2024-01-16 コラム
#まちづくり #ACY

ACYフォーラムvol.2 「横浜の暮らしから見える文化とまちづくり」開催レポート

2023年3月21日(火・祝)、BUKATSUDO HALLにて、アーツコミッション・ヨコハマ(以下、ACY)が注目する人と場を紹介し、創造性を軸に横浜の地域の未来を議論するACYフォーラムの第二弾として「横浜の暮らしから見える文化とまちづくり」を開催しました。

 

横浜各地では町に変化をもたらし、自分たちが望む暮らしを行っていくことを目的に、複数の拠点をつなぐことを意識した活動が展開されています。これらの活動は個人や仲間内、企業と様々な主体によるもので、コミュニティスペースや、アトリエ、小商い、住居などの拠点の間の公共空間を上手に使いながら既存の自治会や商店会となどとも連携し新たなコミュニティの層を積み重ねています。文化施設や公共施設ではない、こうした活動や拠点から今後の新しい表現が生まれてくるかもしれません。

ACYは、この多層化していく地域に芸術を挿入すると、芸術も地域も、もっと面白くなるのではないかと考え、現在新たな取り組みを検討しています。今回のフォーラムは活動を実践している方々のお話を聞き、交流する機会として実施しました。

 

第一部 各地の暮らしのご紹介

 

第一部では各地で実践をされている方々より、活動をご紹介いただきました。

①「753 VILLAGE」
登壇者:大谷 浩之介(753プロジェクトメンバー)

 

 

大谷さんは緑区の中山エリアの一角で大家さんが空き家を開放したことからはじまったワーキングスペースやカフェ、マルシェ、ギャラリーなど暮らしにほど近い場づくりをしています。

拠点ができてくると、それぞれ点となっている活動を線で繋ぎ、面として見せたいというフェ-ズに移行します。特に、職住一体型の地域ステーション「co-coya」はまちの縁側として、地域のいろいろな情報を受けて、発信する場所にできるのではないかと考えたそうです。

一連の取り組みから最近考えていることは、「目的性」。「co-coyaは目的があってもなくても良い場所、何者であってもよいけれど何者でなくてもよい場初、人がいて話しかけてもよいし話しかけなくてもよい場所でありたい」とさまざまな主体をつないできた大谷さんは説明します。「目的がない」ということは、裏を返せば「いろんな目的を持ち込むことができる」ということで、まちの余白のような場所を作る意図を話してくれました。

753 VILLAGE https://nakayama753.com/
co-coya https://nakayama753.com/project/#54

 

②「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」
登壇者:若林 拓哉(株式会社ウミネコアーキ代表取締役・つばめ舎建築設計パートナー)

 

 

若林さんは港北区の篠原町、新横浜駅のほど近くにあった旧・横浜篠原郵便局をリノベーションし2022年にARUNŌ -Yokohama Shinohara-をグランドオープン。シェアハウスやシェアラウンジ、シェアキッチンなど「知りたい」「やってみたい」を形にする場所に生まれ変わりました。

郵便局であったことを着想に訪れる人が違う世界にたどりつけるような窓口をコンセプトに据え、ロゴには市外局番の045と「YOKOHAMA SHINOHARA」と地名が入っています。郵便局は地域で生活の基盤となる場所ですが、これから老朽化が進むことが予見され、日本中で同じように展開できる可能性を示しています。

融資や自己資金でプロジェクトを進め、自分たちでできる仕組みを考えてきたと語る若林さん。そのモチベーションの源泉は、「元々この場所にいたから」。祖父が始めた新横浜食料品センターを更新する計画もあり、自分の土地だけでなくエリアを盛り上げていきたい、この辺りのことはなんでも話を聞いていきたいと話します。

ARUNŌ -Yokohama Shinohara-  https://u-aruno.com/

 

③「星天qlay」
登壇者:小杉山 祐昌(株式会社相鉄アーバンクリエイツ 事業推進部)
相馬 由季(YADOKARI株式会社 事業推進室/エリアイノベーションユニットマネージャー)

 

 

続いて、保土ケ谷区の相鉄線星川駅と天王町駅間の高架下空間の活用事例です。小杉山さんは生活を支える商業施設以外に、クリエイティブな人の住まいや地域との接点となる機能やコミュニティを醸成することは鉄道系の会社としても挑戦的な開発と話します。

社会が変化するなかで、今ある一般的な商業施設の展開には無理がきている、新しい価値観に出会える暮らしの提案をしなければと「『変化を楽しむ人』がつながる 生きかたを、遊ぶまち」とコンセプトをたてました。

企画を担当する相馬さんは、商業施設は開業がピークになりがちだけれども時間とともに醸成して、みんなが入っていきたいと思える場所を作っていきたいと話します。また、保土ケ谷区は環境資源が豊富なので、さまざまな所が連携できる、気軽にまち作りに参加できる仕組み作りも進めていく予定です。

