るなど社会の変化や問題の複雑・複合化にともない、青少年や子どもの居場所を地域につくる動きが日本各地で増えています。また、STEAM教育やキャリア教育など各教科を横断した学習が推進され、学校外で地域と連携した学びの場が求められるようになっています。
そうした中で、文化芸術に関わる活動や施設・拠点は、これまでも地域の中で居場所や学びの場としての役割を担ってきました。誰もが参加できる開かれた場として運営されているものは、学校や家庭以外の社会教育・社会包摂の場になり得る可能性を秘めています。
今回のフォーラムは、横浜と他都市における実践者の視座から、暮らしと文化拠点の距離感や人間関係の築き方、つくりたいまちの姿などを語りあい、子どもの居場所・学び場づくりに文化芸術はどのように寄与できるかを深める機会として、実施しました。

 

第一部 事例紹介

第一部では各地で実践をされている方より活動をご紹介いただきました。

①岩室晶子さん[横浜市]
(NPO法人ミニシティ・プラス事務局長)岩室さん

NPO法人ミニシティ・プラスには「まちはそこに暮らす人、かかわる人たちで創り上げていく」という理念があります。子どもたちが自分らしさを活かした生き方を自分の力で見つけられるように、自由な発想で社会を体験し考える機会をつくっています。主に、3つの事業を行っています。
「ミニヨコハマシティ」は4歳から19歳までの子どもたちが話し合いを重ね、自分たちで子どものまちを数日間つくる取り組みです。事業を営んだり、税金を納めたり、市長を選ぶ選挙があったりと都市の動きを体験します。子どもたちが考えているので、毎年不思議なお店があります。開催場所は横浜だけでなく、震災後に宮城県に行って現地の子どもと一緒に子どものまちをつくったり、歴史博物館で参勤交代のある昔の村をつくったり、アートスペースでアーティストともコラボしました。
「つづきジュニア情報局」「MMジュニア情報局」では子どもたちが色々な場所へ取材に出かけ記事をつくるのですが、記事を書かないで写真ばかり撮る子もいます。学校ではないので、自分の好きなことで参加してよいのです。
「特命子ども地域アクター」は当NPOでは一番力を入れたいと思っている事業で、子どものまちや記者で取材を体験した中高校生らが、大人と協働で企画会議やイベントを行って、まちの課題解決に取り組む、本当のまちづくりを行います。
どのプログラムも子どもを一人の人として認めて、一緒になってまちをつくることを大切にしています。特に、「ミニヨコハマシティ」では「大人の口出し禁止」と掲げられていて、子どもたちの自治を大切にしています。
過去の参加者からは「勉強ができなくても、違うところでの自分のよいところはあると思えた」「学校では物事を自分で決めることや臨機応変に対応する機会が少ないが、子どものまちでは自分がやりたいことを描いて実行すること、柔軟に対応する力がついた」という声があり、保護者からも「親は自分の子どもを過小評価しがち。子どものまちでは、家族以外の人にほめてもらい、自信もついたのだと思う」といった声があがっていました。子どもの権利条約(*1)にも、意見表明権があります。私たちは子どもの意見を大切にし、子どもを大人と同じ、一人の人として認めて、一緒になってまちをつくることをやっています。(岩室さん)

ミニシティ・プラス:https://minicity-plus.jp/

*1:子どもの権利条約
1989年に国連総会において採択された、世界中すべての子どもたちがもつ人権(権利)を定めた条約。
子ども(18歳未満の人)が守られる対象であるだけでなく、権利をもつ主体であることを明確にしている。意見を表明する権利は第12条に定められている。

 

②吉川永祐さん[石川県金沢市]
(NPO法人みんなのコード クリエイティブハブ事業部 ミミミラボ コーディネーター/アーティスト)