そのためには「遊び」と「余白」を大切に、人が持つ可能性が入ってくる余地を残し、時代の変化を楽しむように店長のギャザリング、コミュニティビルダー、クリエイションギャラリーなど様々な仕掛けをしていくそうです。

星天qlay  https://www.hoshiten-qlay.com/

 

④「藤棚デパートメント」ほか
登壇者:永田 賢一郎(建築家、YONG architecture studio)

 

 

最後は西区の相鉄の西横浜駅と京急の戸部駅の間にある藤棚商店街で事務所、シェアキッチンを兼ね備えたコミュニティスペースの紹介です。

賃貸物件を借りて企画、設計、工事をして、月1日から皆さんに貸出。商店街に出店するのは難しいことですが、そのハードルを下げてより多くの人が商店街に関わってもらえる仕組みを作りたいとのことです。

永田さんはかつて中区・黄金町でシェアスタジオを立ち上げたあと、藤棚にあるアパート改修の仕事をきっかけに暮らしながら交流を担うことに。暮らしながら、地域に密に関わりながら同時に俯瞰して勉強会やリサーチをしていました。みなとみらいと西横浜は電車でみると少し遠い印象がありますが、実は自転車や徒歩の移動圏内です。今まで不動産の情報やルート検索ではバリアだったものを可視化するとエリアが繋がっていくのではと、近くの拠点同士を繋げています。

場所を作り暮らしながら、生活圏を作っていきたいという永田さん。自転車、電車、車、徒歩の15分圏内でいろんな方や拠点が繋がる魅力的な環境を作れるのではという活動は続きます。

藤棚デパートメント https://fujidanadp.com/

 

第二部 「横浜の暮らしから見える文化とまちづくり」登壇者によるクロストーク

 

第一部の登壇者にコメンテーターとして後藤 清子さん(株式会社ピクニックルーム 代表取締役)、下吹越香菜さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社取締役)を加えて、前半を振り返り、暮らしから見える文化とまちづくりについて、クロストークをしました。

 

(左から永田さん、相馬さん、小杉山さん、若林さん、大谷さん、下吹越さん、後藤さん)

 

第一部のお話で共通項としてあげられた「余白を持たせた場づくり」について、企業が取り組むことについて話を掘り下げる所からスタートしました。

小杉山さんは企業として利益構成を検証しながらも遊べる所をつくる、作りたいソフトに応えるハードはどうしたらよいかを攻める、そのバランスが肝だと言います。相馬さんも、まちづくりは何十年単位と時間がかかり最初の数年は醸成していくのを待つ期間だけれどもその間もお金が循環することは大事なのでそこに向き合っていきたいと話します。

その後、コメンテーターのお二人から「点から線、面」というキーワードについて、地域を理解し、どう場を活かすか、どんな人とつながっていったのかを掘り下げる投げかけがされました。

若林さんからは、自治会町内会など既存のコミュニティとのお付き合いの方法についてお話がありました。世代や行っていることなど異なるコミュニティとほどよい距離感で、どのような言葉を使っていくと良いかを考えていたそうです。

大谷さんは最初に提案した際に地主さんが50年度100年後のまちを見据えて使わせてくれていると感じ、そのエリアに引っ越したそうです。「入り込まざるを得ない何か」を感じたものの好きなことをやっていることを地主さんが見守ってくれていることで地域に受け入れられていると言います。

永田さんも学生時代から横浜に暮らし、藤棚でも作ったアパートに自ら住むという「まちの生活ってどう暮らしているのだろう」からスタートしているといいます。外から来た人がいうのではなく同じ住民としてこんな暮らしをしたいという思いを共有することで広がったそうです。

後藤さんと下吹越さんは皆さんのお話を聞くと、歩いて行ける距離にコミュニティや場所があることは生活をしていく上で重要だとし、それが住みたいかどうかの要因にもなるという価値観にも共感していました。また、こうした民間の動きを公共施設や行政がどのように情報発信していくかを課題にあげていました。

 

 

最後に、登壇者の方にこれから目指すこと、この場を活かしてどのように繋がっていくと良いかなどをお話いただきました。

大谷さんは、今回のように様々な取り組みをしている人が繋がれる場がありがたい、と話します。ある人が居心地が良いと思える場所は、自分のところかもしれないし、他の方のところかもしれない。うちじゃないとき、こちらにいくと良いかもしれないよと情報を共有できるような横の繋がりができると良いとのこと。また、鍵となってくれた地主さんが60代で大谷さんは40代、そろそろ次の世代を考える時。場所を使うプレーヤーの方の種は見つけられているけれど、こちら側の運営も担う方をどのように見つけていくかが課題だそうです。