吉川さん

ミミミラボはデジタル機器を自由に使い、表現することができる10代だけの場所です。プログラミングの必修化を背景に学校支援や教材配布の活動をする「NPO法人みんなのコード」が運営しています。学校以外の場所でもテクノロジーに触れてほしい、不登校や経済格差、都会に比べて機会も少ない地域の子たちにも同じようにデジタルに触れる機会を届ける必要があるとして子どもの居場所事業を始めました。
3Dプリンターでのオブジェ作り、子どもたちに人気のマインクラフト、ロボットプログラム、 DTM での作曲と、大学生スタッフと一緒にああでもないこうでもないと言いながら楽しんでいます。その一方で、ただくつろいだり、iPad で動画を見ながらお喋りする子も多いです。せっかくなら何かやってほしいとスタッフが考えてしまうこともありますが、「ここはデジタルに触れることができる場所だけど、デジタルに触れなきゃいけない場所ではない」と共有しています。
子どもたちが訪れる理由は様々かつ複合的です。プログラミングやイラストなど創造活動がしたい子や、居場所づくりに関心がある高校生もいれば、ただただ遊びたい、ゆっくりしたい子もいます。それらも創作活動を通じて人とコミュニケーションを取っている子や、マイクラで遊ぶなかでタイピングやプログラミングを学んでいる子もいて、複合的に過ごしています。年齢や興味によって絶えず変化しているので、目的が異なる子どもたちが同じ空間を共有していることがポイントだと考えています。
例えば落書きコーナーは互いに目を合わせずに手元を見て会話ができる利点があります。会話が止まってもその場を過ごせますし、輪に入れなくて様子をうかがいながら時間をつぶしたり、大人も横で絵を描いたり、なんとなく一緒にいるスペースをつくっています。
これからは、体育の授業で例えるならば、早く走るための方法を教える場所ではなく、自分の体に合った走り方をそれぞれが考えるのに伴走する場所にしたいです。デジタルとの付き合い方、ものづくり、周りの人との付き合い方を考える場所になるのが大事なのではと思っています。(吉川さん)

ミミミラボ:https://mimimi-lab.jp/

 

③直井 恵さん[長野県上田市]
(草の根文化芸術コーディネーター)

直井さん

映画館「上田映劇」を2011年の閉館後、2017年に仲間とともに再起動しました。子ども食堂などが増えるなかで、映画館も子どもを受け入れられるのではと、上田映劇と中間支援NPO、フリースクールを運営するNPOで始めました。教育委員会や中間教室(*2)、当事者の親の会などに加えて、就労支援団体とも繋がっているのも特徴です。通信制高校を卒業するも働けずひきこもってしまう子らとも出会い、今では小1から30代までの約200名が登録しています。
活動としては月に2回、上田映劇の上映作品から4本を選んで休館日に上映会を行っています。わかりづらいかなと思うものも見ます。その他に「映画の学校」というストップモーションアニメーションの体験や監督らを招いたワークショップなど学びを深める企画や、営業日にチラシ整理やポスターの貼り替えをする「平日シネマクラブ」も実施しています。でも、みんなで映画を見なくてはいけないのではなく、お茶を飲んだり、ただなにもせずにすごせる空間もつくっています。
活動するうちに見えたことは、子どもたちは行きたい場所は自分で選んでいくし、その子のタイミングで最初の一歩が出るのだなということです。なかなか家から出れず、担任の先生が直に会うことができなかった子の、久しぶりの一歩が映画館だったということもありました。
学校外の居場所も出席扱いを受けることができるという教育機会確保法(*3)が制定されていたので、それらの話題を交えながら教育委員会にも活動を紹介してきた結果、上田映劇に来ることが出席扱いになることにつながりました。その結果、学校に行く日が増えた子もいますし、学校に行くのをやめた子もいます。自分のせいではなくて環境に合わなかっただけと本人が気づいたこともありました。
なぜ映画館がこういった場をつくるのかは自問自答しています。利用者からお金をもらわずに運営をしているので、普段は映画館に来られない子たちが来る機会をつくっている面もあります。でも、子どもが自由に振る舞える場が世の中にはもっと必要だと思ってやってきたので、映画を見ても見なくてもいいし、自分の好きなことをしてもらっています。
学びと居場所の両方の側面を打ち出すうちに、ネットワークができました。劇場・犀の角や福祉施設のリベルテ、相談業務を行うNPO法人場作りネットなどとの連携もあり、上田では映画館に限らず地域の資源がいろんな人の居場所になる好循環が起きています。(直井さん)

うえだ子どもシネマクラブ:https://uedakodomocinema.localinfo.jp/


*2:中間教室
教育委員会が設置する、学校に通うことに困難さを抱える児童生徒への学習指導や相談を行う場所。
他都市では「教育支援センター」「適応指導教室」等といわれることが多い。


*3:教育機会確保法
正式名称は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」。
2016年公布、2017年施行。

 

④八巻香澄さん[東京都]
(東京都現代美術館学芸員)

八巻さん
美術館は静かに過ごさなくてはいけない、子ども連れでは行きづらい印象があります。東京都現代美術館では2010年より全国に先駆けて触れる・遊べる子ども向けの展覧会を定期的に開催してきました。コロナ禍を経た2023年の展覧会では、これまでの元気いっぱいな子どもたちに向けた展覧会ではなく、しんどい思いをしている子たちの居場所をつくりたいと10代をメインターゲットに。小さい子は親に連れられて来ますが、10代は親に連れられて行動しないので、日頃は来場しない層です。
今回は「見知らぬ誰かのことを想像する展覧会」というキャッチコピーをつけました。「身の回りの人間関係で、誰かに共感する・してもらうではなく、まずあなたの気持ちを大事にしてね」「自分の知っている人には共感できるけれど、共感できる範囲外にも人がいることを想像してみてね」というメッセージの込められた展覧会です。
目標を大きく超える中高生が来場し、来場者の年齢層も10代20代で6割を超えました。どんな方たちが来るかわからなかったのですが、届けたい方々が来てくれて、顔が見える存在になったことに大きな価値がありました。
出展作家の渡辺篤さんがぜひやりたいと言ってくださり、アーティストと一緒に不登校・ひきこもりの方とそれぞれに作品を見るツアーを関連プログラムとして行いました。不登校の方とのツアーは心理的な安心感のために休館日にアーティストとスタッフと子どもたちだけで行いました。ずっと母親の後ろに隠れていたり、なかなか声が出ないお子さんもいるのですが、一緒に過ごしていくうちにほぐれて、少しだけ感想を言えるようになる姿を見られたのは大きな財産でした。
美術館は展覧会によって大きく変わるため、ずっとオープンな場であることは難しいのですが、図書館と同じく学校のある時間帯にいても何も言わない場です。そして美術作品は答えを求めなくても大丈夫、そこでオープンにされているものです。ぜひ子どもたちの居場所、学びの場として使っていただけたらと思っています。(八巻さん)

展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/empathy/

 

第二部 登壇者によるディスカッション

 

第一部の登壇者に聞き手として野村政之さん(信州アーツカウンシル ゼネラルコーディネーター)を加えて、子どもたちの学びの場と居場所の交点についてディスカッションを行いました。

登壇者と野村さん

左から岩室さん、吉川さん、直井さん、八巻さん、野村さん

 

――学びと居場所の共存

(司会/アーツコミッション・ヨコハマ)
4名の方に共通して、子どもの自己決定権と、大人が子どもの気持ちに向き合うことを大事にされていると感じました。学びの場、居場所の場というキーワードで思うことや、活動の中での学びと居場所のスイッチング、心がけていることをお聞かせください。

(岩室さん)
私は自らが体験して初めて学べると思っています。体験からの学び、ラーニングバイドゥーイングというデューイの考え方です。プログラムを考えるときは、子どもたちをお客様にしないで、子ども自身が主体的に考えてこそ成り立つプログラムが理想だと思っています。

(吉川さん)
まずは居場所として使ってもらったらと思っています。その上で、説得する・呼び込むというよりも、隣でやること・誘惑することを意識しています。大学に入った時に自分と異なる人の存在が当たり前にあるのが良いと感じて、ミミミラボもそういう場所になってほしいです。

(直井さん)
子どもは安心できる場所だと、だんだん自分の気持ちに向き合ったり表現できるようになると感じています。映画は見た人それぞれの感覚や感性が成り立つので、先生と生徒じゃなく一人の人として感想を言い合って対等なものとして扱えるのが強みだと思います。

(八巻さん)
居場所であることと学びの間に時間的な差はそこまでなくて、頭の中はいろいろ動いているかもしれないから、それを邪魔しないことが大事ではないでしょうか。促すタイミングが早いと芽を摘んでしまうこともありますよね。学びを限定的に考えすぎないことだと思います。

――無目的な場所について

(野村さん)
コロナ禍に「不要不急なことはやめよう」となった結果、フリースペースもフリーでいられなくなったと思います。居場所が「ここにいてもいいんだよ」という状態を保つためには、無目的であることを許すような場のつくり方がポイントかなと思うのですが、どうでしょうか。

(吉川さん)
ミミミラボは保護者や大人にはプログラミングやデジタルの教育の現場として認識されているのですが、子どもたちからすると遊んだりだらっとできる場所になっています。理由が必要な時の口実づくりのようで面白いというか、どんどんやれよ、内緒だぞと。機材の用意もありますが、なにもないスペースで子どもたちが勝手に何かを始めることもあるので、あえて大人が使い方を設定しないことも意識しています。

(野村さん)
親御さんが子どもを通わせることに関して、目的を求めることはないのですか?