永田さんは自分がいなくても回るように、主体的な人を増やすことを意識しているそうです。お互いにまちの一員であって「こうしていきたい」といえる関係性を築くのが大事。一方的な「いらっしゃいませ」となってしまうと、このサービスがあるからいい、というお客様の選び方になってそこからは主体性は生まれません。サービス提供者になりきらないで、自分のことは自分でやってもらう。するとみんな自分の場所だと思って、だんだん自分がいなくてもよくなってくる。そうして町に関わる意識をもつ担い手を増やしていけると良いのではと話します。

若林さんは地域の方がやってみようとシェアキッチンや出店を始めたり、普段は主婦の人が月に1回教室を行う様子を見てきています。今日はお客さんだけれども明日はお店の人というように相互に入れ替われる、どっちになっても良いという関係性をまちと築いていくのが重要なのではないかと提示します。

小杉山さんは企業の中でこういったプロジェクトを進めていると、自分の方向性はあっているのだろうかと孤独になる瞬間があると言います。今回は他の活動をされている方と話し勇気をもらったので、こういったネットワークを大事にしていきたいそうです。また、他の方からは人に任せていくことや距離感の話もあったけれども、開発を進める企業としては企画運営を行うYADOKARIに頼りすぎず、自分事として担当者が街に入り込んでいけるかだと語ります。

こういう場所が増えていくことがまちの魅力を高めていき、暮らしや子育て、はたらくことが繋がってまちの文化にも集約されていくのではというコメンテーターのお二人のお言葉で二回目のACYフォーラムは締めくくられました。

 

文:アーツコミッション・ヨコハマ
写真:大野隆介

 

【登壇者プロフィール】

大谷 浩之介(753プロジェクトメンバー)
2013年に「753プロジェクト」を立ち上げ、2014年より横浜市緑区中山在住。東京の社会教育の現場で地域住民のコミュニティ形成支援に携わったのち、横浜で多様な主体による共創事業に携わる。自宅をシェアハウスとしながら、地域の空き家活用を進めてきた。楽しんで暮らしをつくることに邁進中。2009年より取り組む手づくり醤油の活動では、搾り師を担う。

若林 拓哉(株式会社ウミネコアーキ代表取締役・つばめ舎建築設計パートナー)
1991年神奈川県横浜市生まれ。2016年芝浦工業大学大学院修了。同年よりフリーランスとして活動開始。2022年法人化。建築設計だけでなく企画・不動産・運営の視点からトータルデザインし、建築の社会的価値を再考する。主なPJに、「新横浜食料品センター」(SDレビュー2022入選)、高知市・菜園場商店街のまちやど「まちの別邸 緝」(2022年)、主著に『小商い建築、まちを動かす!』(2022年、ユウブックス)、『わたしのコミュニティスペースのつくりかた』(2023年、ユウブックス)等。

小杉山 祐昌(株式会社相鉄アーバンクリエイツ 事業推進部)
1980年神奈川県横浜市生まれ。2005年法政大学大学院工学研究科修了。同年 相模鉄道(現:相鉄ホールディングス)(株)へ入社。鉄道の建設部門を経験し、横浜市への派遣を経て、現職の(株)相鉄アーバンクリエイツへ出向。星川・天王町間の高架下開発や、沿線の既存施設を活性化する計画を担当。

相馬 由季(YADOKARI株式会社 事業推進室/エリアイノベーションユニットマネージャー)
1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒。「BESSの家」を展開する(株)アールシーコアにて法人企画・営業を経験後、YADOKARI(株)にてタイニーハウス等可動産を使った遊休地利活用施設の企画や、コーポレートブランディング・メディアソリューション等を行う。

永田 賢一郎(建築家、YONG architecture studio主宰)
1983年東京出身。横浜でストリップ劇場跡を改修したシェアスタジオ「旧劇場」を始め、商店街の空き店舗を活用した設計事務所兼シェアキッチン「藤棚デパートメント」、空き倉庫を活用したシェアアトリエ「野毛山kiez」など、地域のストックを活用した拠点づくりを展開。2020年より長野県北佐久郡立科町地域おこし協力隊兼任。横浜と長野で二拠点活動中。

後藤 清子(株式会社ピクニックルーム 代表取締役)
シンクタンクや制作会社等を経て、2016年より子育て支援事業へ参入。2017年株式会社ピクニックルームを設立、同年企業主導型保育事業「ピクニックナーサリー」、翌年放課後児童向け事業「ピクニックスクール」を開設。2019年からは地域食堂「さくらホームレストラン」も運営。横浜・関内地域の子どもを中心とした多世代交流を軸に、まちづくりや人材育成についての事業を構築している。

下吹越香菜(アカデミック・リソース・ガイド株式会社取締役)
1989年鹿児島県指宿市生まれ。2016年英国エセックス大学大学院応用言語学修士課程修了。帰国後、アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)にてプロジェクトマネージャーを経て現職。主に図書館を中心とする公共施設整備事業に携わり、住民との共創による公共デザインに伴走する。図書館専門誌Library Resource Guide(LRG)第39号「子育て支援と図書館」責任編集。3歳児育児中。

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