(吉川さん)
お持ちの方もいらっしゃいます。ミミミラボは初回は親御さんと一緒に見学するのもOKなのですが、2回目以降は基本的には子どもだけで利用してもらっているので、うまくかわしてるのかもしれません。一方で、学校に行っていない子の親御さんには「ここは受け入れてくれる、いても大丈夫」という認識をされていて、むしろ「何かやるという空気感がない方がうちの子も安心する」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

(岩室さん)
私たちは「街」というくくりなので、誰が何を言っても何をしてもよいのですよね。曲を作ってダンスをしようという提案がありみんなで取り組んでいても、わざわざ来るのに1回も踊らない子がいます。でもその子にスタッフが間違って「踊る時間だよ」なんて言ったら、帰ってしまってもう来なくなるだろうなと思って(言いません)。
規模が大きくなって新しいボランティアの大人が来ると、きちんとやることを求めてしまうことがあります。それは勘違いで、仮想のまちの中では、いつ閉店したって工事中だっていいんですと言うのだけれど、なかなか理解してもらうのが難しいですね。保護者は仕事をたくさん経験させたいようで、仕事を待つ列に対し「どうしてこんなに待たせるの」という苦情もあります。子どもは友達と、どれにしよう、あれ面白そうだねと並んでいてそれも遊びの一環なのに。「これは子どものまちなので、苦情があれば(子どもの)市長へ」と言い、子ども主体であることを伝えています。そうするとだいたい言わなくなります。

(直井さん)
映劇もシネマクラブもわかりやすい見える取り組みなので親御さんや先生やソーシャルワーカーが繋いでくれるのですが、実際は見ても見なくてもいいし何をしていてもいいです。起きて映画館に来るのをワンクッションに、ゲームセンターに行ったり海鮮丼を食べに行ったりした後、映画館に戻ってきて、家に帰るというような行動パターンの子もいます。親の目を離れたところでできることをしていて、それはそれで面白いなと思って見ています。

(八巻さん)
まじめで目的意識のあるお客様ほど、子どもに対して不寛容な傾向にあります。文化施設に子どもがいることはあたりまえのことなのだと意識を変えていく必要があります。
親の話も出ましたが、美術館だと子ども向けのワークショップをする時にわざと親を引き離すこともあります。親が見ているといろいろとあるので、「今子どもたちはこういうことをやっているので、ほっといてあげてください、見守らないでください」と。

――「あなた」に向けた場所、誰でもこられる場所

(野村さん)
無目的でいろんな人が混ざっている場の方が自由だという後に逆のことを言いますが、困難を抱えた人に向けた場の確保も同時に必要なことと思います。

(八巻さん)
いろんな人が混在する、インクルーシブな方がいいよねという流れの中で、逆のことをやりました。引きこもりや不登校の人は、仕事に行っている人、学校に行っている子が少し怖い。安全性が保たれると思ってわざわざ休館日に行いました。参加してくれた人はよかったと言ってくれます。スタッフの負担は大きいのですが、すごく必要なことだと思いました。世界では動物園や科学館でも重度の障害のある人や感覚過敏の人に向けて開ける試みもあるので、もう少し日本でも広がってもいいのかなと思います。

(直井さん)
シネマクラブも始めるときにどういう日がいいのかを議論して休館日にしました。結局休めないのですが、それでやらなければ、なりたたなかったですね。私たちも不登校の子の支援を専門にしているわけではなかったので、やりながら状況が見えてきています。

(吉川さん)
ミミミラボは13時から開けていて、そうすると学校に行っていない子が来てくれます。周りがうるさいとなかなか入れない子も安心して来れる。元々は水曜だけだったのですが、木曜と金曜も増やしました。近所の小学生は15時半ごろから来るのですが、学校に行っている子と行っていない子が友達になることも何回かありました。前は夕方から来ていた子が今日は早いな、そういう日が続くなと思い声をかけると「実は…」と打ち明けてくれたこともあります。混ざり合う時間が面白いのは、そういった時間設定にしてから気が付きました。

(岩室さん)
「特命子ども地域アクター」は中高生を対象にしていますが、来ている子どもたちが学校に通っているのかどういう状況なのか最初はわかりません。1年ぐらい経ってみると、実は学校に行っていないとか、かなりの貧困だったとわかることがあります。中高生にもなると県外や県内の遠くに行くと大人と同じ交通費もかかりますので、このプロジェクトでは交通費やお昼も用意します。ボランティア活動をしたいけれども金銭的な負担からできなかった、でもこれは交通費もご飯も出るから一度やってみたかったという子どもがだいぶ経ってからわかったりします。そういう子どもも、誰かのために役に立ってることを本当に嬉しそうに話してくれます。気持ちはあるけれど、なかなか踏み出せない。そのきっかけにもなっていると思うとやっていてよかったと思います。

* * *

この後は会場との質疑に。事例紹介とディスカッションが新しい実践の芽になればと締めくくられました。終了後も登壇者とお話をする方も多く、熱く温かい時間が流れていました。

今回のフォーラムでは、文化芸術の場において学びと居場所は両側面が混ざり合っていることや、場をつくる大人たちが子どもの自主性を尊重することの重要性をみることができました。また、良いはたらきをするものには相反するものもあることが伺えました。特定の活動が子どもの関心を惹く場合もある一方で、目的を持たずにいられることの良さもあること。対象を明確にするメッセージと、自らの状況を開示せずとも誰にでも参加しやすい仕組みはそれぞれに子どもに安心感をもたらすことなどです。たとえ小さくとも子どもが自らステップアップしていくのが学びであると改めて認識する機会となりました。

ACYでは、2024年度も引き続き本テーマでのフォーラムの開催を予定しています。ぜひ次回のフォーラムにも足をお運びください。

 

文:アーツコミッション・ヨコハマ

 

【登壇者プロフィール】

岩室晶子 (いわむろ・あきこ)
岩室さん
特定非営利活動法人 I Loveつづき理事長として、横浜・まちづくりの活動をしながら、こどもたちとできるまちづくりについて、NPO法人ミニシティ・プラスで模索、実践中。音楽家(作曲、編曲、ピアノ演奏)が本業。2021年田園調布学園大学大学院修士終了。他、NPO法人都筑文化芸術協会 副理事長。

吉川永祐(きっかわ・えいすけ)
吉川さん
1997年島根県生まれ。金沢美術工芸大学大学院修士課程絵画専攻油画コース修了。子どもたちが自由にテクノロジーに触れられる第三の居場所、「ミミミラボ」でコーディネーターをしながら現代美術作家としても活動。主に自身の身体を素材とした映像、写真、立体などの作品制作を行っている。主な展覧会に、「3rdEye4Head」(2023年石黒ビル/石川)、「霧の向こうから石が」(2022年ギャラリー無量/富山)

直井恵(なおい・めぐみ)
直井さん
長野県上田市出身。フィリピンで活動する国際協力NGOや環境系NPOに勤務した後、2007年より上田に戻り、文化交流の市民企画を行う。2017年よりNPO法人上田映劇の理事として上田映劇の再起動に関わる。2020年、「うえだ子どもシネマクラブ」を開始。フェミニズムをテーマにしたZINE『re-seitou』の編集制作、また切り絵作家としても活動。

八巻香澄(やまき・かすみ)
八巻さん
1978年福島県生まれ。東京都庭園美術館にて展覧会企画と教育普及プログラムに従事し、ラーニングのためのスペース「ウェルカムルーム」や、障害のある人との協働プログラムなどを企画。2018年より東京都現代美術館にて展覧会企画を担当。社会包摂や脱植民地主義に強い関心をもち、展覧会における実践を模索している。主な展覧会に「ひろがる地図」(2019)、「あ、共感とかじゃなくて。」(2023)など。

野村政之(のむら・まさし)
野村さん
1978年長野県生まれ。信州アーツカウンシル((一財)長野県文化振興事業団)ゼネラルコーディネーター。舞台芸術の企画・制作やドラマトゥルクとして創作現場に、コーディネーター等として公的芸術文化支援に並行して携わる。長野県内の公共ホール、東京の小劇場での活動、各地の芸術祭等への参加、沖縄アーツカウンシルプログラムオフィサー、長野県県民文化部文化政策課文化振興コーディネーターなどを経て、2022年4月より現職。 (一社)全国小劇場ネットワーク代表理事、NPO法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)理事。

LINEで送る
Pocket

この記事のURL:https://acy.yafjp.org/news/2024/107310/